[翻訳] 検索ヒット数を参照しない

以下のページで字幕翻訳をされている方の投稿を読んだ。

「一人暮らし」と「独り暮らし」 – Gucchi's Free School(グッチーズ・フリースクール)
https://gucchis-free-school.com/diary/「一人暮らし」と「独り暮らし」/

この人はウェブ検索でのヒット数をもとに、その言葉が一般的かどうかを調べている。

僕はこれは危険な方法だと思う。

Google だろうが何だろうが、いくら検索結果に介入しないと言っていても、所詮一企業の提示するデータだ。何らかの思惑が入り得るし、その企業の利益に反することは検索結果に出こないはずだ。そもそも検索結果は「ウェブで現在インデックスされた文書」という限定されたものであり、完璧に現実世界の言語の使用頻度を反映しているわけではない。最近は人間が書かずに、機械が自動生成した文書も多く出回っているという事実もある。

さらにコンピューターの知識があまりない人(翻訳者は文系出身者が多く、翻訳者はコンピューターに弱い人が少なくない)は、検索結果がユーザーごとに最適化されていることを知らずに、バイアスの掛かった検索結果をそのまま見てしまうことがある。検索結果のカスタマイズをオフにして検索しないと(その方法も簡単ではない)、ますます現実世界の言語とかけ離れてしまう。

そういうトリッキーな問題があるので、安易に「検索ヒット数で言葉の浸透度を調べよう」と言うのは危ないのだ。でも残念ながら、僕が翻訳学校に行っていたときすら講師が検索ヒット数で判断すればいいなどと言っていた。

ではどうすればいいか。複数の辞書に当たって自分で考えるしかないと思う。もちろん自分で考えるゆえのバイアスも生じ得るが、安易に検索ヒット数で判断するよりはいいはずだ。そしてそもそも微妙な表現を使うぐらいなら、別の安全で分かりやすい表現に置き換える努力をすればいい。


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