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審判や調停をするには、裁判所に行かないといけないの?

 離婚調停や養育費請求調停は、相手方の住所を管轄する家庭裁判所に提起する必要がありますが、遠方のためその裁判所に行くのが難しいこともあると思います。また、DVがあった場合など、裁判所に出頭して相手方とはちあわせたり、行き帰りに待ち伏せされたらどうしようと不安を覚えることもあるでしょう。
 このような場合、調停や審判を、電話会議の形式で行いたいと裁判所に上申することが考えられます。家事事件手続法54条1項に規定されているものです(同条は審判手続についてのものですが、同法258条で調停手続に準用されています)。条文の要件は「当事者が遠隔の地に居住しているときその他相当と認めるときは」であり、典型的には地理的に遠い場合が想定されていますが、裁判所が「その他相当と認めるとき」ですので遠い場合に限られるわけではなく、たとえば出頭することに安全上の懸念がある場合や、小さい子を育児していて期日出席の間預けられる先がないといった場合も含まれうると考えられます。また、「当事者の意見を聞い」た上で認められうるという条文になっていますので、裁判所はこちらが電話会議の形式で出席したいと言っていることについて相手方の意見を聞く必要がありますが、相手方が同意しないとできないというわけではありません。
 以前は、代理人(弁護士)がついている場合にその弁護士の事務所と裁判所をつないでの電話会議のみ認められる傾向だったようですが(こちらの本人は、代理人弁護士の事務所に来て行う)、コロナ禍を経て、代理人弁護士がついていない当事者本人のみの場合でも、電話会議による調停や審判を認める傾向が広まったようです。
 電話会議での期日出席を認めるかどうかは、事件を担当する個々の裁判官の判断ですので、どのような場合に認められるかの基準はあまり明らかでないと言わざるを得ませんが、裁判所への出頭が難しい事情がある場合は、遠慮せずにその事情を申立ての際に裁判所へ上申書を出すなどして伝え、電話での期日出席を求めるのがよいでしょう。


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