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ネガティブケイパビリティを抱きしめる「なにくそ」#25

前回は混沌の神様を題材にネガティブケイパビリティについてnoteに書いてみましたが、
混沌の今の世の中を読み解くキーワード、ネガティブケイパビリティについて、もう一度取り上げてみたいと思います。

今回のネタ元は講談社のバタやん、とコラムニスト・スピーチライターのひきたよきあきさんのVoicy。

講談社のバタやんのVoicy「真夜中の読書会」は心地よい音楽とバタやんのおっとりとした口調ながらも鋭い言語化にハマっています。^_^

結論を急がせる「よかれと思って」

バタやんのVoicyはリスナーの人生相談から入るんですが、今回はリスナーのモヤモヤを言語化するワードとしてネガティブケイパビリティを取り上げていました。

リスナーの悩みはすごくシンプル。

癌を罹患したリスナーに対し知り合いが癌と闘病した人のエッセイを送ってくれた。

それに対しデリカシーがない、というか、よかれと思ってされたと思うが、すごくモヤモヤしてしまう自分がいる、と言うもの。

うーん、これはわかるなという感じ。( ̄∇ ̄)

癌罹患者、といってもいろいろいるだろうに、第三者から「これを読んどけば、あなたも救われるでしょ」と勝手に結論めいたものを送りつけられたように感じてしまうかもしれない。。

しかし、これは私が前回noteに書いた自分の経験と似てる!!

旦那さんの恨み節ばかりの友人に私は「旦那さんへの感謝」という解決策の結論めいた正論を突きつけてしまった、、。

デリケートな問題に対し直線的なアドバイスネガティブケイパビリティを欠いた非常に危ういものとなる。

文学はあいまいさ、ネガティブケイパビリティから生まれる

答えが見出せそうで見出せないイライラ感を楽しめむところから文学は生まれる。

ネガティブケイパビリティとは言葉を流行らせたのは日本人では精神科医の帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)さんだそうだが、最初にこの言葉を使ったのは19世紀イギリスロマン主義の詩人ジョン・キーツだそうだ。

曖昧の中から紡ぎ出された言葉が人の複雑な心の揺らぎや情景を表現する。

クリエイティビティアートもすべてネガティブケイパビリティから生み出されるという。

キーツはシェイクスピアは極めてネガティブケイパビリティが極めて高い劇作家・詩人であったと言っている。

スマホはネガティブケイパビリティを低下させるか

ひきたよしあきさんはVoicyでスマホ検索で何でもすぐに答えが出る社会ではネガティブケイパビリティが著しく低下しているのではないかと指摘している。

ひきたさんは博報堂時代、国会図書館まで足を運んで情報を取りに行ったことがあったそうだ。

しかし今はワンクリックで情報が得られてしまうので、情報を得る過程での副産物として、自分で考えることもなくなり、手っ取り早く結論だけを得ようとしがちなのではないだろうか。

確かにそういう側面もあるかもしれない。

でもものは考えようで容易に情報にアクセスできるようになった分、主体的に情報を選び、質の高いコミュニティで壁打ちすれば、その問題は解消されるのではないだろうか、と私は思ったりする。

大切なのは「情報検索の方法」でなく、その情報の「活用と共有」の仕方なのではないだろうか。

イオンシネマ問題と断罪社会

それより今の時代で怖いのは、何らかの社会課題が生じた時、表面的な情報だけを捉えてネットで断罪するという現象

詳細はよく知らないが最近の炎上事件として、
車椅子インフルエンサーがイオンシネマでの対応に問題提起したことに端を発し、イオンシネマ謝罪
その後、車椅子インフルエンサーがネットで強烈なフルボッコにあっているのだという。

ここでの論点は車椅子インフルエンサー側が正しいのか、イオンシネマ側が正しいのか、ではなく
当事者でない多くの人が代理戦争のように白黒を決めようとしていること

バタやんのVoicyでも原発推進派と原発反対派は真逆の意見を持っているようで、実は抽象化すると目指すべき社会は同じだった、と話していた。

白黒決めないと気が済まない、誰かを断罪したいというのこそネガティブケイパビリティの低下の表れではないだろうか。

ネガティブをネガティブのまま乗り越える「なにくそ」

とはいえ理不尽な目にあった時、辛い時は何かにかこつけて自分を守りたい、というのも人間。

ひきたよしあきさんは、そんな自分を守る魔法の言葉として「なにくそ」の4文字を提唱してくれている。

昔からある言葉ではあるが「なにくそ」は日本柔道の父、嘉納治五郎の言葉。

日本柔道の父 嘉納治五郎

自分を励ます言葉は簡単なほうがいい。

人生には、この「なにくそ」という言葉が何より必要だ。勝ってもなにくそ、負けてもなにくそ

その精神が明治から昭和にかけて日本におけるスポーツの道を開いたそうだ。

まとめ

ネガティブケイパビリティは不確実性の高い現代を生き抜くクリエイティビティにもアート思考にも必要な大切な考え方。

されど人間は弱い。弱いから答えが見えない不快感からのがれるため何かと理由をつけて白黒つけたり、結論を急ぎたがる。

そんなときは「なにくそ」精神。
なにくそにはロジックも何もないけれど、結論を急がず心の均衡を保つたった4文字の言葉として心に留めておきたい。





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