ひとりごとNo.1
大きな西洋風の建物の玄関を出た。
大粒の雨が降る中、傘を持たずに飛び出した。
森のような敷地を抜けようと必死に歩いた。
右手は前を歩く「彼」の左手に包まれていた。
うしろから、私を非難する言葉が投げかけられる。
それも嘘ばかり。
心無い言葉に涙が出そうになる
「彼」が信じてしまったらどうしよう。
思わず手を強く握ると、強く握り返された。
心配はよそに「彼」はそんなことをする人ではないと言い返しているが、足を止めるつもりは無いらしい。
邸宅の門を出ると、抱きしめられた。
「彼」が何かを言っているが、私には聞き取れない。
その代わりに遠くからズン、チャとベース音が聞こえる。
smooth like Butter
Like a criminal undercover…
アラームを止めた。
全ては私の夢だった。
だからか…私には「彼」の顔が思い出せない。
「彼」と私はどんな関係だったのだろう。
もし正夢になったら私はきっと非難され、偽りの噂を流され、肩身の狭い思いをするのだろう。
絶対に正夢になってほしくない。
でも、手を取って救ってくれる「彼」に出会えるなら正夢になってほしいとも思っている。
こんなこと思うなんて厨二病みたいだろうか…
漫画の読みすぎか?
どちらにしろ恋愛偏差値10の私には心ときめく瞬間だった。
夢の中だったとしても…
私はバターのように滑らかに
怪盗のように私の心に忍び込んだ「彼」に
赤面するのであった。
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