『試論:萌え絵ヘイター世代と専業主婦』2023-10-28

 私が以前から提唱している萌え絵ヘイトの世代論がある。これについて「専業主婦」の問題が大きく影響しているのではないか?と、友人のとつげき東北氏から指摘があった。

 まず、私の萌え絵ヘイト世代論とはどういうものかおさらいしておこう。

・フェミニストが萌え絵を憎むのは、萌え絵から「弱者男性であるオタク」を連想し、「負の性欲」を発動させるからである。
・それは彼女たちが、1989年に宮崎事件に端を発したオタク大バッシング時代にスクールカーストを刷り込まれた世代、つまり現在では中高年のおばさんだからである。
・彼女らが加齢とともに性的魅力を失ってチヤホヤされなくなり「男社会だから若い女ばかりもてはやされるんだ!」と不満を募らせ、この世代がフェミに大量流入したのが、まさに萌え絵ヘイトが盛んになった2010年代からである。

 というものだ。
 実際に、萌え絵を憎むフェミニストは中高年が多いことは、北原みのりなどのフェミニストも自ら認めている(人に言われて認めたのではなく自分から書いている)。また『月曜日のたわわ』日経新聞広告事件においてはアンケート調査が行われ、問題視するのが「男女平等」を早くから教え込まれているはずの若い世代ではなく、逆に萌え絵に偏見の抜けない高年齢世代に偏っていることも明らかとなった。
 余談になるが、これほどまでに萌え絵を嫌うフェミニストたちが不自然に擁護する作品が『美少女戦士セーラームーン』である。
 セーラー服をアレンジした、かなりセクシーな格好の美少女たちが戦う90年代の大ヒットアニメで、本来のターゲット層である少女たちばかりかオタク男たちも夢中にさせ、今からみれば拙い絵(手描き主体の時代ゆえだが)の同人誌がコミックマーケットに氾濫した。
『セーラームーン』は、もしもいま始まった作品であればフェミたちに蛇蝎のごとく憎まれたこと請け合いの作風なのだが、フェミニストたちはなぜか同作を擁護する。これは彼女らが90年代に少女時代を過ごした、同作の直撃世代であることが背景にあると考えられる。それはすなわち、オタク差別文化の直撃世代でもあるのである。

 さて、とつげき東北氏から得た示唆は、この世代(以上)が「専業主婦になれた世代」であることも萌え絵ヘイトに強い影響があるのではないか?というものだ。

 つまり、彼女らの少なからずが、まともに働いていないことによって、若い世代との交流が少なく(フェミ風にいえば)「価値観のアップデート」ができていないことががかなり関係しているのではないかというのである。
 会社や役所などでまっとうに働いていれば、若い世代が平然と萌え絵やアニメゲームなどに親しんでいることは否応なくわかる。その人たちは別にまったく「キモオタ」ではなく(いやたまたまそうであることはあるだろうが)、清潔感のある美女やイケメンも何の不自然さもなく、アニメキャラをあしらった小物などを携帯しているし、彼らもお互いそれを何も不思議がることはない。
 専業主婦にはそのようなアップデートの機会がない、あるいは非常に乏しい。

 まあおおむね、こういう感じの説である。

 私もこれは大いにうなずけた。
 確かに、学生時代から大した勤労時間を経ずに家庭にこもる主婦になってしまった場合、少女時代のスクールカーストに基づく偏見をそのまま持ち続けやすいだろう。
 専業主婦が属する家族外の社会集団の多く――たとえば「ママ友」とか「PTA」――は同じ世代の子の母親でかたまる性質があるため、必然的に多くが近い世代となる。こうしたグループから若い世代についての情報を取り入れ、偏見を改めることは難しい。

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