『イシナガキクエを探しています』 用語集

【人物】


米原実次(よねはら さねつぐ)
生涯に渡り《イシナガキクエ》という女性を探し続けた老人。1940年、林業を営む米原家の次男として生まれるが、妻子を含む家族を全員病気や事故で亡くしており、最終的には独居状態だった。曰く「家族のような存在」であるイシナガキクエに一目会うべく、尋ね人のチラシを自作して配布していたが、近隣住人からは奇異の眼差しを向けられていた。
テレビ東京の密着取材を受けていた最中の2024年2月、焼身自殺。享年84歳。死の直前、キクエの存在を疑い始めた番組スタッフに《イシナガキクエの写真》を託している。

イシナガキクエ
1947年8月10日生まれの女性。55年前の秋頃に失踪(当時22歳)、警察にも失踪届けが出されたが現在に至るまで消息が掴めていない。漢字表記は不明。面長で肩まで伸ばした髪、中肉中背で小柄な身長の他、会話が出来ない(米原実次曰く「おとなしい」)という特徴がある。
『イシナガキクエを探しています』放送後、全国から8000件に及ぶ目撃情報が寄せられるが、ある視聴者から送られてきた過去のテレビ番組の録画VTRから、1987年の時点ですでに死亡していたという事実が判明する。

稲垣義一(いながき よしかず)
1987年の生放送番組に出演した米原実次が、本番中に掲示した住所に現在住んでいる中年男性。霊能力者の稲垣乙(故人)を母に持つが、家業は継いでおらず母の仕事内容すら漠然としか知らなかった。生前の乙が建てた邸宅に母子で暮らしていたが、現在は独り住まい。過去に配偶者や子供がいたのか、そして現在の職業などは不明。また、米原実次との面識は無い。

稲垣乙(いながき おと)
故人。全国に顧客を抱える優秀な霊能力者で、占いや祓(はらえ)を生業にしていた。米原実次からは生前「先生」と呼ばれており、《処置》と呼ばれる何かしらの儀式に共に参加している様子が遺品のフィルムに記録されている。

安東弘樹(あんどう ひろき)
番組進行。フリーアナウンサー(元・TBSテレビ)。愛称はアンディ。

神崎一郎(かんざき いちろう)
コメンテーター。元・警視庁調査一課。失踪事件を担当した部署にも所属しており、国外のケースにも詳しい。

サーヤ
コメンテーター。お笑いコンビ《ラランド》のメンバー。上智大学外国語学部出身。

今野 
番組スタッフ。非常に不躾で図々しく、同じ皿でサラダバーを何度もおかわりする。最近はPOV脱毛に興味がある。

キラフ
心霊系Youtuber。心霊スポットや廃墟などに単独潜入し、探索する動画をアップロードしている。
24年2月9日夜、「人影が出入りする」「大きな呻き声が聞こえる」という証言のある《山奥の廃墟》に侵入した際、《イシナガキクエの写真》に酷似した物を含む不可解な写真を複数枚発見、その後に遠方で何かを燃やす炎のような光を目撃する。それらの映像は番組に提供された。

上田怜歩那(うえだ れおな)
池の近くに住む中学1年生。生物研究会の課外実習で池を訪れた際、偶然《古びたビデオカメラ》を発見し回収、映像を番組に提供する。可愛い。

匿名の視聴者
番組に《87年のVHS》を提供した匿名の視聴者。詳細不明。

霊媒の視聴者
霊能力者を自称する匿名の視聴者。イシナガキクエの霊視を試みた結果「閉鎖的で負のエネルギーに満ちた施設に隔離され、すでに死んでいる可能性がある」と電話で証言する。

遺品の映像の男たち
《遺品の8mm(VHS)》に、米原実次や稲垣乙と一緒に映っていた複数名の男たち(推定4名)。死体のような物を布で巻き、山道を担いで運び、それを山林や池に埋葬する姿が記録されている。何者かは不明だが、全員が土木作業着を着用している。

米原邸の人影
米原実次の死から数日後の深夜、無人の米原邸に侵入していた複数の人物(推定人数は不明だが、少なくとも4〜5人)。目撃した近隣の男性によって、その姿を遠方から隠し撮りされる。暗闇の中で懐中電灯を灯し、何かを探すように廊下を行ったり来たりしているが、目的は不明。撮影者曰く「女の声も聞こえた」との事だが、実際に侵入者の中に女性がいたのかは不明である。

池の男たち
《古びたビデオカメラ》のテープに記録されていた、推定2名の男たち。潜水具を装備して《池》に潜り、水底に沈む【17】番目の代理人を捜索、撮影した。その目的と所属、撮影後の行方などは一切不明。

■■■■(伏字)
《乙に宛てた手紙》の中に登場する存在。番組の編集で表記と音声が共に伏せられているため、個人か集団かすら判断できない。稲垣乙と同様に何かしらの霊能力を持っていることだけが推測できる。


【場所】


米原邸
米原実次の自宅。田舎の山村によく見られるような、平均的な日本家屋。仏壇には病気や事故で亡くなった家族の遺影が並んでおり、実次は毎日手を合わせている。

稲垣邸
稲垣乙が生前住んでいた邸宅。豪邸とまでは行かなくともそこそこ広大な家屋で、生前の羽振りの良さを伺わせる。しかし乙が亡くなり息子の義一が独りで暮らすようになってからは、手広なせいか屋内外がやや荒れているように見える。


米原邸から約15㎞離れた山中にある池。面積や水深は不明。水はやや白濁している。
1975年に米原実次と稲垣乙らが【17】番目の代理人を沈めた場所であり、その後に詳細不明の男たちが潜水、捜索していた場所でもある。今年の春頃に地元の中学生・池田怜歩那が《古びたビデオカメラ》を拾った。

山奥の廃墟(旧・米原別邸)
米原邸から約3㎞離れた山奥にある廃墟。約15年前から空き家になっており、現在では「人影が出入りする」「呻き声が聴こえる」などの心霊現象が噂されてる。邸内はがらんとしているが幾つかの物品が残されており、書斎と思しき部屋にはオカルティズムに関する古書が何冊か放置されていた。心霊系Youtuberのキラフが潜入した際、抽斗の中から女性と思しき人物を映した《不気味な写真》を計40枚発見する(後に消失)。
その後の調査で、米原実次の名義で登記されていた事が判明する。

廃墟裏の小屋
米原実次の死後、山奥の廃墟を調査したスタッフが発見した古びた小屋。廃墟の裏手に隠れるように建っており、傍には祠のような物もある。扉と窓には内側から護符が何枚も貼られており、日焼けした畳の上には割れた骨壺が転がっていた。何の目的で使用されていた場所かは不明。


【用語】 


『イシナガキクエを探しています』
米原実次の遺志を継ぐ形で《イシナガキクエ》を捜すことを目的とした『特別公開捜索番組』。深夜でありながら生番組として放送され、電話オペレーターを十数人用意した上でリアルタイムで視聴者からの目撃情報を広く募り、結果約8000件の情報が全国から寄せられた。
しかし第2回放送直後、視聴者から提供されたある映像の内容から、イシナガキクエが37年前の時点ですでに死亡していたことが判明。これ以上の捜索は不可能、情報収集は無意味と判断したスタッフは第3回(地上波での放送としては最終回)の内容を変更。オペレーターとコメンテーターが居なくなったスタジオで、司会の安東が独り淡々と進展を報告していく異様な展開に。さらにこれまでの経緯と追加情報を纏めた第4回は《TVer》での配信のみという放送形態になった。


『THE ワイドSHOW』
1987年前後に放送されていた地方ローカルの生放送番組。素人相手に平然と下ネタで絡む中年タレント風の男性司会者と、それを窘めるアイドル崩れ風の肥えた女性アシスタントが昭和を感じさせる。視聴者の思い出の人を探すコーナーに当時47歳の米原実次が出演、イシナガキクエの捜索を依頼したが発見には至らなかった。しかしその直後、米原実次が取った行動にスタジオが凍り付くことになる。

処理
『THE ワイドSHOW』に出演した米原実次の口から出た謎の言葉。実次は生放送中、番組に捜索させたイシナガキクエが既に死んでいることを仄めかした上で「(何かを)35体《処理》してきた」と発言。その後、(すでに居ないはずの)イシナガキクエを目撃した際の連絡先として稲垣乙の住所を観客やカメラに向かって掲げるという、常軌を逸した行動を取った。
35という数字は、山奥の廃墟で発見された《不気味な写真》の裏に記された番号と一致している。

処置
上記の《処理》が完了するまでの一連の行動を指すと思われる。
《遺品の8mm/VHS》には、布で巻かれた人型に呪文を書き、番号を振られた遺影(を模したような額縁入りの写真。《不気味な写真》を引き伸ばした顔写真が使われており、同様に番号が記されている)を胸元に固定したオブジェを製造、運搬、埋葬する様が記録されている。その映像内に米原実次と稲垣乙も写り込んでいることから、これが《処置》と呼ばれる行為ではないかと推測できる。

代理人
《処置》に必要とされるアイテム。《遺品の8mm/VHS》内で意図的に映されていた、布で巻かれた人型、あるいはその中身(少なくとも、その内一つは若い女性の死体に見える)を指すと思われる。


【アイテム】


尋ね人のチラシ
米原実次が十数年に渡って、近隣に配布している手書きのチラシ。イシナガキクエに関する基本的な情報と、連絡先である米原邸の電話番号が記されている。しかし、彼女の容姿を伝えるビジュアル(似顔絵、写真)は添付されていない。

米原家のアルバム
米原邸にある古びたアルバム。実次が子供の頃からの写真が納められている。
最初の頁の真ん中に、写真1枚分の不自然な空白がある。

イシナガキクエの写真
米原実次がスタッフに見せた、イシナガキクエを写した唯一の写真。裏面には何も記されていない。その後、番組がAIで補正を施し生前の顔を再現した。

不気味な写真【01~35】
キラフが山奥の廃墟で発見した40枚の写真の内、裏面に番号が記されている35枚。様々な風景の中に立つ、イシナガキクエに酷似した女性が朧気に映っている。
特に【11】は《イシナガキクエの写真》と酷似している。

不気味な写真【0A~0E】
キラフが山奥の廃墟で発見した40枚の写真の内、裏面に番号が記されていない5枚。
目隠しをして椅子に座る女性と、彼女の口元から吐き出される靄のような物を連続で写している。

古びたビデオカメラ
上田玲歩那が池の傍で拾った年代物のビデオカメラ。内部に収まっていたビデオテープには、何かの目的で池の中に潜る男たちの映像が記録されていた。

87年のVHS
匿名の視聴者から番組に提供されたVHSテープ。1987年に放送された地方ローカルの生放送番組『THE ワイドSHOW』が録画されている。
人探しを趣旨としたコーナーに、イシナガキクエを探す米原実次が出演している光景が収められていた。

留守電のテープ①~②
稲垣邸を取材した際、稲垣義一が発見した大量の留守番電話のテープ。稲垣乙は生前、メモは紙に記さず留守電のテープに吹き込んで残していた。録音時期は1990年代だが、詳細は不明。
テープ①には橋爪(?)を名乗る男から「《川》に何者かが侵入し、お祓いが必要になった」という旨の、テープ②には米原実次から「(何かを)新たに1体発見し、それの処置を頼みたい」という旨のメッセージが、それぞれ録音されている。

遺品の8mm①~③
遺品のVHS①~③

稲垣義一が番組の取材後、稲垣乙の遺品の中から発見した8mmフィルムとVHSテープ。
布で巻かれた死体のような物を、数人の男が運搬し山林や池に埋葬する光景が記録されている。
《処置》と《処理》の作業に関連した映像と見られるが、保存した理由も含めて詳細不明。

乙に宛てた手紙
稲垣乙の遺品の中から見つかった、米原実次からの書簡。書かれた時期、全文の内容は不明だが「(何かが)そこにはもう無かった」事を報告した後、追伸という形で「稲垣乙に代わって■■■■(伏字)に処置を代行させるべきか」と伺う旨の文章が記されていた。

焼けた骨壺
《廃墟裏の小屋》に無造作に転がっていた骨壺。焼け焦げたような表面に、護符のような物が貼られている。
スタッフが発見した時には割れており、破片と遺灰が散乱していた。

古いカップルの写真
《焼けた骨壺》の傍に落ちていた、折り畳まれた古い写真。三面鏡越しに自撮りをする、若いカップルが写っている。



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