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【税務調査編③】初めての税務調査は無予告調査!?

税理士・公認会計士ひとしです。このNOTEを開いていただきありがとうございます。前回の税務調査編②に続きを投稿しようと思います。


①税務署の説明(売上高計上漏れの指摘)

前回調査3日目の現況報告にて、まさかの1,200万円の売上計上漏れを指摘された私。呆然としましたが、とりあえず、税務署に出向いて売上計上漏れについての説明を詳細に受けることとしました。
社長は日々の売上について、売上というか、販売数量や生産数量等について、日記のようにメモ書きを毎日記録していました。ただそのメモ書き日記(以降日記と称します)は、あくまでも社長の日々の覚えとして記載したものであり、売上計上の根拠となるエビデンスではありません。
なんと税務署は、過去3年間の日記をすべて精査し、集計し日記に書かれている情報を基に売上を推定してきたのです。
但し、それはあくまでも日記から推定される売上であり、日々の売上高が記載されているものでは、ありません。しかし、ヒアリング等からその日記から推定される売上高と帳簿はある程度整合するはずだと主張されました。

②では、現実の売上計上方法はどうだったのか?

現実の売上計上の方法は、どうだったのかがまずは事実関係を整理する必要がありました。社長に繰り返し、ヒアリングし、資料も見ました。ここでは詳細は、割愛というか、恥ずかしくて言えないのですが、どんぶり勘定というか、、それは、まずいっしょと思いました。
そして税理士事務所として、売上集計の方法について、ちゃんと指導できていなかったことに愕然としました。会計事務所としては、日々の入金記録をもって記帳代行をしていたのです。なんとも恥ずかしいものです。(まぁ掛売上もないのですから、社長が日々売上をちゃんと集計していたら、それは正しい売上になるんでしょうが。。)
あと余談ですが、監査的には、売上の入金テストを実施することは普通でしたので、そこまで違和感はなかったのですが、当たり前ですが、税務調査と会計士監査では視点が逆ですよね。。

③とはいえ、クライアントを守る必要がある。

税務署の主張も一理あると思いましたが、だからと言って社長が売上金を抜いているかどうかわからないわけで、ここから色々反論しました。やったことは普段、監査で実施しているようなことです。
税務署が推定してきた売上に関して以下の観点で立証を求めました。
①売上、粗利の月次推移分析、また日々売上の趨勢分析より異常点がないことの反証(売上除外してたら異常点がでることの反証)
②税務署作成資料について精査し、とにかく間違いを指摘しまくる
③仕入からの売上の分析的実証手続
④重加算税の要件の詳細検討≒仮装隠蔽行為の客観的証拠による立証
⑤認定賞与とするなら客観的証拠による立証
⑥調査手続の問題点(調査方法に一部不備があったので、事務運営指針から指摘をしました。ほぼ嫌がらせのようなものですが。。)
あまり詳細には書けないので、このくらいにしときます。以上を2万文字くらいの意見書に纏めて、税務署に送付しました。
念のため、重加算税と認定賞与の定義をのっけて置きます。

【補足:重加算税と認定賞与】
①重加算税の定義
国税通則法68条
第65条第1項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額()に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に100分の35の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
⇒要は不正は重加算税ってことですね。
②認定賞与の定義
認定賞与は、税法上の用語ではなく、実務上の用語であり、法人からの役員に対する経済的利益の供与が役員賞与に該当するにも関わらず、法人が賞与として経理処理していない場合に課税庁が法人税法上の役員賞与と認定するものをいいます。

恥ずかしながら、税務署から認定賞与って言われたとき、そんな用語知りませんでした。実地調査が終わった後、調べたら上記のような定義だったのですね。つまり、売上除外の重加算税に加えて、役員賞与の源泉徴収が漏れたいということから、不納付加算税も課税されて、本税も含まれるとトリプルパンチなんですね。どうやら税務署はこのパターンが大好きなようです。初めての税務調査で、色々と勉強になりました。

④税務署の反応

ところで話はもどって、私が出した意見書の税務署の反応ですが、税務署も結構戸惑っていたようです。電話があり、調査が長引きますけど、いいですか、とか、どこまでやるつもりですかと言った感じで、問い詰められましたが、私としては、「どこまでもやり続けます。真実がわかるまでやり続けます。」という話をしましたw
そんなこんなで検証はお互いに続きました。向こうがある程度の意見をまとめたら、こっちも反論、追加検証を求める。その繰り返しでした。そして調査開始から2か月くらいたったところで、もう社長が「いい加減疲れてしまいました」と、「私のいい加減な管理がいかんのです。」と心が折れかけてました。そんな時、ずるいのが税務署ですね。売上計上漏れの金額を一気に下げて年間100万円でどうですか?と提案してきました。ただし、どうしても重加算税+認定賞与は取りたいみたいで、そこは譲ってこませんでした。私としては納得いきませんでした。というか今までのやり取りはなんだったの?という怒りが込み上げてきました。
そもそも不正を認定するのに、金額をさげて交渉してくる税務署の考え方が理解できませんでした。経営者不正を認定するのに、金額さげて交渉し、事実認定を捻じ曲げる意味がわかりません。
とはいえ、社長は疲弊しています。顧問税理士としては悩ましいものです。
結局、税務署の提案を受け入れることにしました。

⑤税務調査の終了

結局、私と税務署のバトルは終わったわけですが、どうやって事実認定をするのだろうと疑問に思ったのですが、なんと「質疑応答記録書」という税務署内の行政文書があるのですが、そこに仮装隠蔽行為をやんわり書いて、納税者が署名、捺印するというやつです。つまり、自白を記録した調書にサインさせられるのです。
監査でいうと経営者確認書と同じイメージです。内容は全く逆ですけどね。
私は違和感しかありませんでした。客観的な証拠なく、納税者から自白を取り調査を終わらせるやり方はずるいと思いました。あくまでも立証責任は課税庁にあるのですから。。ただ、こちら側の管理不足は確かなので、難しいところです。余談ですが、質疑応答記録書は、税務署が下書きを書いてくるのですが、私は嫌がらせかのように、その表現はおかしいとか、もっと柔らかい表現にしろとか難癖つけましたw
でも、向こうの都合のいい事実だけが行政文書として残るのは納得できなかったので、言うことはいいました。という感じで私の初めての税務調査は終了しました。初めて税務調査としては、なかなかいい経験がつめました。
また、それと同時に税理士ってすごい楽しいじゃん!って思いました。もちろんクライアントがやましいことをやっていたら、助けようがないですが、大体のお客様は、管理能力がないだけで、悪意があって脱税しようなんて人はあまりいません。ですので、お客様を守れる税理士の仕事って素晴らしいと思いました。またそれと同時に、会社の経理体制、内部管理方法の指導のしがいがあるなと感じました。税理士のお客様ってほとんどが中小企業だと思います。中小企業は当然内部管理のリソースがないので、色々と業務プロセスに不備が多いです。そのような会社を綺麗にしてあげるのも監査経験がすごく役立つと思ってます。
今後とも監査経験を十分に生かして、中小企業の役に立てるように頑張ろうと思います。ここまで長文失礼しました。

税理士・公認会計士ひとし










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