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ファミレスタバコ

せんむ、つちや、ごっちの三人が学生時代、ファミレスで意味も無くダベっていた時のお話。

「喫煙席で」

深夜だった。あれは飲み会の帰りだったろうか。スタジオ練習の帰りだったかもしれない。彼らは二十四時間営業のファミレスに入り、ドリンクバーだけを注文してダラダラと意味のない時間を過ごしていた。

「注文とりに来た店員ハナクソほじってたぞ」「仕事ナメてんのか」大学生がイキっている。スパスパと覚えたてのタバコを吸いながらヘラヘラしていた。するとつちやがトイレに行く、と言って席を外した。

つちやのいる席にはセブンスターが置いてあった。まだ開けたばかりで本数も残っている。正面の席にいたごっちが当時吸っていたのはロングピース。せんむが「どっちもフィルター白いんだな」などとさほど興味無さそうに言う。ごっちは何か思いついたようにニヤリと口角を上げ、ピースを一本、つちやのセブンスターのボックスに入れてやった。せんむも察したようで、一瞬微笑を浮かべたがすぐに表情を無にした。

つちやが戻ってきた。ごっちはすかさず、「セブンスターって香りがよくておいしいよな」と分かりやすくカマをかける。「そうなんだよね」とつちやは満足げにタバコを一本を取り出し、鼻にあてて香りを楽しむ素振り。狙い通りだった。つちやが鼻にあてていたのはセブンスターではなく先ほど仕込んでおいたロングピース。つちやの隣に座っているせんむはすでに口を押えて吹き出すのをこらえている。「バニラみたいな甘い香りがいいよな」ごっちは追い打ちをかける。「オレやっぱセブンスター好きだわ」つちやはそう言ってロングピースに火をつけおいしそうに煙をくゆらす。

「はははははwwww!!」耐え切れずせんむは吹き出す。「お前それセッターじゃねえよw」「あ?なんで?」つちやは訝しげに燃えるタバコを見る。「なんでピースなんだよww」狼狽しているようだったが、彼自身もおかしそうだった。「タバコの味なんか分かるかよww」深夜のファミレスは大いに盛り上がっていた。

明日は一限が必修だとか、もう欠席できない授業があるとか、単位は捨てただとか・・・そんなことを互いに言い合いながら夜は更けていく。楽しい楽しい学生生活を謳歌している彼らであったとさ。


FIN



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