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『塩村あやか&石川大我両氏に話を聞いてみた:①石川編』2023-04-30

 今月2日、AFEEの「#表現の自由を守る約束」にも賛同している、狛江市議会議員の加藤功一氏によって、塩村あやか・石川大我両氏を招いての講演会が開催された。
 残念ながら加藤氏は4月23日の狛江市会議員選挙では惜敗となったが、このときの内容を表現の自由が絡む部分に絞ってレビューしていきたい。

 時刻は午後6時から。場所は狛江駅前の「泉の森会館」という小規模なホールであったが、十数名は入ってきていたと思う。

 とはいえ、メインの塩村あやか氏は講演の本編ではAV新法その他の表現規制についても、フェミニズムについてもほぼ全く話をしなかった。よって、彼女については私との質疑応答を次回掲載させて頂く。
 したがって今回は石川大我氏の講演からレビューする。
 冒頭の自分史的なところはおおむね飛ばすので、興味のある方は、ご本人も講演内で紹介していた著書を参考にされたい。

講演の概要

・実は26歳くらいまで、自分と同じ同性愛者に会ったことがなく、TVを通して知る芸能人のLGBTも皆年上だったので、同世代の同性愛者というものを知らず、自分には恋愛ができるのだろうかとずっと思っていた。
・LGBTには自殺率が高いといわれるが、自分は自殺を考えたことはない。
・1999年頃から、ネットを通して他の同性愛者と交流できるようになって世界が変わった。
・2002年頃には行政の人権窓口などでもLGBT(当時は性同一性障害や同性愛)について全然やっていなかった。
・2004年に性同一性障害特例法ができ、それまでオカマなど差別用語で呼ばれていた人たちが性同一性障害という名前を得た。戸籍上の性別が変更できるようになった。
・2015年、パートナーシップ制度発足(渋谷・世田谷)。保坂展人氏の功績が大きい。
・渋谷は自民党が少数派なので条例でできた。世田谷は自公が多数派だったのでできず、事務手続きの要綱でパートナーシップ申請書の「受領書」という形ではじめた。
・今後の展望は、差別禁止と同性婚ができるかが問題。

理解増進法と差別禁止について

・統一地方選の前にやると「自民党が混乱」するので動きが止まっているが、選挙後に「差別禁止」ではなく「理解増進」でいこうといわれている。
・理解増進法案の理念に「差別は許されないとの認識のもと」とあるのに自民党が難色。
・つまり自民党は差別は許されないとの認識を持つことすらダメだということだ。ZOOMやネットの中継がないから言うが、自民党と差別禁止法を作るのは、泥棒と一緒に窃盗罪を作るようなものだ。
・自民党から差別発言などが多く出てくる中で、差別者にされるのがイヤなんだろうと思う。
・差別禁止を当事者団体はみんな求めている。海外からも作るべきだといわれている。
・「理解増進法は毒饅頭ではないか」とも言われている。同性婚などもっと進んだ法律を作りたいとき「まだ理解増進中だから」と止められる理由にされる恐れがある。
・保坂さんは「理解増進法ができたら同性婚は5年遅れる」と言ったらしい。
・条例は法律の範囲内でしか作れないので、理解増進法ができてしまうと、自治体で差別禁止条例を作ろうとしてもできなくなるおそれがある。

女性用スペース問題

・差別禁止は思想良心の自由に反すると自民党から声があるのはミスリードで、差別的取り扱いの禁止だから、頭の中のことだけでは逮捕されない。
・LGBTに対する差別は、就職やバイトの面接などで実際ある。小学校でゲイの子が隔離されたこともある。
・MtFに対するヘイトが流布されている。カツラのおじさんが女風呂に入ってくるのを拒否できないなどという話が流布されていて、フェミニストまでがそうだそうだと言ってる。
・公衆浴場は男女別が法律で決まっていて、施設の人が運営をする権利があるので、男性器がついた人が女風呂に来てもきっぱり断れる。差別にはならない。
・トランスジェンダーは風呂の鏡で自分の体を見るのが苦痛だという人たちなので、そんな侵入などするはずがない。貸切の露天風呂などを使っている。
・世界的にもこうした言説が流布しているが、これはヨーロッパ各国で同性婚が法制化されて、同性婚を攻撃できなくなったので、こういった論点でLGBTを攻撃しているのだ。
・こうした世界的な流れの中で、「女性用スペースを守る会」とか、もっともらしい名前を付けて、いろいろ送り付けてきたしているのが現状。こうした言説に騙されないでほしい。

加藤功一氏の補足

 最後に、加藤功一氏から補足コメントがあったのだが、こういう発言があった。

「(この講演会は連続でやっているので、その中で)表現規制の不健全図書について一度とりあげまして、不健全図書に指定される図書の、ほぼ100%が男性同士の恋愛の漫画とかが規制されてるんですね」

 どうも加藤氏は不健全図書に指定される書籍をBLがほとんど占めている現状を、ゲイ差別だと思っているらしい。
 実際は「異性愛者の男性」向けのポルノが差別的に規制された後で、残ったものがBLだったから今BLがターゲットになっているということなのだが、なるほど表面的に見れば「ゲイが描かれているものが集中的に規制されている」→「ゲイ差別の一環」と見えるのも無理もないことだ。

 ちなみに不健全図書が取り上げられた回というのは、3月20日に栗下善行氏を招いて行われた「表現の自由を守る 表現規制、不健全図書・有害図書を考える」のことだったと思われる。こちらは私は都合により聴講できなかったのが残念である。

 さてここから、質疑応答に移る。なんとありがたいことに30分も質疑時間を取ってもらっていた。
 もちろん私だけが質疑時間を占有する訳にはいかないので、あくまで今回は意見を聞くということで一問一答にとどめ、こちらからの反論は基本的に避けたので、論争を期待していた方はご了承願いたい。

質疑応答

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