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【突撃!ナレトーーク】第4回 鈴木健太さん(前半)

ナレーター界を盛り上げるべく始動したメディアプロジェクト『HITOCOE』。

ナレーターのさかし(坂下純美)とあこ(甘利亜矢子)が、ナレーターの皆さんのライフスタイルや人生観、それぞれの働き方を紹介していきたいと思います!

今回は、演劇界が生んだ期待のナレーター・鈴木健太さんです!

鈴木健太さん
1986年生まれ。日本大学大学院芸術学研究科舞台芸術専攻修了。
大学院在学中はスタニスラフスキー・システムやメソッド演技など、海外の演技トレーニング法を研究。その後もマイズナー・テクニックやアレクサンダー・テクニークを中心に研鑽を積む。
東京発の国際演劇祭『フェスティバル/トーキョー』にて、イタリア人演出家ロメオ・カステルッチの公演に出演。小劇場を中心に俳優として活動。
2018年からナレーターとしての活動を開始。自宅での収録環境を整え、国内海外問わず広くナレーションを送り出している。
〇HP…https://www.kentavoce.art/
〇Twitter…@Kenta_SUZUKI

声優を志す…その道のりは紆余曲折!

さかし:さっそくですが、そもそもナレーターのお仕事に就くに至った経緯みたいなのを是非お聞きしたいです。

鈴木:もともとは声優を目指していました。実はいわゆる養成所ジプシーな人間でして、本当にいろんなところに行きました。日本ナレーション演技研究所(以下「日ナレ」)とか。
その頃ラジオ局の文化放送が運営している声優養成所でやっていた特別講座にしょっちゅう顔を出していたんですけど、その後日ナレで残れなかったのでそちらに通うことにしました。
でも、当時声優になりたいとか言っときながら、全然芝居が下手くそだと思っていて。どうやったら芝居うまくなるのかなぁっていう方向に頭が行ったんですね。声の芝居じゃなく、そもそも演技がうまくなるにはどうしたらいいんだと。
そんなとき、アメリカで考案された演技法・メソッド演技のワークショップを日本で開いている方がいるのを知って飛び込んでみたんです。そこで衝撃を受けまして。声優養成所で習っていた演技とはまったく違う。だけどものすごい理論的だし、科学的だし…って、当時は思ったんですよ。

さかし:ん?当時は?

鈴木:当時は(笑)そこから声優の演技じゃなくて、舞台の演技、役者のトレーニングのほうに興味をもちました。
日ナレに通っていたときは日本大学芸術学部の放送学科に在籍していたんですが、メソッド演技に出会った頃には大学院の舞台芸術専攻に進み、演劇の研究もやっていました。
大学院でいわゆるメソッドのトレーニングを自分で積めると思っていたら、大学院では本当に文献の研究でいっぱいで。ひたすら論文読んで…人には見せられない論文を仕上げました(笑)でもちゃんと修士を取りました。

その後は俳優の樋口隆則(ひぐちたかのり)さんが「日本の俳優の底を上げたい」と開いていらっしゃったワークショップで2年間ガッチリ舞台のトレーニングをしました。
まだ全然ナレーションに行きつかないですが、これが正直「僕の核」なんです。

演技のトレーニングだけでなく、能や落語の勉強、殺陣(たて)もやりました。週3回9時~17時ぐらいかな。そして年末に芝居を一本打つんです。1年カリキュラムを2周で2年。
その次に、フリーで舞台の役者として活動できる場を探していた時に、今僕が所属している劇団「まごころ18番勝負」に出会って入団しました。
この劇団の主宰が、本職が音響監督の松本ゆきをなんですが、その伝手もあってうちの劇団に出てくださる客演の方々は声優さんが多いんです。
そういった方たちと練習したり、本番つくったりしていくなかで「やっぱりもう一度声優を目指してみようかな」って思って、プロダクション・エースの養成所に入り直したんですね。
そこでは預かりまでいったんです。でもそこで自分は声優に向いていないということを痛感しました。

さかし:どこらへんで?

鈴木:アテレコ(※映像に声をあてること)で芝居ができなかったんです。事務所は元々外画(※日本外で作られた映画のこと)のお仕事が多いところなんですけど、外画のアテレコとか全然できなかったんですよ。先生である音響監督から指導を受けるんだけど、自分には理解ができない。
現地の俳優さんが使っているメソッドがわかっているから、たぶんこういうふうにつくっていて、こういう声になるだろうというのが想像できるので、自分もそれをイメージしてやってみる。でもそれではダメと言われるのが、当時はなぜかわからなくて。
でもカリキュラムのひとつにあったナレーションの授業では褒められたんです。そのときに「声優は無理だから演技は舞台で、芝居は板の上でやろう。声の仕事をやっていくならナレーションを上達させたい」と思いました。

ナレーションを学び始めたが、挫折!?

鈴木:事務所は入って半年で退所することになりました。それで今後どこでナレーションの勉強をしようかとうちの劇団の主宰に相談したら「ナレーター業界では猪鹿蝶が強いみたいだよ」と。うちの劇団に出演された方も猪鹿蝶に関わっている方がいたようです。猪鹿蝶はキャスティングを行っているところで、学ぶ場所としてはスクールバーズというところがあると知りました。そこで入所試験を受けて受かって…という流れですね。
ようやくナレーターというところに立てた。
で、そこで片岡君と出会った。だから同期入所です。 

片岡:2016年の10月。

鈴木:すごいな、よく覚えてるね(笑)クラスも最初は一緒だった。
ここからバーズで僕は2年間、半年で1期だから全部で4期通ったんですけど、2期目で挫折をしまして…。
1期目はベーシッククラス(現在は「コア」)で、2期目はネクストクラス(現在は「モード」)なんですけど、実際に事務所のブース使って、本番想定でやりましょうというのに、自分はここまで実際のブースでナレーションをするという経験がまったく無かったんですよ。

これまで通った養成所のレッスンでは、いわゆる稽古場でマイクも通さずに原稿を渡されてその場で読んでいたので、タイムを合わせるとかそんな技術的なことは一切やってこなかったわけです。だから、わからないことだらけで講師の方にめちゃくちゃ厳しく指導されたんです…ゴリゴリのバラエティーナレーションの題材で。
それで3期目でもう一度ベーシックに戻りました。その後4期目にアドバンスクラス(現在の「ブランディング」)に進んで卒業しました。
卒業後は猪鹿蝶からちょこちょこ候補出しの連絡とかはいただけてはいたのですが、仕事に繋がったのが一回だけで「どうしよう」と思っていました。
そんなとき、同期の片岡君のツイッターアカウントに、やれアメリカだ、やれインドだ、とか書かれていて「なんだこれ?」って気になって。
それで久しぶりにコンタクトを取って、一緒に飲みに行ったんです。「これはどういうこと?」って聞いたら、ナレーションには海外案件があるということを教えてくれたんですよね。
こういうところがある、海外ではこういうやり方が主流で、こういうサービスがあってっていうのをいろいろ教えてもらって。

さかし:そこから海外案件を始めたんですね。

鈴木さんと片岡さん。この再会から鈴木さんの海外案件への挑戦が始まった…!

海外案件デビューでまさかの出来事!

さかし:最初の海外案件はどんなお仕事だったんですか?

鈴木:もう一発目からやらかしたんです(苦笑)
直接イタリアの方から「こういう案件でやってもらえないか」というコンタクトが来たんです。スケジュールも納期もこれくらいで、ギャラもこれくらいで、「わかりました、やらせてください」と返したのに…次の日に声帯炎をやったんです

さかし:えー!? 

鈴木:急に声が出なくなって…覚えてますよ。それが2019年の12月かな。舞台で声を張り上げたとかそういうことも何もやってないのに声が出ない。
それでも納期は一週間あるから「一日休ませれば大丈夫だろう」と思っていたら、その二日目に高い音がまったく出なくなって。
このまま録るわけにもいかないので、そのとき初めて某有名な耳鼻咽喉科に行きました。
そこで診てもらったら「声帯炎です。治るまでに日にちはかかります」と。これは悔しいけどだめだなぁって思って、泣く泣くお断りのメールを送りました。
ものすごく悔しかったですね。こっちからコンタクトを取ったわけじゃなくて、どっかを経由して僕のことを見つけてくださって、連絡をくださったと思うんです。それなのにしょっぱなからこれかよって、本当にそのときは落ち込みましたね。しかも無茶なギャラじゃなくて、ちゃんとした適度なギャラで。
これが初めての僕の海外案件デビューです…デビューじゃねぇよって(笑)

さかし:デビューしようとしてできなかったんですね…。

鈴木:しようとして、大コケをしたっていう。

さかし:でもこれ自体はとても悔しいけど、ずっと残りますね。もう絶対に同じ失敗は繰り返さないぞっていう。

鈴木:そうそう、本当にそう思いました。

鈴木健太さんは「イスクラ板藍のど飴」を愛用しているんだそうです。売っている場所が限られていますが、気になった方は是非一度お試しください。

マーケットプレイスvonique.tokyoに誘われる

さかし:海外案件の話が出たのでここでvonique.tokyoの話を聞きたいです。

vonique.tokyo
ナレーターの横山美和と片岡晟を中心に立ち上がった、プロのナレーターに特化したマーケットプレイス。2022年2月よりサービスをスタート。
自宅収録で高音質かつスピーディに仕事を受けられる実績豊かなナレーターと、コンテンツ制作側とのマッチングを実現するべく活動中。

片岡:これ、構想し始めたのは相当前なんだよね。

鈴木:最初テスト版みたいなのを上げてたんだよね。で、そのテスト版を公開するとなったときに話をいただいて、こういうのをやるからどうですか?って直接連絡をもらっていたんです。

さかし:たまたまリリースが最近だった? 

片岡:そうです。僕と横山美和さんが「おもしろいことやりたいですね」と話をしていて、それで美和さんが「だったら、ちょうど今自分のホームページを作り替える時期で、タイミングもいいのでやりましょう」ということでホームページを作った。その話が出たのが、もうかれこれ1年以上前かな。

さかし:コロナ禍ではあったってことですよね。

片岡:そうですね。その仮ページに差し込むナレーターさんのプロフィールとかをちょっと貸してもらっていいですか?みたいな話を、ナレーターブランディング会議で募って。

鈴木:2021年の6月に片岡君から連絡をもらいました。「新しくナレーターキャスティングサービスを始めようと思ってるんだけど、そちらいかがでしょう?」っていう文面。

片岡:いろいろとナレーターさんに協力してもらったおかげで仮ページができて、じゃあいよいよ誰を差し込むかっていうところで、その6月に健ちゃんに話をしました。

鈴木:連絡もらったとき本当にビックリして。だって正直、海外案件やってるっていっても、経歴として載せられるような仕事もできてはいたけど、そんな順調なわけではなかった。だから「なんで俺?」って思って。

さかし:片岡さん的に、鈴木さんを誘おうと思ったきっかけは何ですか?

片岡:なにより写真が良かった。

さかし:写真!?

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鈴木さんの演劇に賭ける強い思い、そして海外案件デビュー戦になるはずだった場面での失敗談など、軸や人柄が伝わってくるお話がここまででもたくさん聞けました。

というわけで、前半はここまで!
「写真が良かった」と語る片岡さん。後半ではナレーター界隈では意外と蔑ろにされがちな宣材写真の重要性や、Voicyニュースパーソナリティ採用までのエピソードなどをおうかがいしております。
お楽しみに!

これからも「HITOCOE」ではナレーターに特化した上質な記事を連載予定です。今回の記事を気に入っていただけたら、スキやフォロー、サポート(投げ銭)を頂けると幸いです。いただいたサポートは、今後の活動費として役立たせていただきます。

【ライター】
さかし(坂下純美)
東京在住のナレーターで一児の母。都内スタジオでの収録を主に活動。1年ほど前に宅録を開始。Twitterで情報を集めながら日々勉強中。
〇HP…https://www.sakashitamasami.com/
〇Twitter…@sak1013

あこ(甘利亜矢子)
静岡在住のナレーター。司会業を中心に伊豆半島全域を走り回る日々。只今0歳児育児の為、司会業は育休中。宅録はスタートラインに立ったばかり。
〇note…https://note.com/amariayako
〇Twitter…@amariayako

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