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ジェダイかもしれない

ここ最近、お世話になっていた音楽関係者の退職が続いています。

それが、適度な情熱を持って良い仕事をしていた方、情熱レベル10の人じゃなくて、情熱レベル6-8ぐらいの人です。

情熱レベル10(MAX)の人は、それ自体は素晴らしいことなのですが、仕事相手と情熱を共有できるかどうかで、随分結果が変わってくる。
情熱が合致しなければ、こちらの話は聞いてくれなくなることもあります。まあ、相性ですよね。また、細かいことを情熱レベル10で乗り切ってきているところもあるので経理や人付き合い、他人の細やかな感情や違和感を、情熱というブルドーザーで踏みならして進行してしまっている場合もあるなあと、経験として思います。(自戒もあります。)まあ、情熱ってそういうものかもしれませんが。

だから、情熱レベル6-8ぐらいの仕事人が、人の話を聞きながらきっちり仕事してくれているのは、非常に助かるし信頼できる。こういう人たちが中間を固めてくれているから、全体が分厚く健全なものとなるのだと。

が、最近この中間の押さえポジションの30代後半ー40代の離職が多い。
とても残念ですが、ぶっちゃけこの先音楽関係の仕事が成長していく想像をするのは難しいので、これが生涯の天職だと思っているのでない限り、離れて当然だとも思っています。

悲観的になっているわけではありません。私はプレイヤーだし、元より大波の中をサバイブするつもりで生きてきていますが、会社に所属する方々は個人でサバイブはなかなか難しいですし、今後のそれぞれのご活躍を応援したいと、心から思っています。

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話は変わりますが、こういう時に「音楽業界を離れる」という風に「業界」という言葉を付けますけれど、いわゆるギョーカイという単語だけで使うことって、減りましたね。若い人からは聞かない。私もあまり使わない。
そもそも業界という意識が希薄で、若ければ若いほど、業界に仕事を回してもらったり守ってもらった実感がないのだと思います。

あくまで私の周囲の話で、私個人の実感なのですが、今、若いプレイヤーのほとんどが教育機関で音楽を学ぶようになり、徒弟制度的な師匠のボーヤをしたり、先輩から仕事を回してもらうことでプロになっていくことが、減りました。
教育機関に所属する先生に教えてもらい、友達とライブをして、YouTubeで情報を仕入れたり音楽を発表したりする方が多いかも。スタート時点から以前のような集団に属する感覚がなく、圧倒的に個人で動いています。海外に留学したり活動経験のある人も多い。

昔は演奏は固定報酬をもらってするものでしたが、それは店や先輩バンドマン、インペグ屋など、上位の存在に音楽を認められて仕事と報酬が与えられるのが通常だった。しかし、今はチャージバックという集客次第での報酬が当たり前になり、上位の存在に認められなくても演奏はできますし、報酬は上位の存在(業界人)ではなく、お客さんから頂いているものという認識になっているんじゃないでしょうかね。
私自身は、システムに関しては特に悪いこととも良いこととも思っておらず、ここはチャージバックでもいい、これは固定報酬を貰わなければいけないと、ケースバイケースで交渉したり考え分けています。

媒体も一緒ですよね、上位の存在、権威ある雑誌や媒体に認められるより、リスナーの支持を受けて世に出ていく方がかっこいいという価値観もあったり。

現在の状況やシステムについての是非を問う話をするつもりはないのですが、(システムの是非の話をするつもりがない時点で、私も業界意識がないんだと思いますが)、業界という集団に帰属する意識がなくなってきているのは、教育の環境、スタートの環境、演奏の環境が30年前とは随分変わったから、自然なことだろうなと思います。

それが、ここから私のポジティブシンキングなのですけども、業界意識はないけれど、〈ジャズ・ミュージシャンという生き方を選んだ、ジャズを愛する人たちとの連帯意識〉は、世界的にうっすらと、確実にあるような気がします。違うかな? 私が思ってるだけかしら。コロナ禍で、あるなって思ったんですよ。業界意識じゃなくて、うっすらとした連帯意識。
これはミュージシャンだけじゃなくて、個人レーベルをやっている人やエンジニアさんたち、ライブハウスやライターさんなど、非常に広範囲にわたりますが、それぞれが同心円上に強弱レイヤーを持って連帯意識があって、それが交差して混じり合う感じ。互助会じゃないというか、連帯意識の連鎖と広がり。

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話を元に戻します。

音楽「業界」からの、情熱6-8レベルの人たちの離職が続くという話。
この連帯意識連鎖の中で、案外と強い灯火だった存在がなくなることは、とても残念だと思っていますが、色々考えをめぐらせていくうちに、この人たち、ジェダイかもしれないと思ったんですよ。

この情熱6-8の人たちは業界で鍛錬を積んで、上の人の話も下の人の話も聞いて合議して、システムの動かし方も知って、さらに長年フリーダムで滅茶苦茶なミュージシャンの話や行動にも付き合っており自由な思考にも触れてきているので、羽目のはずし方も知っている。若いミュージシャンの考えも期待も知っている。そして、当然のことながら音楽への愛と造詣が深い。
夢に生きる人間と現実社会の間で、夢を現実にする超具体的な仕事をしていた人たちですよ。

離職の連絡を受けたら、その瞬間はとても残念に思ったのですけど、あとからふわふわと考えていたら、こういうパワーと知見を持った人たちが他の仕事をしながら散り散りばらばらに隠れて暮らしてるって、オーダー66で隠れたジェダイみたいなものかもしれないなと思って、それはそれで楽しいことかもしれないなと思いました。

間違いなくこの人たちは、音楽好きをやめられない。やめれるわけない人たちです。そういう人が、職場、友人、家族などへ影響を及ぼさないわけがない。超フォースの強い人たちですもの。絶対、普通の暮らしをしていても、不意にフォースを使って人助けとかしちゃうんですよ。

などと考えておりました。

ひとまずはお疲れさまでした。
May the Force be with you. 

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