yuki

彼女の一息するところ

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或る犬

こんな夜は、もうこの世にはいない犬のことに思いを馳せる。 その犬は、私のではなかった。 裕福で愛情たっぷりの犬好きに大切に育てられて、それを少しも疑わない振る舞いを彼女もまたしていた。 私は彼女をただの一度、おそるおそる撫でたことのあるだけだった。 そのミニチュア・シュナウザーはそういう芸術かのように長く美しい睫毛を惜しげもなく羽ばたかせ、凛とした瞳で私を見た。部屋の蛍光灯が反射して、そのコントラストが私を迷いもなく射抜いた。 よく手入れされた発色の良いシルバーグレイの見

    • 円盤を電子で売れ

      タイトルそのままなんですが。 DVDってもう古くない? 私は環境上、DVDが見られない状況に今身を置いている。 DVDを再生する機器ならいくつかあるが、そういう問題ではなく、全てをスマホで完結させたいわけだ。 子どもを寝かしつけたあと、一人ベッドの上で色々なコンテンツを楽しみたい。 その一つがDVDである。 そもそも手元に置いておきたいものとそうでないものがある。物を増やしたくないというのもそうだが、どちらかというと『個人の趣味と分かるものを人目につくところに置いておきた

      • 命よりも大切なものが出来てしまった

        そんな日が来るとは思いもしなかった! そりゃ勿論、家族や友人を自分の命と天秤にかけることは出来ないけれど、私とのこれまでの関係値ありきだし、そうしたいという私の意思があるわけで。だから今回みたいに"本能的に"そう思ったということにかなり衝撃を受けている。 まるで始めからそのようにインプットされていたかのように。 これを母性と呼ぶのかどうかはまた別の話として。 実子である。 この世に誕生してからまだ1ヶ月程度の、何も出来ない小さな子である。 彼女を初めて見た時、小さかっ

        • 10年前の憧れを、無事伏線回収した話。

          突然だけれど、みんなはカルティエのCMをご覧になったことはあるだろうか。 そして見たことがなくともカルティエ、と言えば名前くらいは知っている人が多いんじゃないだろうか。 言わずもがな、フランスの有名な宝石ブランドである。 アクセサリーにあまり興味のない私でも知っていて、けれどもデパートへ行ったところで縁のないテナントだとその煌びやかな構えをただ眺め見るだけの存在だった。 それが私の中に唐突に憧れとして爪痕を残し、その後も居座り続けたのは、あれは私が中学生か、高校生かその

          悪意のない人はタチが悪いという話。

          少し反響があったので。 下記私のツイートです。 「コップに残ってる水を飲もうとしたら マスクするのせかされて 帰ってから飲めばよくない?砂漠じゃないんだからって言われて、どうしてそういう言い方しかできないんだろう…って思っちゃった、まだ前の人がお会計してるからどうせ今お会計しに行っても出来ないってのに」 状況を説明しましょう。 私たちは美味しい牛タン屋さんへ食事をしに来ていました。最後、デザートを食べ終えてあとは嚥下するだけ、の時。 上記通り「マスクして」から始まり、

          悪意のない人はタチが悪いという話。