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オーストラリアの大学のカリキュラム(研究課程編)

今日は、オーストラリアの大学のカリキュラム(研究課程編)を主に博士課程を中心に説明したいと思います。

大学院編で説明したように、大学院(修士)には、科目の履修のみで、論文を課されない課程(coursework)と、論文執筆をメインにしたMasters degree by Researchがあります。

1. Masters degree by Research

これは、以前書いたように日本の修士課程に相当するものです。最初の学期に科目の履修(研究方法や文献レビューなどに特化した科目)が義務付けられる事はありますが、基本的には2年間研究に従事するものです。修士論文を提出し、試験に合格すれば修了です。

2. Doctor of Philosophy

いわゆる博士課程です。日本では、3年が原則的な期間だと思いますが、オーストラリアでは4年間(フルタイム)です。もし社会人学生など、働いていてハーフタイムを選択する場合には、8年間の期間になります。こちらも、最初の学期に研究方法や文献レビューなどの科目を履修することが求められる場合があります(学生の研究経験による)。そして基本的には、研究に従事し、最後に博士論文を提出して試験に合格すれば修了となります。

3. 研究テーマはどう決める?

研究テーマについては、基本的に個人によって決め方が違います(例えば、指導教員が提案したり、指導教員が予算を持っているプロジェクトの研究員として雇われる場合。この場合は、学生が自分の研究テーマを自由に決めるのには制限があります。)

学生が研究課程に応募する場合、自分がやりたいテーマをあらかじめ決めて、指導してほしい教員にコンタクトをし、その教員のアドバイスをもらうのが一般的です。学生は、あらかじめ教員の研究領域や出版物についてよく調査する必要があります。私も含めて、指導教員は、毎日たくさんの研究課程入学希望者からのメールを受け取ります.。メールを見ると、その志願学生が自分の研究についてきちんと調査をしているか、論文を一つでも読んでいるか、そうでないかはすぐにわかります。そうでない学生にはまず返事はないと思ってください。志願する学生は、なぜその大学なのか、なぜその教員なのかをしっかり考えて下さい。というのも博士課程の場合は4年という期間を研究に費やすわけですし、その間、その教員と一緒に研究を進めていくわけです。決して短くない期間を、博士課程の学生として過ごすわけですから、きちんと調査をして、きちんと準備をして、志願することが賢明だと思います。

さらに言うと、博士過程でどんな研究をして、その後どういう道に進みたいか(大学に勤務する研究者になりたいのか?あるいは組織の研究職を目指すのか?あるいはその他)を明確に持っていたほうが、たとえ博士課程の期間中に研究に行き詰まったり、指導教員を変えることが生じても、目標がブレなくて済むでしょう。

研究課程は、指導教員の研究や補助ではなくて、自分の研究をするところだと心得てください。

4. 出願方法

出願方法は、各大学によって異なりますが、大抵オンラインで履歴書やこれまでの研究経験などをまとめたものを提出することが求められます。またその際にレフェリー(推薦者)のレポートの提出も要求されます。留学生の場合は、英語のスコア(IELTSなど)も求められます。

5. 出願後から入学、研究生活へ

出願が受け付けられて、指導教員が決まれば大学からオファーレターが送られます。それに従って入学手続きを済ませ、研究生活に入ります。たいてい、大学で研究をする机やコンピューターが支給されますし、図書館なども自由に利用できます。また、研究学生のために多くのトレーニング、ワークショップ、セミナー(例えば統計ソフトの使い方の指導など)が用意されていますのでそれをフル活用して、研究に活かしてください。指導教員とも、定期的なミーティングがあるはずです。

6.奨学金について

特に、博士課程では奨学金を受け取っている学生が多いです。奨学金は、様々な種類があり、それぞれ申請方法や条件などが異なりますのでここでは詳しく書きません。アプライしたい奨学金がある場合は注意深く応募要項等を見て応募してください。まず、入学出願前に応募をしておかなければならない奨学金もあります。

7. 結活研究生活、まずは楽しむこと

研究課程では特に講義もないので、あまりたくさんの人と交流する機会はないかもしれません。しかし同じような境遇の研究課程の学生はたくさんいますし、セミナーもたくさんありますのでそれを活用して交流を広げてください。研究生活は時に孤独を感じることもありますが、秘訣はまずは自分が研究を楽しむことです。自分が楽しくないと、ゴールに向かって進めません。悩みがあったら、すぐに指導教員や、学部のサポートスタッフなどに相談すること。また多くの大学で、研究課程学生のグループがあって、そのリーダー的な学生がいますのでそういう学生に相談することもできます。私は今、学部の研究課程のディレクターをしていますが(Acting)、特にコロナ禍のロックダウンで、学生から実に多くの相談を受けます。最も多い相談は、ロックダウンにより現地調査ができなくなった、社会人学生は家庭での家族のコミットメントが増え、研究時間がなかなか作れない、などです。大学は、様々なサポート体制を用意していますので、まずは、適切な人に相談する事をお勧めします。

8. そしてあなたも博士に

博士論文を無事書き終え、試験に合格したら、あとは博士号を授与されるだけです。ここまできたら一生に一度の事ですから、ぜひ家族や友人と祝福してください。そしてここまで頑張った自分に自信をもち、人生の大きな糧にしてください。

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