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「同期はいつも私の心の支えでした!」(「大学の部活としてのフィギュアスケート」を見せた、WASEDA ON ICE)

3月13日(土)、WASEDA ON ICEが開催されました。
当日は、YouTubeで生配信されたこともあり、公演を楽しく観覧された方も多かったことと思います。

取材のために現地で観覧させていただいたので、YouTube配信では見られなかったかもしれないことを、いくつか書いておこうと思います。

この日の東京は、朝から大雨と暴風の春の嵐。
リンクの中にいても、外の、灰色で寒い気配が感じられました。
そんな土曜日の午後、さらに人も少なかったにもかかわらず、リンクの中はどこか親密であたたかな雰囲気に満ちていたのが印象的でした。
外の灰色の世界に対して、何かに守られているような感覚のする空間が、そこにありました。

また、スタンドにはいくつか、お花も届いていました。
スタンド花を見ると、ああショーだな、と気持ちが一気に上がります!

楽しいシーンもいくつか。

自分の個人演技が終わった部員たちが、次々にリンクサイドに集まってきて、氷上の仲間をにこにこと応援する姿は、とても微笑ましかったです。
早稲田の小旗を持っている部員は、氷上のスケーターが目の前を通ると、激しく振って応援。
すると、滑っている部員がそれに呼応して、滑りながらジェスチャーを見せたりしていました。

とても大学生らしい、そして同じ部活動に所属している部員らしい、カジュアルで楽しい空間が、そこここで見られたように思います。


「引退生演技」では、4年生4人が、アイスホッケーの早慶戦の合間に披露する予定だったという、グループナンバー『High school Musical』を披露。
皆、アイスホッケー部同期のユニフォームをぶかぶかに着て、楽しそうです!
大学生のお姉さんスケーターたちらしい、清々しく、青春感にあふれた数分間でした。

部員たちの演技からも、伝わってくるものがありました。

学年に関係なく部員たちが「大学卒業とともにスケートとの日々は終わるだろうことをきちんとわかったうえで、今の自分に合っている曲を、できる範囲の技術で見せる演技」というものを次々に披露。
そうした演技に、驚くほどに胸打たれました。

たとえば、「曲の「パン!」という大きな1音に合わせて、スピンの途中で力強く腕を伸ばす」という振付けがあったとします。
これを、「振付けだから」と何となく腕を伸ばすのではなく、演技について自分の頭で考え、見せるべきところをきちんと認識したうえで、「ここは大切だ」と力強く腕を伸ばしている、というような場面が、数多くの部員のスケートから見られました。
ジャンプなど難しい技にとらわれすぎずに、やりたいことを見せるスケート。
そういうことって、伝わるものです。

大会ではなく公演だということもあって、自分がどうありたいのか、滑りたいものはどんなものなのかということが、よりはっきりと見えたようにも思います。
小学生や中学生ではなく「大学生のスポーツ」として、スケーターたちの意思や思考などが見える、学生スポーツのすばらしさが詰まっている時間でした。

WASEDA ON ICEは、「大学の部活動」という、フィギュアスケートのあまり知られていない一面を広く見せてくれる、ひとつの機会にもなったのではないかとも感じました。

WASEDA ON ICEには、もうひとつのハイライトがありました。
引退する、早稲田大学の4人の4年生の存在です。

スポーツに接するとき、無意識のうちに、競技視点……勝敗とか順位といったものを中心に見ていることがあります。
成績というのは競技の持つ魅力のひとつの側面ですから、それも、スポーツとの接し方のひとつです。

そういう視点で見てみると、彼女たち4人はかなり違っていました。
4人は、スケート歴もスケートのレベルも、全然違う。
ですが、WASEDA ON ICEの公演中も、そのあとに少しお話をうかがったときにも、そうしたものを越えた信頼関係を築いていることが強く感じられました。

そんな4人の姿がとても心地よく、同時に少し不思議で、後日4人にメールでお話をうかがったところ、その返信には、「大学の部活としてのフィギュアスケート」がどういうものなのか、ということが詰まっていたので、ここにまとめておこうと思います。

■谷川栞理さん
試合で、ドキドキしながらも成功を祈り一生懸命応援してくれる、私を影で支えてくれているのが、同期でした。
試合の結果が悪くモチベーションが低かったときとき、同期と話したら「なんだか今後も頑張れそう!」と思えたことは、今でも覚えています。

同期4人、スケートに対する向き合い方は違ってはいましたが、それぞれのスケートへの姿勢に接するたびに、1つのことに向き合い続けることの尊さを学ばせてもらいました。
■齊藤聖果さん
頑張っていて、スケートへの愛が深くて、そんな3人の演技には、いつも刺激を受けました。

(中学でいったんスケートを離れたので)3年ぶりのスケートだったし、シンクロナイズドスケーティングを始めたこともあって、同期がいなかったら、大学ではシングルをやっていなかっただろうなと思います。
4年生になってからは部練もはじまり、スケートリンクに行くことに久々にワクワクしました(笑)。

シングルは個人競技なところがあって、なかなかホームリンク以外での交流が深くなかったりしますが、同期で集まるとなぜか安心感が強くて、本当に同期に恵まれたなと思います。
最後までスケートを楽しいと思えて終われたのは、まこ、ゆうか、しおりの3人のおかげです。
■東真子さん(主務)
私にとって同期は、スケートを頑張る意味、でも、試合などの運営を頑張る意味、でもありました。

大学からスケートを始めたこともあり、級を取得して東インカレに出場すること、それを勝ち抜いてインカレに出場すること……は、夢、だけれど遠い夢でした。
そんな遠い夢を、絶対に叶えたい夢に変えてくれたのが、同期でした。

1年生の時のインカレで、栞理が3級クラスで優勝し、優香が7、8級クラスで3位になり、それを間近で見たことで、「難しくてもいつか同じ舞台に立ちたい」という気持ちが私の中に芽生えました。
また、このとき、優香、栞理、聖果がかけてくれた「4年生のときには、4人で一緒に出ようね」という言葉が、4年間ずっと私のモチベーションでした。

結局、4年時のインカレは開催されなくなってしまったのですが、インカレの開催に向けて学連員(日本学生氷上連盟のフィギュア委員長)として尽力したのも、新たに「インカレに出る人のような演技をして引退したい」という目標が生まれたのも、同期のおかげです。

同期はみんな、とにかくよく考えてアドバイスをくれる人達で、スケートのことでもスケート以外のことでも、悩んでいるときにはいつも助けてくれます。
部練が始まって、約束しなくても会える機会が増えたのは実はとても嬉しかったです(笑)。

同期は、いつも私の心の支えでした!
■永井優香さん(主将)
スケート部の同期は、私の心の安定剤でした。

4人集まれば平和な雰囲気を感じて、自然と笑顔になれたし、会わない時も同期を思い出すと心がポッとあたたかくなる感じがして、またいろいろと頑張ろうと思えました。
私のスケートをたくさん褒めてくれたことによって、低い自己肯定感を高めてくれたことも、ありがたかったです(笑)。

大学からスケートを始めた真子が、入学後、何もかも一生懸命にスケートに取り組む姿勢を見て、初心を思い出させてもらいました。
また、WASEDA ON ICEの運営を取りまとめる姿を見て、実行力やスピード感に改めて尊敬の念を抱きましたし、社会に出る前に、身近ですごい人の動きを見られて、刺激をうけたし勉強にもなりました。

栞理は演技中、本当に素敵な笑顔で楽しそうに滑るので、見ているこちらも幸せな気持ちになれました。
私も、見ている人にいい影響を与えられるように、まずは自分自身がスケートを楽しまないといけないな、と気づかされました。

聖果は、シンクロナイズドスケーティングを長く経験していたことも関係したのか、魅せることが上手だったので、踊る姿を見て勉強させてもらっていました。

フィギュアスケートは個人スポーツだけど、部活動で同じ大学名を背負う1つのチームだと考えると、1人じゃないんだ、と感じられました。

以上、メールの抜粋です。

全員が、「同期4人で会うのが楽しみだった」「4人で会うと、リラックス&安心できた」「同期から刺激を受けた」と語っていました。

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(写真左から、東さん、永井さん、谷川さん、齊藤さん)

競技で戦いあう仲間とはまた別の形の、フィギュアスケートでのつながり。
WASEDA ON ICEは、このスポーツのそうした側面も見せてくれた公演でした。

今日3月25日は、早稲田大学の卒業式です。
皆さんの旅立ちに、その先の日々に、幸多からんことを!

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