優しい気持ち

書き留めたくて。

あれは二十歳の頃。夏の暑い朝、私は入社して一年ほど経った会社に向かう横断歩道。私はいつもギリギリで会社に到着することが多い。この日も同じくギリギリになりそうだ。
必死で自転車をこぐ。あつ。。もう少し早く出られれば。何度同じことを考えたことか。
必死で自転車を漕いで横断歩道に差し掛かる。
信号無視してしまいたい気持ちに駆られるが、交通ルールは守りたい。このまま行くとまだ間に合いそうなので、気持ちを落ち着けて信号を待つ。
すると少し前に歩いていた数名の小学校中学年くらいの男の子の集団が私の後ろに来た。
よくみると小学生だけじゃなくて杖をついたおじいちゃんと一緒に。歩き方と杖の使い方ですぐわかったのだけれど、盲目のおじいちゃんだった。
小学生の男の子たちはそのおじいちゃんを囲んで手を引いて一緒に歩いている。1人の男の子が『どこに行くんですか?』おじいちゃんが返す。『〇〇に行きたい。』すると、『一緒に行きましょう。』

時間はすでに8時半を過ぎている。
学校に遅刻してまでこのおじいちゃんを送っていってあげるんだ。

中には『大丈夫ですか?ちゃんと連れていきますからね』と安心させるように声かけをしている子もいた。

なんだか朝のバタバタして自分のことしか考えていないような自分のことを少し恥ずかしく思うのと同時に時は和み、優しく、忙しい瞬間にも関わらずゆっくりと時間が過ぎていく感覚があった。
胸が高鳴りたまらない気持ちになると、
信号が青になった。その子たちと離れて行く。でも小さくなるまで、見られるところまでちゃんと見届けた。

あれから時が経ち私は36歳になった。
忘れていることもたくさんあるけど、
時たまその時のことを思い出す。あの子達ももう大人になっているだろうと考えるとなんだか胸が躍るというか、ワクワクするというかそんな感じになってしまう。
叔母みたいな気分になる。
どうかみんな元気で良い人生を送って頂けていますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?