「痴人の愛」を読んで

最近、恋愛リアリティショーが人気だと感じるが、色恋のドロドロした側面を好きなら痴人の愛を読んでみでもいいと思う。今の感覚とはまた違った、しかし普遍的な性(さが)を感じることができる。

共に暮らし始め、ナオミは変化していき、贅沢三昧、生活は荒廃していく。どうしてそこまで主人公はナオミを好き勝手させるのか、とたびたび思う。それがナオミの魅力で、主人公は完全に呑まれているといえる。それをどこか望んでもいるのだろう。

浜田とまぁちゃんが泊まりることになった夜。自分以外の男と楽しげに話すナオミ、どうにも出来ない疎外感。枕を自分の側に置いてはくれないのか、どうなんだ、そんなことにもヤキモキする。なんか、うん、わからなくもない、抉るような描写だ。
ナオミに不貞を認めさせるところは、それで良いのか?と思った。ナオミは「うん」しか言ってないし。それほど主人公がのめり込んでいたということか。
しかしそのツケはくる。ナオミの行動が気になって、仕事も行かず探偵の真似事。そして再び暴かれた不貞。出て行ったナオミが惜しくて、叫びながら床に頭を打ちつけ、馬になる(読まないと意味不明だな)。喪失からくる耐え難い様子は狂人のよう。

他者に依存する危険を教えてくれる。まぁそんなことを伝えたい訳では無いだろうが。そうならざるを得ない、主人公。そしてナオミという性。
人間は幸福を志向しているはずなのに、のめり込むとこうも絶望に変化しやすいものか。いや、この絶望もスパイスとして味わうべきなのか。この主人公はそうした気がする(結果的にだけど)。

ナオミの顔や背中を剃るシーンはなんか凄い。主人公の欲望、葛藤を表すのにあれほどうってつけの場面はない、と思わせる。最後の「シャボンだらけになりました……」いまさら性交を隠さなくともと思いつつ、それを言わないのがこの主人公なんだと納得もする。


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