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ボランチ・オブ・ニイガタ(宮本英治): J1 第24節 セレッソ大阪×アルビレックス新潟

怪我の長期離脱から復帰した宮本。フェイスガードが大変そうだけど、この試合では復帰直後とは思えないほどのパフォーマンスを見せてくれた。

そんな宮本のリーグ復帰戦を振り返ってみたい。

まずはプロットから。

自陣中盤でのボールタッチが多い宮本。ボランチらしいプロット。
パスについてはこれといった特徴はなく無難に繋いでいる印象。

ボールタッチはボランチっぽいプロットになっている。パスのプロットと組み合わせるとこの試合ではパスで組み立てるというよりはボールを奪うことに比重が置かれていたということになるだろうか。

とはいえ、宮本はビルドアップにおいてはアンカーポジションでのレシーバー役を担い、秋山に後ろを任せられる時は前線に上がり、守備ではキッチリと中盤のフィルター役になるという新潟のボランチに求められる全てをもっている。秋山がパス方面で尖っているとしたら宮本は守備方面に尖っている。

それでは印象的だったプレイを個別に見ていこう。

守備能力の高さ

前半13:10には守備の鋭さが光るプレイを見せる。自陣アタッキングサード中央でセレッソにボールを持たれてしまうものの体を当ててボールを奪いに行く宮本。カピシャーバからボールを奪うことこそできなかったが攻撃の芽を摘む良いタックルだった。

前半15:55には相手ゴールキックからのセカンドボールを猟犬のように奪いに行く宮本。最終的にはマイケルが回収して前線へ繋げるが、ボールへの執着はまさに猟犬。噛み付いたら離れない宮本の屈強なボールハント能力がとにかく凄い。17:10にもボールに噛み付いたら絶対に話さない守備で相手を怯ませたり、34:20には味方との連携でボールホルダーを挟んでサクッとボールを奪ったりもする。41:05にはボールホルダーをタッチラインに追い込みつつ一気に噛みついてビビらせて、後半56:35にはアタッキングサードでボールを持つセレッソに噛みついて芸術的なクリーンタックルでボールを奪い取る。58:05にはショートカウンターを浴びてゴール前中央でレオセアラにシュートモーションまで持って行かれてしまうがまたしてもクリーンなタックルでボールを奪い返すと、59:45にはフィジカルに頼らない距離の詰め方でボールを奪ったりする。

こういったフィジカルに頼らないで距離の詰め方ひとつでボールを奪うのが宮本の守備の特徴になるだろう。とにかく圧倒的な対人守備能力を見せつけてくれる俺たちの宮本なのだ。

攻撃要員としての宮本

宮本の特徴は守備になるが、それと同じくらい試合を組み立てる能力にも長けているので具体的に見ていこう。

前半1:35のシーン。アンカーの位置で受けたボールを落ちてきた長倉にダイレクトパスで預けて一気に前進させる宮本。直後の2:00には左サイドのハセモと細かくパス交換しながら守備を食いつかせ、ハセモの裏抜けに合わせる形でスルーパスを出したりもする。

前半14:40のシーン。ビルドアップ時に味方と斜め関係を作ってボールを引き出す宮本。相手の守備のグリッド間の絶妙な位置にポジショニングしてボールを引き出す宮本がボランチ・オブ・ニイガタという感じで良い。ボールを受けたあとは滑らかにターンして斜め前方に落ちてきている長倉へボールを預ける。全てが滑らかすぎる宮本のボール捌き。直後の14:55にはやはりグリッドの間に顔を出してボールをサクッと受けてダイレクトパスで広いスペースの真ん中で待機する秋山にボールを渡す。流れるようにボールを動かす宮本の所作が非常に美しい。

前半19:40のシーン。ここまでの時間でビルドアップと守備に特徴を見せていた宮本だが、小野がハーフウェイライン付近でボールをキープすると小野のキープ力を信じて前線まで駆け上がりセレッソ最終ラインに裏抜けアタックを仕掛ける。この場面で小野からボールが出てくることはなかったが、攻撃にも積極性を見せてくれる宮本。24:50に自陣深くからの裏ポンキックに合わせて最前線目掛けて走り出したりもする。

前半25:00を過ぎるとアンカーのタスクを秋山に任せて一列高い位置を基本ポジションにする宮本。ビルドアップ要員として、守備のスペシャリストとして、攻撃の厚みを出すメンバーとしてなど様々なタスクをこなせる宮本が本当に凄い。宮本が一列高い位置にポジショニングすることでボールの差し込み先も一列高くなる俺たちの新潟。押し込んだ際には最前線にスタンバる俺たちの宮本のマルチロールぶりよ。

前半27:35のシーン。ペナルティエリア付近でキープした長倉からボールを預かるとポケットに飛び込んでくる藤原目掛けて絶妙な縦パス一閃を供給する宮本だったのだが藤原シュートは枠を捉えきれず。完璧に差し込んだ縦パスだったので俺の中のゴール期待値が振り切れるほどに爆上がりだったのだが結果は枠の外。これは非常に素晴らしい崩しだった。惚れる。

前半39:20のシーン。ビルドアップの流れからゴメスがボールを持った際に落ちて受けにくるのはハセモ。そのハセモと入れ替わるようにタイミングを合わせて上がる宮本に目掛けてハセモが得意のヒールでボールを流すと、宮本は絶妙な体の当て方でボールキープして前線を作る。ボランチながら前線を作れるというのは宮本のスペシャリティのひとつと言って良いだろう。その後はボールキープから中央に向かってドリブルを開始して守備をホイホイ寄せてからサイドを駆け上がるハセモに縦パスを通す。ボランチっぽくない攻撃的な動きをする宮本が熱い。

前半42:00のシーン。左サイドで追い込まれたかと思ったゴメスが宮本にパスを出すと宮本はトラップすると見せかけてノータッチでターンして自陣深くまで落ちてきている長倉にボールを預ける。フィジカルでぶつかるのではなくフィジカルコンタクトを一切せずに守備を外す宮本が素敵すぎる。

後半54:35のシーン。自陣でボールをキープすると、広大なスペースに向かって走り出している長倉をターゲットに縦ポンを蹴る宮本。完全にラインの裏に蹴り出すことに成功したが長倉の脚をもってしても追いつくことができずターンエンドとなったものの、長倉や小野が絶え間なく圧力を掛けることでラインを押し下げ新潟に優位な形を作り出すことに成功する。ピッチの状況が本当に良く見えている宮本。

ビルドアップも守備も攻撃参加もできるマルチロールな宮本は新潟にとって欠かせない選手だし、新潟のサッカーを体現できる選手でもある。

これからも期待せずにはいられない。

試合雑感

宮本がスタメン復帰。島田よりも前に行く頻度が高くなるような気がする。セレッソの予想は433なのだがメンツからすると攻撃的布陣としての433になるんだろうな。鳥栖もFC東京もサイドにボールを逃す新潟のロブを狩りどころに設定していたようなのでセレッソが同じことをしてくるかに注目ちゅうもくしてみたい。勝ち点が欲しい。

前半終了時では全員にポジティブ評価しか無い。藤原もスタートからガンガンポケットに飛び込んでくるし、なんといってもやったね松田!今日はスピードスター枠だな!

全員がとにかく高評価なのだがピックアップするとしたら長倉になるだろうか。本当にフィジカルが異次元すぎておかしい。ゴール前中央で2〜3人に当たられてるのにビクともせずに吹き飛ばしながらシュートまで行ってしまうのは日向小次郎すぎるので是非とも袖を捲ってほしい。

一方のセレッソは非常に華やかなサッカーをしていて442守備のイメージは何も残っていない。その中でも登里は存在感が飛び抜けていて、このセレッソは登里がチームの中心なんだろう。ハーフスペースを上がったり下がったりしながらボールに触って運ぶのは全て登里だし、たまにカピシャーバとレーン移動するのが嫌らしい。登里に意識が行くとアンカーの田中駿汰にフリーで入るというのが一連の流れだろうか。

今日の新潟の守備は良い時の新潟の守備で、サイド追い込み漁を集中力高くできている。上門がちょっと怖いのだがデンとマイケルがなんとかしてくれるだろう。

とにかく華やかな試合で楽しい。この楽しい気持ちのまま勝ち点3を持ち帰ってもらいたい。

そして試合終了。

最後のゴラッソはもう止めようが無いのだが無事に勝ち点3ゲットした。小野の有言実行に痺れる憧れる。新潟は追い込み漁とゴール前バス停めができてる時は本当に強い。毎試合これができれば良いのだがそうもいかないくらいに大変なことなのだろう。宮本も素晴らしい活躍だった。

セレッソは交代を絡めてスタイルも変えるというオシャレなことをやっていたのだが一歩間違えれば意識高い系サッカーになってしまうと思う。セレッソは登里と柴山が共存していた時間帯が本当にめんどくさかったのだが登里が下がってドグソで退場してと全てが上手くいかなかった試合だったのだろう。小菊監督の評価はちょっと難しい。

今村主審の仁王像っぷりが日本人審判じゃない雰囲気出してたりしてそこもなんだか面白かった。

楽しい試合試合だった。


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hitoshi
「これでわかった!サッカーのしくみ」をコンセプトにアルビレックス新潟の試合雑感を中心に書いています。