侍ジャパン

テレビを付けると、女子プロ野球選手のインタビューをしていた。

なにが“女子”プロ野球だ。

野球ってのは男のスポーツだ。

女がやっているのなんか見ても何も面白くない。

チャンネルを変えようとリモコンに手を伸ばしかけたとき、その女がある野球ボールを取り出した。

そこには今は現役を引退した元プロ野球選手のサインが入っていた。

俺が持っているのと同じものだ。

「子供の頃、この方に『女だけどプロ野球選手になりたい』って言ったら、『頑張れ』って言っていただけたんです。それが嬉しくて、だから絶対プロになろうってずっと頑張ってこれたんです。」

画面の中の女は笑顔で語った。

俺が同じようにサインボールをもらったとき、同じように『頑張れ』と言われた。

きっと俺の坊主頭を見て察したのだろう。

もしくは子供にはみんな頑張れと言っていたのかもしれない。

そしてこの女は本当に頑張った。

努力した。

対して俺は。

同じ野球少年団に入っていた連中と一緒に中学も高校も野球をやった。

周りもそれを当然だと思っていたし、それ以外の選択肢なんてないように思っていた。

監督の監視のもと必死に汗水垂らした。

それが今じゃどうだ。

運動さえろくにしていない。

野球に関することと言えば、テレビ中継を見て知ったかのようにあれこれ言うだけ。

余計悔しくなって、俺はテレビを消した。

“悔しい”?

俺はなれなかったのに、“女”がプロ野球選手になっていることが?

違う。

男と女じゃそもそも分母の数が違うんだ。

確率の問題だ。

じゃあ、俺が女だったらプロになれたか?

・・・。

惨めだ。

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