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デジタルテクノロジーはこの10年余りで急速に社会に根付き、ライフラインともいえる存在になってきている。
一昔前であればテック業界は業界に精通している人の間だけで動いていたイメージがあるが、今や、Google、Apple、Meta(旧Facebook)、Microsoft、Amazon、NVIDIA、Teslaなどテック業界の主要メンバーは誰もが知る企業として世界中に認知されている。

そんな中、アメリカの雑誌「アトランティック」(1857年創刊、最新ニュース、政治、国際関係、教育、技術、健康、科学、文化の毎日の報道と分析を提供している。)が「GOMA」に着目している記事を目にした。

「GOMA」とは、Google、OpenAI、Microsoft、Anthropic(OpenAIの元メンバーにより、2021年に設立されたAIスタートアップ企業)の頭文字を取ったものだが、この4社は生成AIの分野で注目を集める企業であり、「アトランティック」には「AIの世界では、すでにすべてがたった4社に集約されつつある。」と書かれている。

もちろん、AIチャットボットとその類のものはまだ初期段階にあることは理解した上での見解である。OpenAIは2022年の「ChatGPT」で生成AIブームに火をつけ、MicrosoftはChatGPTを基盤としたチャットボットを自社の検索エンジンBingに導入し、Googleは検索、地図、ドキュメントなどにAI機能を搭載すると発表し、独自のチャットボット「Bard(バード)」を発表するなど、各社のプラットフォームに生成AIを導入する形で、新しいサービスを提供している。

Anthropicがリリースしているチャットボット「Claude」は、「すでに数千の企業がClaudeのAPIを利用している」と言われているほど企業導入が進んでおり、ZoomやNotion、AI画像ジェネレーターのMidjourneyなど、いくつかの大手の顧客とカスタマイズされたAIモデルの構築に取り組んでいる。改めて考えてみると、Google検索やBing検索を使うと生成AIが作った説明文が一番目に出てくることから、知らないうちに生成AIを利用していたのだと気付かされる。

このように世界中を席巻している「GOMA」だが、2023年11月17日、ショッキングなニュースが流れた。OpenAIの取締役会は、共同創業者のサム・アルトマンがCEOを辞任し、取締役会を離れることを発表したのである。
アルトマンといえば、「人工知能を害を及ぼすのではなく全体として人間に利益をもたらす可能性が高い方法で進歩させること 」を目標としてOpenAIを設立した人物である。アルトマン、ブロックマン、イーロン・マスク、ピーター・ティールと各界の精鋭が創始メンバーであるOpenAIの中で、アルトマンはCEOとしてメンバーをまとめ上げるだけでなく、GPT (Generative Pre-trained Transformer)と呼ばれる自然言語処理モデルの開発にも関わり、アルトマンの指導のもとGPT-3、GPT-4などのモデルを次々に開発し、大規模言語モデルの性能を向上させてた人物でもある。

現在の生成AIの基盤を作ったともいえるアルトマンがOpenAIを辞任したというニュースに正直、耳を疑った。OpenAIの取締役会は公式ブログで、「アルトマンの辞任が取締役会の審議プロセスを経たもの」「取締役会とのコミュニケーションにおいて一貫して率直でなく、取締役会の責任を果たす能力に支障をきたしているとの結論に達した。取締役会はもはや、同氏が今後もOpenAIをリードし続ける能力があるとは信じられない」としている。

辞任としているが、これは解任であり、それもGoogle Meetを通じて解任を通告された事実がブロックマンのXの投稿で明らかになっている。この解任劇の詳細は不明であるが、後任は未定で現CTOが暫定CEOに就任するという何とも無計画で突発的な解任にも見える。取締役会の会長であるブロックマンも同時に会長を解任されており、主要メンバーが2名も取締役会から去る形になる。

他人事ではあるが、OpenAIはこの先大丈夫なんだろうかと心配になる。AIという概念の起源はアラン・チューリングの論文「計算する機械と知性」であり、それから70年以上かけてやっと実用化され始めた矢先の出来事である。AIの黎明期ともいえる時期に内輪揉め、権力闘争など人間の欲深さが出る形で、これからのAIの発展・開発を妨げて欲しくはない。この状況をAIが分析すれば、どのような解答を出すのだろうか。

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