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『『「AV業界に有利なAV新法に反対する緊急アクション」勉強会に潜入!! 北原みのり(@minorikitahara)編』2022-05-22

 前回の問題意識から、私はこの5月19日、この団体の勉強会に参加することにした。


 彼らが主張している「撮影被害」と、女優を含む業界関係者の伝える実態とのズレ。彼ら「被害当事者団体」とやらが一体どんな事象を被害として抑え、捉えているのか。それを知りたかったからだ。
 まあ潜入というか...…普通に申し込んで聴講しただけなのだがw

 なお、スピーカーの発言を引用枠で示している場合があるが、この勉強会は一般参加者の録音は禁止している。したがって見やすさを考慮して引用枠を活用しているものの、速記や記憶からの再現となるので、一語一句の正確さを保障するものでないことは予め断っておきたい。

(勉強会の開始)
 まずは北原みのり氏が、AV新法問題についての概略を説明する。
 基本的には経緯とスピーカー紹介だが、法案自体に対する北原氏の意見の部分は次の通りだ。

(前略)非常に速いペースで出てきた印象のある骨子案ですけれども、私が見たのがGWの前で、AVの性交を合法化する内容であったりなどたいへん問題の多い骨子案でした。このまま法案になることに問題意識を持った有志で、AV新法の問題点を挙げることを決めました。
 その後、ツイッターなどで多くRTなどされ、世論も出てきましたし、メディア報道も後押しして、2度骨子案から変更があり、5月13日に出された今の草案では「性行為を行う」という言葉が「性行為に係る」に変わるなど、明確に最初のような「性行為を行う」ということを避ける内容になっています。とはいえ、言葉が変わっても性交を黙認して容認する内容であることに変わりません。「生殖器の保護」という言葉が入っているように、性交が認められていることは明らかです。
 なぜ「性交禁止」というストレートな言葉が入れられないのか、私もいろんな方に聞きましたけど、表現の自由にかかわる、とか、性交を盛り込まないと成功の契約をした人を救えないとか、そういうことを言われますが、実はよくわかりません。表現の自由に抵触する理由もよくわかりませんし、性交の契約をした人を救えないとは言えないのではないかという解釈をする法律家もいらっしゃいます。
 今回の法案では、法律家によって余りにも解釈が違っていることも不安要素の一つです。これほど自由に解釈ができるほど乱暴な法案だと言えるのではないでしょうか。多くの支援者が訴えてきたようにAVの被害は契約に問題があるから起きるのではなくて、性交が実際に行われることで起きています。その原点に立てば、性交を容認する法律では被害者は拾えません。
 その法案をどう考えればいいのか。
 今日は性搾取問題とくにAV問題に取り組んでこられた角田弁護士に法案の解説をしていただきます。そしてポルノ性搾取問題にずっと関わってこられた法学者の中里見博さんにお話を伺います。Colaboの仁藤さんは、皆さんご存知のようにずっと若年女性の支援をされてきました。今回、明確に性交禁止を盛り込むことを強く訴えて、この法案では救えない被害者の声を届けていらっしゃいます。
 被害者を選ぶ法律にならないためにも、この草案をどうすれば本当に性搾取問題を根絶できるものになるのか、まだ時間があると思います。諦めないで考えて、声を上げるための時間にしていきたいと思います。

 まず疑問なのは「AV被害は契約手続の問題ではなく実際に性交をやっているからだ」という部分である。これには、なんの根拠も示されていない(北原氏のこの発言だけでなく勉強会全体を通じて、である)。

 北原氏をはじめ、この「緊急アクション」グループも郡司氏の「AV出演対策委員会」も、自分達の主張がAVでの性交渉(いわゆる本番)の禁止だとしきりに訴えている。
 おそらく理由の一つは、いきなりAV禁止を主張しても現状では勝ち目がないと悟ったからだ。

 そもそも今現在、せいぜいヌードや「芸術的な」ベッドシーンぐらいしかない一般映画界で、園子温をはじめとする映画関係者による非道な性搾取が数多く報じられていることを、一体どう思っているのだろうか。
 その一方で、本番(実際に性交すること)が存在する適正AV業界において、女優の人権を守る仕組みがいかに確立されているかを女優自身が発信している。

 この一点を考えても「AVの被害は契約に問題があるから起きるのではなくて、性交が実際に行われることで起きてい」るとは到底言えないと思うのだが。

 このように現在、このグループはAVの「本番禁止」を訴えている。
 つまり表面的には「AV禁止法を主張しているのではない!本番を禁止して演技でやればいいと言っているだけだ!」と自分の主張を穏当(でもなんでもないのだが)に見せかけているのだ。
 しかしそれは単に「ターゲットにしやすいと思ったもの」を狙い撃ちにしているだけで、AVそのもの、業界そのものを憎悪していることは明らかだ。

 本編に入る前に、まずはそれを確認しよう。
 今回の勉強会のスピーカーにこそいないものの、このグループの呼びかけに入っている郡司真子の「AV出演対策委員会」の声明を見てみよう。

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