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「ボドつく」レポート#1

ボードゲームサークル「ひとりじゃ、生きられない。」のゲームデザイナー、高井 九と申します! 2023年6月30日(金)に東京・中野のCafe 5Fで行われた「ボトつく」のレポートをお届けします。

はじめに

「ボドつく」とはなにか。

ボードゲームで商業デザイナーを目指すようになると、企業の担当者だったり、公募だったりと何かと企画書を提出する機会は増えます。とはいえ、採用される企画書って書くのが難しいですよね? 「ボードゲームの企画をつくろう会」=「通称:ボドつく」は同じ悩みを持つ者同士が集まって、各自企画書を持ち寄り、採用される企画書を作るために意見交換する会です。


なぜ? 「ボドつく」をはじめたきっかけ

私、高井九は、近年「ようこそクレーンへ(大創出版)」「無限まちがいさがし(幻冬舎)」など出版社からゲームを発売させていただいた、駆け出しゲームデザイナーです。ゲームを世に出させていただいてから、企画書を提出する機会が増えました。

最近は本の出版社やクリエイティブ系の制作会社など、ゲーム業界以外からボードゲームを作りたいという新規参入企業も増えました。ボードゲーム業界以外のボードゲームを詳しく知らないけれど興味がある企業に向けて企画を提案する際には、モックアップよりもまず先に企画書の提出が求められることがあります。しかし、そういったありがたい機会をいただいても、私の場合、企画書が上手く書けず、時間がかかったり、アイディアがうまく伝えられなかったりと四苦八苦してスムーズに提出できずにいました。とにかく上手くなりたい、なんとかして採用される企画を作りたいと思うようになりました。

私は作家(小説家、脚本家など)の知りあいが多いのですが、作家さんの間では企画書の意見交換をする会がたくさんあると聞きました。ボードゲームではテストプレイ会はよく見かけますが、企画書をつくる目的の会は見かけない気がしたので、作家さんの会を参考にして企画書を作る会ができないかと思ったのが「ボドつく」を作ったきっかけです。
意見交換をして、頑張っている仲間を見てモチベーションをあげて、この場でブラッシュアップした企画が通り、ゲームが発売され、「ゲームが売れる!」「ゲームで食べていく!」を実現することを理想に「ボドつく」を立ち上げます。


なぜ商業作品を出版したことがある人限定なのか。

これはよく聞かれるのですが、ボードゲームデザイナーとして食べていきたい人たちが集う会にしたいからです。商業作品を出した経験がある方どうしであれば、経験値や知識量が共有できる部分もあり、より会話がスムーズになり、会の効率が良くなるかと思いました。

また趣味でボードゲームを作られている方と、すでにゲームデザイナーとして商業向けに作っている方では、かけられる時間や取り組むマインドも全く同じとは思えません。その点も含めて、似たような思考の人とはじめるために、まずは商業出版をしたことがある人に限定させていただきました。
ハードルも高いですし、商業作品を出版していなくてもやる気や実力がある方がいらっしゃるのはもちろん理解しています。なので、今後の状況によって変わるかもしれません。

また、「ボドつく」は、現在、雅ゲームズの代表である深瀬さんが主催となっているボードゲーム相談会のワンコーナーとしてとり行っております。先日、深瀬さんがTwitterにて商業出版経験者の人数を把握するアンケートを行ってくださいました。

もちろん深瀬さんのフォロワーが中心に回答されていると思うので偏りはあると思いますが、出版経験者は25%と想像以上に多い数字が出たこともあり、現状は商業作品に関わった方限定で執り行いたいと思います。


▼(参考)第1回の募集要項。


▼(参考)ボードゲーム相談会の詳細はこちら。


当日の流れ

第1回「ボドつく」会場は、おいしいオムライスも食べられるボードゲームカフェ『kurumari』さんと、同じ建物の5階に新しくできたカフェスペース『Cafe 5F』で開催しました。主催の私は早めに到着したので、『kurumari』さんのオムライスで腹ごしらえしました。

「チキンカレーオムライス」美味しかった~


前半「ボトつく」の活動内容について説明

開始時間の19時になったので『Cafe5F』に移動します! ようやくここからが「ボドつく」本番です! はじめに前述した「なぜ、ボドつくをはじめようと思ったのか?」ということを中心に、ボドつくとはなにかについて説明しました。説明自体は前段と同じなので割愛します。

説明会の中で、毎回企画書を持ってくるのが大変! という意見がでました。そのような意見も踏まえて、「ボドつく」初期は「ボドつく」向けに作った企画ではなく、まだ商業化されていない自分の過去作を紹介するための企画書をつくる案が良いのではないかという話になりました。ただし、企画書に特化したいのでモックのみがあるような過去作をテストプレイのように持って来ることはナシにしようかと思います。また、今後、数回は様子見したい方もいらっしゃると思いますので、見学OKで進めて行きたいと思います。


後半 企画書の読み合いと意見交換

1人1企画最大30分を目安に意見交換を進めました。
・企画書の読み込み...10分
・フィードバック...20分

補足)今回は各自が自分の企画書を人数分印刷して用意しました。秘密保持のため、読み込みフィードバックしたあとの企画書は持ち主に戻す方法にしました。人数が多くなると印刷も一苦労なので、事前に送るなどは考えていきたいと思います。


意見交換で話題になったトピック

2017年と2023年のボードゲーム業界の状況

参加者の中に2017年に作成した企画書を持ってきてくれた方がいらっしゃいました。内容には触れませんが、2017年と2023年では、コロナ禍を経たこともあり、だいぶ状況が変わっていることが話題になりました。『はぁって言うゲーム』『ito』など数え切れないぐらいのヒット作が出ていますし、有名漫画雑誌の付録などでもボードゲームが遊ばれており、より身近になったこと、ゲームマーケットの来場者数が明らかに増えたことなどもあり、当時と環境は全く違うことが話題になりました!(業界をリードしてくれている方々に感謝!)

2017年と比べると現在はボードゲームの認知度が高まったことは間違いありません! ただし、昔よりも環境には恵まれていますが、他のエンタメもどんどん面白くなってきているので、今後も余暇をボードゲームに使ってもらえるかはわかりません。そのためにも、ボードゲームの新規参入を考えている企業に向けては、企画として持って行くゲームのおもしろさはもちろんですが、それ以外にもボードゲーム全体の「魅力や市場規模」「(良い意味で)儲かる」ことを簡潔に企画書で伝えることが大切であるという話になりました。

そもそもボードゲームの企画書を持って行く場所は?

ボードゲームの企画書を持って行く場所は①ボードゲーム新規参入企業、②公募、③ゲーム系の会社の3種類が多いのではという話になりました。
ただし、企画書に限れば、前段から話している本の出版社やクリエイティブ系の制作会社など、ゲーム業界以外からボードゲームを作りたいという新規参入企業が一番多いのではないかと思います。というのも、ゲームをすでに作っていく会社なら、現状ではモックアップで十分というところの方が多いのではという気がしているからです。

新規参入企業にとって、ゲーム性ももちろん大切ですが、それ以上に、売れるか売れないかを重視しているかと思います。それは、売れないかもしれないけれどゲーム性の高いボードゲームを製品化して販売するのは、新規参入企業の方々にはなかなかハードルが高いからです。

モックアップのみを持って行くことはゲーム性の高さを伝えることにはつながりますが、このボードゲームがどう儲かるかのイメージにはつながりにくいと感じています。(もちろん、すでにゲームを作っている会社はモックアップから、このボードゲームが売れるか売れない、どうやって売るか、ターゲットは誰かなどもわかる編集者の方は多いと思います)その点を踏まえて、売れるか売れないかの判断の指標の一つとして企画書は新規参入企業の方々に向けては必要だと感じています。


企画書ではなく、モックアップを直接出版社に持ち込みした方が良い?

そのほかにも、企画書の読み手が忙しく、ルールを読んで遊ぶ余裕はないけれど、企画書だけなら見る時間が残っている。といった状況で、企画書の方がモックアップを渡すよりも可能性を残せるのではという話も出ました。
個人的には、ボードゲームの強みとして、モックアップ(テストキット)を使って、ゲームをプレイした方が伝わると感じている方は多いと思います。ただエンタメのコンテンツがこれでもかと言うほど増えている昨今、これから先も、お忙しい編集者の方にボードゲームをポンと渡して、ご検討お願いします。というだけでは、今までのようにゲームを出版していただけるか正直不安です。

何十万部売った実績とか、強いコネがあれば別ですが、商業作品を1、2作品出し、数千、数万個売れたデザイナーでは、ますます厳しい時代になる予感がします。

またモックアップを渡すということは、インストをして打ち合わせをする時間を作ってもらうということも前提になる場合が多いと思いますが、駆け出しゲームデザイナーの場合は、その時間を作ってもらうための前段階としても、企画書はあった方が良いのではないかと思いました。


企画書ではなく、モックアップを直接出版社に持ち込みした方が良い?

サンプル数の少ないですが、私の周りにはゲームマーケットの前後や会期中に出版社に売り込みしている方もいらっしゃいます。ただ、現状、東京・大阪含めての年3回のチャンスでは心許ないというのと、ゲムマ前後の忙しい期間でモックアップを渡してプレイしてもらうのは駆け出しデザイナーにはハードルが高いので、やはりメールで企画書を送ることも大事になるのではと思います。


ゲーマーは企画書に何が必要かわからなくなっている?

ボードゲームをあまり知らない方へ企画書を提出するときは、まず、ボードゲームの基本情報を説明した方が親切ではないかという意見が出ました。
ボードゲームの基本情報として伝えるべき項目は、業界の規模や流通、ボードゲームを1つ作成するのにどれくらいのコストがかかるかを伝えておくとイメージがしやすくなるかと思います。

ボードゲームでは当たり前の事でも、ボードゲームを知らない方には刺さる内容があるのではないかという話も出ました。例えば16枚のカードでゲームができることや、協力ゲームというジャンルがあること、そもそも勝ち負けがなくみんなで協力してエンディングを感じるためだけのゲームがあることなどは、ボードゲームをしたことない人にはわからない情報かもしれません。

本当はもっとボードゲームそのものに魅力を抱えてくれるようなネタを持っているのに、いつもゲーマー同士でゲームを遊びすぎているため、その魅力的なネタがなんなのかわからなくなっている人も多いのではという話になりました。

「ボドつく」では、ゲーマーでは当たり前になっているけれど、実は知られていないネタを企画書に落とし込むことについても、みんなで相談して考えていければと思っております。


最適な項目(スライド)の順序にする。

上記に関係しますが、ボードゲーム初心者、上級者、興味があるだけでほとんどプレイしたことない方など、いろいろな読み手がいるので、読み手によっては、もっと早く知りたかった情報が後ろの項目にあるかもしれません。最後まで企画書を読んでくれる保証は無いので、項目の順序は重要だといえそうです。


「目次」って何ページから必要?

最適な項目の順序に関係しますが、企画書が10ページあるならば目次を付けた方がいいのではという話になりました。企画書を読む人がどれぐらいボードゲームの造詣があるかによって、目次があった方が、知りたい項目から読めるので親切です。

読み手にとっては、内容ではなくゲームデザイナーの過去の実績が最も知りたい項目であることもありますから、誰がどこから読みたいかなどは想像は難しいので、だったら目次があれば良いのではないかという意見が出ました。

特にマーダー・ミステリーなど、イラストよりも文字量が多くなりがちな「読ませる」企画書を持って行く場合は、目次は便利だという話になりました。マーダー・ミステリーの場合は結論から読みたい、登場人物から読みたい、そもそもマーダー・ミステリーって何という概要から読みたいというのも分かれるのではという話も出ました。

当日はこれ以外にも個人が持ってきた企画書に関する、もっと細かい話をしております。第1回は正直、参加者は少なかったのですが濃い内容のものとなったと思います。


「ボドつく」のこれから

ボードゲームで食べていけるようになるまで、続けていきたいですね。
各個人で1年に何件企画書を提出できるかなど目標をたて、目標達成に向けて頑張って進んでいきたいです。ボドつくでは企画書の質を上げるのも大事ですが、量も同じぐらい大切にしていきたいと思います。というのも、1年に1つの企画書では恐らく生活できないですし、年間に数作は出していける準備としての企画書が必要だと感じています。

また今後は、例えば「1年間に10本企画書を提出する」など、目標をたてて「ボドつく」のメンバーでモチベーションを維持できれば良い企画書が生まれるのではと考えています。

そのほか、意外とこれまで企画書を作らずモックアップだけで、商業作品を出してきたという人も多いのではというのも感じており、みんなで一斉に企画書を作るようなワークショップ的なことも考えています。

あとは、全員で同じ公募に企画書を提出する、共通目標をたてて頑張るのも良いかと思いますので、ちょうど良い公募があれば試したいですね。「ボドつく」でブラッシュアップした企画が大賞を取ったら嬉しいです。


次回は7/28(金)19:00-22:00で会場は同じCafe 5Fでボードゲーム相談会と同時開催です。

情熱を企画に注ぎ込み、ボードゲームで生きていきませんか?

レポートを読んで「ボドつく」に参加したくなったら、ぜひご参加ください! お待ちしております~。第2回のリンクはこちら。

また需要があれば「ボドつく」オンライン説明会も開催したいと思っておりますので、ご意見のほどお待ちしております!


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