小径の曲がり角 #18

先日、関西でお世話になっていた方が関東で開店されたので、久々に少し早い時間に家を出て電車に揺られ街へ繰り出した。こちらのリサーチ不足で開店時間が少し遅かったため、早めに着いた私は街をぶらぶらと歩いてみた。約30分間、音楽を聴きながら極力地図を見ることはなく、自分の曲がりたいところで曲がり続ける。駅から続く大通り沿いにはよく知るチェーン店やコンビニ、美容院が目立つが、少し小径に入ると個人経営のおしゃれなカフェ、こじんまりとしたお店、閑静な住宅街へたどり着いた。その場所でのみ呼吸をしているものの命がある。

久々に外の空気を吸いながら知らない土地を歩くと、自分の気づかなかった感情や目標に気づく。大きくて立派な家を見ると、もっと仕事を頑張っていつかこんな家に住んで、大好きな人や仕事に囲まれて過ごしたいな、と思い描く夢の輪郭がさらにはっきりと縁取られていく。30分歩いたあとは気づけば少し心が軽くなり、気分は上を向いていた。

初めての一人暮らしの物件選びではかなり室内環境を重視した。関東でバイトをするつもりはなく、音楽に24時間どっぷり浸かる日々を過ごすつもりで出てきたので、とにかくずっと家にいても苦にならないような環境。ありがたいことに親切丁寧な不動産屋に巡り会えたおかげで今ではすっかりインドアでも平気になってしまい、ジョギングで家の周りは走るものの知る人ぞ知るような場所へは自宅近辺ですらまだ行けてない。他の人にとっては違うとしても、自分だけが知っている隠れ家を見つけるのことが今年の目標のうちの一つかもしれない。自分の家では吐き出せないため息を、隠れ家でなら吐き出せるだろう。決してため息はついてはいけないものではない。宛てもなくひっそりと吐き出せば、息でつまりそうに膨れ上がった胸がすっと小さくなり、そっとその空間が息を吸い込んでくれる気がする。

大通りは見通しもいい。たくさんの人も歩いている。特に宛てもなく歩いていたってお腹が空けばご飯屋さんはあるし、疲れたらフラッと入ることのできる本屋やショッピングセンターがある。どんな交差点にも標識はあるし、信号機も歩道もある。ただその大通りから枝分かれしつづける小径には意識をしなければ歩を進めることはない。人通りの少ない小径の先の曲がり角の、またその先には何もないかもしれない。だけれど、そこに入った人だけが辿り着く特別な場所がきっとある。人生も一緒だから、どんな道でも自分が信じて進んだのなら大丈夫。目的があるから敢えて道を曲がったのではないだろうか。小さくても無限に広がる道を進むことで初めて世界が大きく広がっていく。

上京して2年目。まだまだ道は険しいが、この坂道の次の曲がり角の先でどんな景色が待っているだろう。非常に楽しみである。


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