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東京五輪を観戦して~日本女子走幅跳の現在地~

 7月30日から始まった東京五輪の陸上競技も全競技が終わりました。画面越しに見る超人的なパフォーマンスや数々のドラマに胸が熱くなる毎日でした。一方、女子跳躍からの出場者はゼロ。悔しさや危機感がずっと心の中にあり、この大会を「凄かったね」で終わらせたくありません。

 そこで、私たちに何が足りなかったのか、今後どうしたら良いのかを考えていこうと思います。今回は、世界大会で戦うことを見据えつつ、まずは出場するために、女子走幅跳の現在地を確認したいと思います。

日本選手のデータ

 走幅跳の出場枠は32。参加標準記録を突破して出場した選手は25人、残りの7人がワールドランキングでの出場でした。

参加標準記録は
2008北京五輪(A:6m72、 B:6m62)
2012ロンドン五輪(A:6m75、 B:6m65)
2016リオ五輪(6m70)
2021東京五輪(6m82、残りはランキング)
と年々高くなっています。

 ここ数年の日本ランキングトップ記録は
2019: 6m45 秦 澄美鈴 (シバタ工業)
2020: 6m32 高良 彩花(筑波大学)
2021: 6m65 秦 澄美鈴(シバタ工業)
であったため、参加標準記録突破より、ワールドランキングで出場権獲得を狙う方が現実的でした。

 そして、世界ランキング(1ヶ国3人計算)の32番目が1207p、国内トップ3は以下の通りでした。
37位 1178p 秦 澄美鈴(シバタ工業)
60位 1130p 高良 彩花(筑波大学)
- 1113p 中野 瞳(和食山口)

 私自身は自己最高ポイントではありましたが、1207pには遠く及ばないため、まだまだ力不足です。ランキングは5試合の平均ですが、まずは1試合でも1200pを超えていくことが必要です。

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 国内トップの秦さんは、1178pで37位。屋外初戦で6m65の大幅自己新、その後も国内全勝でコツコツポイントを重ねましたが、出場権獲得まであと5人という位置でした。日本選手権後、自身のウェブサイトで「ターゲットナンバー(出場枠)である32位の選手との差は約30ポイントで、この差が今の自分と世界との差か。と痛感しています。この数字は結構大きいなぁと捉えています。」と振り返っています。

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30ポイントを上げるためには??

 参加標準記録を突破した選手が少なかった場合に、補充的に出場権を得られるワールドランキング制度なので、まずは標準記録を狙うのが前提です。しかし、そこに至らなかった場合、どうしたら出場権を得られるのかを考えてみたいと思います。下の表に、今回ワールドランキングで出場した選手のデータをまとめてみました。

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①記録ポイント
 記録ポイントは下の資料で確認することができます。走幅跳の場合、1cm伸ばすと約2ポイント上がります。そのため、秦さんが出場試合は同じとして、記録だけで5試合平均ポイントを30ポイントを上げる為には、30÷2で平均15cm伸ばす必要があったと考えられます。5試合平均が6m49でしたので、6m65あたりでしょうか。また、26~32位の5試合平均記録(上の表の赤枠)の平均は6m58でした。そして、各選手のシーズンベスト記録を見ると6m70あたり(自己ベストはさらに高い人も)なので、ポイントランキングで出場を目指すとしても、全体的な記録アップは必須であると考えられます。


②順位ポイント
 どのランクの試合で、何位に入ったかで順位ポイントが決まります。OW~Fランクによって大きくポイントが変わり、例えば日本GP兵庫リレーカーニバル(Dカテゴリー)の優勝と、日本選手権(Bカテゴリー)の8位は同じ40ポイントです(下の表の青枠)。秦さんの順位ポイントの平均は71ポイント(上の表の緑枠)に対し、26~32位の選手の平均は102ポイントで、出場試合を見るとB以上の試合が多いです。今年はAランクであったREADY STEADY TOKYOに海外選手が出場しなかったため、秦さんはその大会で140ポイントを獲得できましたが、例年であればもっとポイントが低かったと考えられます。もし、ワールドランキングで狙うのであれば、もっと戦略を立てて、海外遠征も検討した方が良いのではと思います。

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語り合うオープンな場を

 東京五輪開催中、中長距離や競歩種目では、Twitterのスペースやclubhousでアスリートやコーチ、ファンなどが映像をみながら解説したり、補足したり、議論したりしていました。私はそれを聞かせてもらっていたのですが、いろいろヒントがあったり、より競技を楽しみながら見ることができました。こんな語り合うオープンな場が、跳躍種目にも必要だなと感じます。跳躍種目をやっている日に、私がそういう場を作れなかったことができなかったことは、良い機会を逃してしまったと反省しています。人前で話す、というのがあまり得意ではありませんが、これからは少しずつこういうことにも挑戦してみようと思います。跳躍のみなさん、一緒にやりませんか?

 今回はまず私たちの現在地について、私なりに分析してみましたが、全て結果論であり、終わってみなければ分からなかったこともたくさんあります。そして、これは違うんじゃない?ということもあったかもしれません。是非、コメントをいただきたいですし、どんどん議論して思考を深めていきたいです。

 次回は試合の内容から、考えていきたいと思います。

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