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ペアレントトレーニングだけでは不十分??自閉症の子どもを育児する母親へ本当に必要な支援とは⁉

今回、自閉症のお子さんを育児する母親に向けた「母親としてだけでなく、ひとりの女性として」どのように支援が必要かについての記事です。
*すべての育児中の母親・女性に効果的ではないことをご了承ください。

 この話を進める上での前提として、自閉スペクトラム症のある子どもを抱えながらも母親が職を有していることが、周囲から孤立せず、職場や家族から精神面でのサポートを得られることもあります。
 自閉スペクトラム症のある子どもの家族への支援を考えるとき、とりわけ就学前である子どもの発達が質的にも量的にも加速度的に変化していく時期において、今回伝えるプログラムのような家族に対する心理的・教育的支援が必要と言われています。

なぜ「ひとりの女性として」の支援が必要か?

 障がいを持つ子どもを育児する家族に対して、様々な気づきを与えていくことを目的にペアレント・トレーニングという形でサポートされています。従来のペアレント・トレーニングやペアレント・プログラムの実践報告や研究成果からは、子どもの障がい、年齢、問題行動には配慮されているものの、母親自身の特性に十分に配慮されたものになってはいません。また、母親自身が抱えている育児不安やストレスの軽減を直接的な目標にしたプログラムではありません。
 母親自身は、出産・育児期にあたりアイデンティティの葛藤の時期にあること、結婚までに形成してきた個としてのアイデンティティ新たに母になることによって獲得されるべき母親アイデンティティとが葛藤を引き起こすのです。
 お子さんを育児する中で母親になった女性が病院や保健所、どこに行っても一人の人間として、女性として話を聞いてくれるところがなく、いつも母親としての立場で対応されてしまいます。「一人の人間/女性」を「子育て」という観点から接するのではなく、「その女性の生き方」の中に「子育て」を位置づけること、女性のライフサイクルにおけるアイデンティティの成長を支えることが必要とされています。

育児期の女性のアイデンティティの様態

 女性にとって「個としての自分」と「母親としての自分」との葛藤をどのように経験し統合するかが、母親の役割を獲得していく過程において重要とあされています。それが母親の育児に対する態度にも影響を及ぼし、その母親が抱える育児の困難にもかかわっていると言われています。そのため、母親自身が以下の4つの分類でどの立ち位置にいるかを見極め支援する必要があります。*伝統母親型の説明は省きます。

統合型
女性は子育てに積極的にかかわっている一方で、外とのかかわりを持てず母親という役割を離れた自分がない状態に閉塞感や孤立感をつのらせ、「個としての自分」を求める思いと「母親としての自分」との間で、葛藤を強く感じています。
独立母親型
「母親としての自分」を重視していないため、子育てによる充実感があまり感じられないことや、自分の子育てについて自信を持ちにくいと言われています。
未熟型
「個としての自分」も「母親としての自分」も確立されていないため、母親であることが受け入れられない中で、現実的に母親としてやっていかなければならないことによる葛藤を感じています。

“ひとりの女性”としての支援プログラム

 ペアレントトレーニングの内容に加え、以下のような支援も行います。
「個として」の自分支援
「一人の人間/女性として」についての説明を受け、お母さんではなく一人の女性向けのプログラム内容について知る。
母であり女性であることを再確認し、女性同士として参加者同士がつながる。
性格検査エゴグラムで客観的に自分の性格傾向を知る。
育児ストレスインデックスで、現在の自分のストレスが何かを客観的に知る。
ストレスコーピング・インベントリーで自分のストレス対処法の傾向と対策を知る。

「母親として」の自分支援
①楽しく子ども紹介!
子どもの行動を分けて整理しよう
してほしい行動・してほしくない行動・してはいけない行動を分けて考える。
ほめるプロになろう
してほしい行動を増やすための、強化の概念や効果的な注目の仕方を知る、ロールプレイ。
困っている子どもへの対応を知ろう
してほしくない行動を減らすための、計画的な無視・予告・ブロークンレコード・テクニックを知る、ロールプレイ。
してはいけない行動への対応を知ろう
してはいけない行動を減らすための、限界設定と警告・ペナルティー・タイムアウトを知る、ロールプレイ。
*本質的には支援をする人が、どれぐらいその女性の背景やアイデンティティを理解し、丁寧に支援をするかになります。

支援プログラムの効果

 このプログラムを受けた女性で以下のような効果がありました。
中核的育児不安
「何となく育児に自信が持てない」、「この先どう育てていいのかわからない」など、子どもへのかかわり方や育児そのものへの不安が強かった母親にとって、子どもの行動の見方やほめ方,してほしくない行動への対応など、具体的な養育スキルを獲得するプログラム内容は、育児不安の低減に効果的だった。
家族の対応自信度
「子どもの問題で担任などに対して適切な対応を説明する」、「子どもの問題で母親自身を責めることを減らす」、「子どもを地域活動などに連れて行き、人々とのかかわりを進める」など、参加して他の保護者との交流を深めたり、情報交換をしたことにより、社会的な孤立感を和らげることに効果的だった。
子どもの行動の許容
子どもの行動を、してほしい行動、してほしくない行動、してはいけない行動の3つに客観的に分類することを知ったことにより、子どもの行動の見方が変化した。また、母親自身の対応の仕方が変化したことによって、子どもが抱える不安や情緒といった内在化される問題や、攻撃性といった外在化される問題が変容されることに効果的だった。

最後まで読んで頂きありがとうございます。では、もう少し具体的に発育・発達のことを教えてほしい、今回の記事に書いてあることの支援をしてほしいと思われたら、こちらのサービスで横山が伴走致しますので、良かったら覗いてみてください。

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