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セルフセラピーカード

このカードを初めて手にしたのは、まだ学生の頃だったような気がします。
本屋で気になって買って帰ったものの、解説書を読んでも使いこなせなくて、結局引き出しの奥に入れたまま、すっかり忘れていました。
 
再びカードに触れたのはそれから十何年か後のことです。
家を出て親と絶縁して三年ほど経った頃、私の携帯に突然「父が危篤だ」と親戚から連絡がありました。
勝手に死ねばいいと電話を切ったものの、三年の間に母は認知症になっていて、一人っ子の私が処理せねばならない事が山積みでした。
仕方なく実家のマンションに戻り、色々あって住むことができなくなったマンションを出ていくために荷物の片付けをしていた時、引き出しの奥からこのカードが出てきたのです。

父は奇跡的に息を吹き返したものの寝たきり。母は認知症。このマンションにはもう住めない。
絶望の中で見つけたこのカードに何か答えを求めようと一枚引いてみると「許し」のカードが出ました。
許せるもんなら苦労しねぇんだよ!
私は腹立たしくなりました。
こんなカード要らないと捨てる荷物の方に仕分けしました。

でもやっぱり気になって、私はカードを取り出し、一人住まいの自分の部屋に持ち帰りました。
相変わらず使いこなせそうになかったけれど、本棚に置いておくことにしました。
翌朝、気分転換にカフェに入ると、二つ隣のテーブルに座っていたグループがセルフセラピーカードの勉強会らしきものをしていました。

心臓の鼓動が激しくなりました。
やっぱり何かあるんじゃないか。
こんな偶然あるのだろうか。

空のカップを前にして、私はその勉強会が終わるのをずっと待っていました。
講師の人が御手洗に行くために私の席の前を通りがかった時、私は声を掛けて名刺をもらいました。

その後、その講師のセッションを受けてみると、その時の自分に必要な言葉がカードを通してやってきました。そして講師の父親もまた、脳梗塞で寝たきりになるという経験していたのでした。
涙が止まりませんでした。

家に帰ってセッションを思い返していると、昔から心理学が好きでカウンセラーに憧れていたことや、誰かの相談にのる仕事がしたいと思っていたけど諦めていたことを思い出しました。

今は両親のことで手一杯だけど、落ち着いたら私ももう一度憧れに向かってやってみよう。
そう決めました。

それから父とのわだかまりは少しずつ消えていき、上手く話せない父とボケてる母と私の三人で、噛み合わないけど通じ合う家族の会話が取り戻されました。
そしてそれを見届けるようにして父は亡くなりました。

その後も色々ありましたが、母はグループホームに入ることになり、私も新しい人生を少しずつ歩み始めました。

カードとの再会は、死期の迫った父からの「人生を諦めるな」というメッセージだったのかも知れない。
私はそう感じています。

そしていつか私にも、カードを通して誰かの希望や憧れを繋ぐことができますように。
それが父への供養だと思っています。

#私の学び直し

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