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 仏教系の新興宗教のひとつ。
 小倉霊現を開祖とし、昭和3年に神仏眞霊感応会・神仏眞霊感謝会を設立。戦時中の宗教統制厳格化により一時(1939~1947)天台宗に所属したが、戦後独立。日本復興の零示を授かったと称し「きわめて精力的に広範囲にわたる布教活動を開始」した。昭和27年に宗教法人資格を取得。
 信者数は資料によって50~80万程度の信者を擁するとされる。
 昭和34年というかなり昔に、教祖による女性信者へのわいせつ行為や心霊治療による医療妨害などで訴訟されているが、旧【統一教会】ほどの極端な上納金や洗脳セミナーといった消費者問題はあまり聞かれない。
 ただしその価値観は以下のとおり、かなり極右的である。

 霊現は共産主義の脅威を訴え、国を愛することと国を守るべきことを強く主張。苦しかった時代を忘れぬためにと、終生、戦闘帽をかぶって日本全国を巡教する。教祖の死後も、機関誌・紙において、北方領土返還、北の脅威、愛国心の涵養などが毎回訴えられている。また最近の機関誌には『教育勅語』原文とその口語訳とが毎日掲載される。

井上順孝他『新宗教教団・人物事典』弘文堂

 1990年代のいわゆる「有害コミック」騒動の元凶となった宗教団体である。煽った機関紙は内部情報を盾に、念法眞教側は外部の閲覧を拒んでいる(筆者も問い合わせて断られた)が、『マンガはなぜ規制されるのか 「有害」をめぐる半世紀の攻防』によると次のような記載であったという。

 念法眞教がキャンペーンを開始した九〇年六月一三日付の一面記事では、「子供を蝕む性交(セックス)マンガ雑誌」「ドギツイ描写、性をくすぐるセリフやタイトル――これが子供向けに堂々と書店に並ぶ現実」という大見出しがおどり、<こんなマンガ本をいまの子供たちは読んでいるのか...…、これは大変なことになる!><それら雑誌が共通してとりあげている題材がズバリ、性交(セックス)であることと、ストーリーに登場する主人公の多くが少年少女であること><いたずらに性欲をかき立てるテクニックを駆使して、アダルトポルノ顔負けの内容でくり返しくり返し綴られており、およそ未成熟(精神的に)な少年少女の目にはふれさせるべきでない”ポルノコミック”と言えます>と書かれていた。さらに<どこの国でも、子どもは国の将来を担う貴重な人材であり、”国の宝”として保護し、国家に役立つように育成に努めています>などと訴え、現状を憂えていた。

長岡義幸『マンガはなぜ規制されるのか 「有害」をめぐる半世紀の攻防』平凡社

 同書では「(子ども向け)ポルノコミック」という呼称や、有害コミック騒動で盛んに叩かれた「主人公が少年少女」という要素は、この機関紙が初出であるとしている。

 その後の展開も前掲書から引用すると、

 和歌山県では、地元紙『紀州民報』にコミックスの性描写を批判する田辺市の男性の投書が掲載された。田辺市長にも、市民が問題のコミックスを届けていた。九月初旬には、投書した男性の妻を中心に、和歌山県や田辺市の協力で「コミック本から子供を守る会」が結成され、規制を求める署名運動を展開。田辺市は「見ない、読まない、読ませない」と大書し、「みんなの力で性描写マンガを追放」と記したチラシを全戸配布して、署名運動を側面支援した。『紀州民報』も一面トップで追放キャンペーンを繰り返した。署名は、五万筆以上集まる成果となった。

長岡義幸『マンガはなぜ規制されるのか 「有害」をめぐる半世紀の攻防』平凡社

 この和歌山での運動がいわゆる有害コミック問題の発祥である。
 同書著者の長岡氏の取材に対し、念法眞教は「信者が個人的にはじめたこと」と関与を否定し、田辺市教育長ものちの『朝日新聞』(91年5月29日朝刊)の取材に「そうしたことは初耳だが、主体的に判断して追放運動に取り組んだだけ」と否認しているという。
 しかし長岡氏は90年のうちに自身が市職員に伝えており、知らなかったはずはないとしている。

 マスコミ出版倫理懇談会全国協議会の機関誌『マスコミ倫理』は、当時の運動を次のように分析している。

(署名運動には)警察と密接な関係にある”母の会”系と、ある宗教団体を母体にした”子どもを守る親の会”系のものがあり、文面が全く同じなど、いずれも組織的な運動であることがわかる

『マスコミ倫理』406号(93年8月25日)

 実際に出版倫理協議会の事務局には、複数の地域から「文面も、ターゲットになった漫画作品もほとんど同じ」抗議葉書が届いていたといい、組織的な動きは明らかだった。

 また、表現規制反対活動をしていたkamayan氏は、2006年のブログで、念法眞教についてした「はてなキーワード」の記述が信者によって繰り返し削除されている旨を報告している。

参考リンク・資料:

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