読者が<読める>という最低条件の確保をせよ

cakes が終了すると発表された。

「cakes」8月末サービス終了 10年の歴史に幕 - ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2205/25/news161.html

「cakes」が8月末でのサービス終了を告知。運営会社が同じ「note」を不安視する声も【やじうまWatch】 - INTERNET Watch
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/yajiuma/1412019.html

これを受けて、「これだから電子書籍は信用できない」という意見があることを知った。

cakes はコンテンツ配信サービスなので電子書籍とは違うが、「デジタルで読む」という点では同じことだ。

Amazon などの電子書籍でもよく言われることだが、プラットフォーム側の意向で突然サービスが終了したり、コンテンツが削除されることがあるから、電子書籍は信用できないという言説は昔からある。

でも僕は違うと思う。単にダウンロードして手元に保存しておけばいいだけのことだからだ。cakes の場合はウェブページなのでスクリーンショットなり印刷なりウェブページを保存するなりすれば、手元にデータを残すことができる。電子書籍の場合は、プラットフォーム側に働きかけてダウンロードできるように訴えたり、何らかの方法で(スクリーンショットなりで)無理やり保存することもできる。

デジタルゆえにそういうことは原理上、簡単にできるはずだ。

これは記録メディアの終了の話と同じだ。「フロッピーディスクが読めなくて大変なことになる」と騒ぐ人は、読み取り機があるうちに次のメディアへデータを移しておけばいいだけのことだ。例えばハードディスクにデータを移せばいい。ハードディスクが終了するような未来が来たとしたら、そのときに登場した新しいメディアにデータを移行すればいい。デジタルだからこそそれは簡単にできる。

記録メディアの場合は、「フロッピーディスクじゃなければダメ」と言う人はあまりいないと思うが、これが書籍の場合は話が変わってくる。

「ちゃんとした装丁じゃないとダメ」「紙の本じゃないとダメ」と言って紙の本に固執する人は多い。僕も基本的に電子書籍よりは紙の本がいいと思っている。

でも出版業界はどんどん縮小しているし、個々の印刷書籍が永遠に続くのは難しくなっている。そういう不安定なものにすがるぐらいなら、電子書籍化して末永く読める状態であるほうがいい。あるいはオンデマンド出版にすれば、注文ごとに印刷するから在庫を抱えるという問題も発生しない。絶版になることがない。

しかも、電子書籍化やオンデマンド出版にすることで、過去に絶版になった本が再び手に入るようになる。読者にとっては嬉しいことだし、出版社や著者にしてもビジネスが継続するので良いことのはずだ。

たしかにオンデマンド出版の場合は海外のペーパーバックのような簡素な装丁になってしまう。でも「ちゃんとした装丁じゃなければだめだ」と言う前に、最も肝心な<読者が入手できる>ということができなくなると元も子もない。

絶版が(基本的に)ない、オンデマンド本や電子書籍化でいつでも読める状態にしてもらいたい。

繰り返す。大事なのは<読める>ことである。


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