[読書メモ]『仕事のエッセンス』(西きょうじ)

p24
スペインでは(世界第2位の生殖医療大国であるウクライナなどでも)生活苦から卵子を売る女性が増加しています。

p27
家事や子育ては賃金労働ではないので、「仕事」ではないというように考えられがちでしたが、実は賃金労働的にとらえることができるというのが現在の考え方です。イヴァン・イリイチはこれをシャドウ・ワークと名づけました。

pp49-50
そういうとき、「仕方がない」という言葉で自己正当化してあきらめてしまう、あるいは自分のうちに抱え込んでしまう人が多くいますが、本当に「仕方がない」のかどうかは考えてみるべきです。「仕方がない」と思う人が多くなるとその集団自体が自浄能力を失い腐敗していくことにもなります。[...]問題を解決しようと上司と向き合うだけではなく、社外の人とつながることで外から会社を変えようとしていくことも不可能だとは言い切れません。あの会社はこうなのだ、ということがどんどん外部から突き上げられてしまうと、会社だって変わらざるをえない。模索すれば「仕方はある」かもしれません。「仕方がない」という言葉であきらめてしまう習慣をやめれば、自分の置かれた場所を客観視し、可能性を見出せるのではないかと思います。

pp50-51
「いやならば辞めてしまう」のではなく、「いやならば辞めることも可能なのだ」と考え、その可能性を留保しつつ、今の問題に向き合ってみる。

p78
また、バリバリ働き活躍する女性の中には、「輝く女性」というイメージを維持するため、つまり自己イメージを社会的に承認してもらい続けるためだけに無理を積み重ね心身ともに壊れてしまうという例も多いようです。

p115
当然のことですが、会社を選ぶのは自分であって、親の意向(親の要望で大企業を優先した、という新卒生も意外に多いのです)や世間の評判で決めるものではありません。

p116
私自身は、就職活動は大学卒業後にそれぞれのタイミングで始めるのがよいと考えています。

p118
英語が必要な業種に就くつもりがあるならば、学生時代にスキルとしての英語は習得しておくべきでしょう。就職してから企業が社員に英語のスキルを身につけさせるコストを払うという現状はいかがなものかと思います。

p119
失敗したら終わり、と感じさせる社会はあまりにも息苦しく、人の能力発揮を妨げる社会といえるでしょう。

p120
流動性が高くなりつつある現代に、「新卒で正社員として入社しできる限り長く勤め上げるのが正しい人生なのだ。そうできない者は落伍者(らくごしゃ)である」という昭和の幻想的な教訓に縛りつけられる必要はないのです。

p138
今やフェイスブックやグーグルのような企業でさえ、より多くの知識を持っている人よりも、性格のよい人(good natured person)を雇おうとしているのです。

p157
また、人材争奪の過熱はすでに「オワハラ」という現象を生んでいます。これは内定や内々定を出した学生に就職活動を終えるように企業が働きかけるというものです。内定を出すのと引き換えに、求職者の携帯電話を出させてその場で就活終了という旨の電話をかけさせるという企業さえあるようです。文部科学省は2015年に「学生の意思に反して就職活動の終了を強要するようなハラスメント行為は慎んでほしい」といった要請文を発表しました。ちなみに同年7月の文科省のオワハラに関する調査では、ハラスメントと感じられるような行為を受けた経験があると回答している学生は5.9%おり、前回の1.9%から大きく増加しています。

p161
もはやバーチャルとリアルが二項対立として独立していた時代は終わっているのです。

p162
等身大でリアルな自分の考えを、借り物の言葉ではなく自分の言葉としてきちんと伝えられるようにすることは重要です。

p163
妥協してはいけないと感じる部分を一度妥協してしまうと、自分の人生が自分のものではなくなってしまうのではないか、と思います。

p177
一度足を踏み外すとなかなか元に戻りにくいのが今の日本の現状です。失敗、あるいは偶発的な事故に対して非常に不寛容な社会であるといえるでしょう。

p186
「どこに行けば安泰か」よりも、大企業であれ中小企業であれ「どういう事態が起きてもサバイブしていける力を身につける、会社がつぶれても他社、あるいは企業以外の団体から声がかかる自分、あるいは自ら売り込める自分を作る」ことを考え、自分の仕事と社会との関係を考えるという姿勢が重要になってくると思います。

p196
自社の利潤追求のみを目標とする企業の中で出世競争によって身をすり減らすよりは、社会貢献の実感が持てるNPOで働きたいと考える若者が増えているのもうなずける話です。

p206
「縛ることで創造性は生まれない。社員が自立しないと、会社は硬直化するだけ。必要以上の日々の業務報告なんて時間の無駄。自立したプロが集まる場が会社であればいい。だから、個々が内外で存分にスキルを発揮していけばいいんです」

p211
自分に合う仕事がない、とか、就職を拒まれてしまったとかいう場合には、自分で仕事を作ってしまうという手段もあります。既存の仕事に就くことだけが選択肢なのではありません。

p220
「月3万円の仕事を10個作る」

pp238-239
実際、好きなことを楽しそうに無心にやっている人が増えるというだけでも、社会にとって有益です。[...]逆に、仕事に不満を感じ愚痴ばかり言っている人は、社会にとって負の資本となるばかりではなく、その気質ゆえに思い切って転職するという選択肢を選ぶこともできず、自分にも負荷をかけ続けていくことになりがちです。結局自分にも社会(会社)にも害悪を及ぼしていることになるのです。

p242
「仕事が自分を成長させる」ことはありますが、「自分を成長させるものは仕事である」というような「仕事」を神聖化したがる昭和の経営者にありがちなセリフは嘘です。仕事に限らずあらゆること(結婚であれ失恋であれ友人であれスポーツであれ読書であれ)をきっかけに人は成長(変化)する可能性を持っているのです。

p244
そもそも人は万能ではなく、苦手なこともできないこともあるわけですから、そういうことは人にやってもらえばいい。それは誰かの仕事を作ることにもなるわけですし、自分のできることがより生かされることにもなります。自分にとっても周囲の人にとっても winwin の関係性といえるでしょう。


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