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【読書感想文】日本人はどこへ向かっているのか/山崎正和(律儀さ)

子供の高校の教科書に載っていた山崎正和さんの文章が面白かったので、2012~15年に雑誌に掲載された論評集を読んでみました。

その中で日本人観として面白い事が書いてありました。
第二次世界大戦では自殺的な戦闘に従事した日本国民が、勅命とはいえ敗戦を1日で受け入れ、その後テロも反乱も起こさなかったのは日本人の「律儀さ」にある、と言っています。

律儀さとは一面では他人に対する美徳であって(中略)世間のきまりには従うという信条にも通じ、悪くすると盲目の服従に見える弊害も引き起こす。戦争に召集された多くの庶民は死地に突進したが、それは興奮の余りというより、世間の約束事を守る意識からではなかっただろうか。

なるほど特攻隊とか今から見ると不思議だなぁ、と思っていたのですが、こういう事なら行く理由が少しわかる気がします。

そして戦後復興を支えたのは律儀の他の一面

律儀な人間は、整理、整頓、清潔、時間厳守を尊び、とりわけ正直さを信条とするが、これらはそうでないと気持ちが悪いから守る美徳である。他人に対する対面から生じる規律ではなく、人が自己の内面に対して誓う誓約だと言える。

しかしこの律義さには欠点もある。

第一に律義者は射幸心に乏しく、投機的な冒険に消極的であること、第二には当面の身辺の問題に集中しすぎて、世界規模の政治について視野狭窄になりがちだという点である。

この欠点が今の日本衰退の原因と言われると、正にその通り!という感じです。

ところで欠点は未だに持ち続けている気がしますが、律儀の美点は私は持っているのだろうか?とふと疑問に思ってしまいました。

自分に対する誓約。
自分が気持ち悪いから守る美徳。

整理、整頓、清潔、時間厳守、正直。
これが日本人の基本装備であったとするならば、今の私は明らかに装備不足。

欠点と美点は表裏一体のはずなのに、いつのまにか欠点だけ残して美点をどこかに置いてきてしまった。

少なくともこの欠点を保有するならば美点もちゃんと装備しなければな、と思ったのでした。

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