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【突撃!ナレトーーク】第8回 藤村由紀子さん(第3部)

ナレーター界を盛り上げるべく始動したメディアプロジェクト『HITOCOE』。

ナレーターのさかし(坂下純美)とあこ(甘利亜矢子)が、ナレーターの皆さんのライフスタイルや人生観、それぞれの働き方を紹介していきたいと思います!

ナレーション海外市場のパイオニア・藤村由紀子さんへのインタビュー、最終回です!

藤村由紀子さん
元ミヤギテレビアナウンサー、元NHK仙台放送局キャスター。
出産後、局アナを退職してフリーになったのを機に自宅でのナレーション収録をスタート。
海外のナレーター市場のトレンドをいち早く取り入れ、ナレーターとして海外進出したい人をサポートするVOICEOVER JAPANを設立。これまでMicrosoft, IBM, Google, PRADA, Amazon, ヴェルサイユ宮殿、国連環境計画などのナレーションをはじめ、TVCMやニュース番組、情報番組、大手出版社の書籍ナレーションなどを担当。
日本人初となるOne Voice Awards USA 2021 Best International Voiceover Performance賞 ノミネート、米国CastVoices Soundbyte Contestで人気投票1位を獲得。
子育てをしながら、楽しく仕事をするのがモットー。
〇Twitter…@bilingualmc
〇HP…https://www.yukikofujimura.com/

相手の期待以上のものを返す

さかし:由紀子さんがお仕事をする上で「こういったことを大切にしている」というようなことはありますか?

藤村:ナレーターとしては、相手の人が期待する以上のものを返せるように心がけています。
それはナレーションの読みだけでなく、例えば海外との中継収録の時間を決める時なら自分の都合だけじゃなくて、相手の時間とこっちの時間を両方書いて、相手に負担をかけないような提案の仕方をするとか。
あと、すぐ返事を書くとか、ねぎらいの言葉を入れるとか、また一緒に仕事をしたいと思ってくれるような雰囲気作りはするようにしていますね。
You are amazing! とか、You are an angel!とか、You are a super star! とかいろいろな言葉で褒めてくださる方々が海外には結構いるんです。だから私もお仕事をご一緒した時に「あなたのサポートが素晴らしかったから私は楽しくお仕事ができた」とか「あなたのプロフェッショナルさに感動した」とか、お相手の仕事に対する自分の感想というか、ねぎらいみたいな言葉を入れるようにしています。

さかし:その感性は何かすごく日本的という感じもしますね。

藤村:あと、仕事じゃないところだと効率かな。なんでも効率よくしたいです。

さかし:そういえば私、由紀子さんが「教科書を破って必要なとこだけカバンに入れて持っていっていた」という話が忘れられなくて。

藤村:そうそう、自分が高校生のときに教科書を破って持っていってたんです。当時学生カバンは肩にかけるタイプじゃなく、手に持つタイプのものだったんですけど、手にマメができたり固くなるのが嫌だな、軽くしたいな、でも教科書持ってかないと怒られるなって思って…。じゃあ破こう!という流れです。
先日、中学生の娘に提案してみたら却下されました。(笑)でもね、きれいに裂けるんですよ、教科書って。

さかし:知らないです、やったことないから(笑)

藤村:横に開くんじゃなくて縦。前後にぐいっとね。
効率のいいやり方が好き。無駄が嫌いなんです。しかも、教科書破ったところで人に迷惑かけてないしね。先生も私が破っていることをご存知でしたが、お咎めはありませんでした。

さかし:昔から常識にとらわれない考え方をしてたんだなあって。

藤村:自分では普通だなと思ってるんですけどね…。

「大人になりたい子」になってもらうために

さかし:そういえば娘さんといえば、Youth Journalism Internationalというコンテストで授賞したんですよね。おめでとうございます!

藤村:ありがとうございます。海外案件と一緒です。娘のコンテストも日本人がいないところ、スキマ狙いです。
今もアメリカのメディアで子ども英文記者をやってるんですが、日本人初だったんです。みんなが知っているものに応募したら、もっと英語ができる子も、もっと積極的な子、もっとリーダーシップある子もいるから勝つのは難しそうなんですが、誰もいないところだと、自分の持っている強みさえアピールして他に人がいなければ大体決まるだろうなと。
親子揃ってスキマ、人のいないところを狙ってます。

さかし:その経験によって自信がつきますね。成果に繋がると、さらにチャレンジができる。

藤村:まさにその通りなんです。国内の大きいコンテストとかだとなかなか受からないこともあります。それで凹んだり、頑張ったのに努力してもだめだったって落ち込むだけというのは避けたい。だから、競争相手が少なさそうなところにも「行って来~い!」って背中を押します。で、結果が出せれば嬉しいし、次も頑張れる。だから娘は、努力することに対して抵抗感が少ないかもしれません。
あと、例えば子ども記者として娘がオリンピックの取材に行くと、周りは当然大人しかいないんですね。中学生なんて1人しかいないので、娘がお会いした他社の記者さんたちは皆さんとっても優しかったそうなんです。そうすると、何か楽しい、仕事は楽しそうだなっていうイメージが残る。仕事の厳しさは大人になってから知ればいいから、今は「未来って楽しそう!」という気持ちを持ってもらえたらいいなと。
「大人って大変」「ずっと遊んでいたいから大人になりたくない」というよりは、「大人になって仕事をいっぱいしたい」って思ってもらえる環境作りはしたいなと思います。
家だと、徹夜で仕事して、ベッドまで辿り着けずに、床に寝てるお母さんばっかり見てることになっちゃう!(笑)だから、いろいろな世界を見せて「世の中には楽しい未来があるよ」っていうのを見せたいですね。

すべて「ラッキー!」に変えていく

さかし:床で寝てるといえば、さっき1日3時間睡眠という話がありましたが(※第1部参照)、今もずっと起きているイメージがあります…寝てますか?(笑)

藤村:ちょっと体を休めたいからってソファーや布団に横になっちゃうと朝まで起きられない。床だったら体が痛くなるから、少しの時間で起きて仕事の続きができるだろうと思って、よく床に転がってます。固い床でも全然いけます(笑)

VOJの講座をやってるときって質問がすごく多くて…例えばボイスサンプルを作るときはコメントを1週間で400とか500とかやりとりするんです。
皆さんのボイスサンプルを聞いて、波形がこうだからこう編集したほうがいいとか、新たな提案を出したりとか、英文プロフィールをチェックしてってやっていると、一件返信するのにも結構時間がかかるんですよね。
本当に忙しいときは朝から晩まで、カフェに行くときもランチするときも、モニターヘッドフォンとパソコンを持ち歩くっていう感じになっています。
だから、日中はみんなの質問に対応して、自分自身のナレーションの仕事などは夜中に回すことになります。
リピートの仕事で「今は無理」とか言いたくないし、オンラインサロンなどもやっているので、「サロンの課題も出さなきゃ」「そっちの課題にもコメントしておこう」「Facebookグループのグルコン開催日が近づいてきた!」とかずっとバタバタしているので、マスターコースを開講している期間は、結構床率が高いです。

あこ:想像を絶するスーパーウーマンです、由紀子さん!

藤村:もっと要領いい方はサクッとやってるんじゃないかな。単に私の要領が悪いだけだと思います。ちなみに私、会社員時代はトイレで寝てました(笑)
局アナと通訳学校と主婦業を両立させようとしてたので、徹夜とか、1、2時間しか寝てない事が多い。そんなときは原稿書いててもフッと意識失っちゃうんです。
で、これはいけないってトイレに行って、和式トイレの脇でしゃがんで寝る。そうすると、足がしびれて大抵15分ぐらいで起きられるんです。だんだんみんなもわかってきて「15分ぐらいで帰ってくるよ」って。
性格ですね、たぶん。ダラダラするのも大好きですが、それが続くと耐えられない。
4年くらい前に手術したときも、開腹手術だったのに手術後麻酔から醒めて自分の部屋に戻ってきて、30分後にはもう仕事のメールをしていました。個室だったから、翌日には病室のロッカーで収録も(笑)
2週間の入院だったんですけど、スーツケース2つ、パソコン2台持って、音声編集、動画編集、退院後の司会原稿の執筆とかまでしてました。で、夜の見回りのときにも遅くまで起きてるから、「ほどほどにして寝てくださいね」と。
退院するときは主人が仕事だったので1人で退院したんですが、スーツケースをガラガラ2個持って退院の挨拶していたら「1人で帰るんですか?1人で退院するんですか?」って驚かれました。「大丈夫、タクシー乗るんで!」って。
そもそも退院も早めてもらったんです。だってもう元気だったから。いい加減な性格だから「楽しそう!やっちゃえ~!」みたいな感じでよく突っ走ってます(笑)

さかし:楽しさが勝っちゃう!

藤村:そうそう。

あこ:お話を聞いて、由紀子さんの行動力や決断力が本当に桁違いですごいなと思いました。

藤村:決断力じゃないの。頭悪くてあまり考えられないから「とりあえず行っちゃえ!」だけ。たぶん頭がいい人だったら、いやこっちはこうなんじゃないか、あっちはああなんじゃないかってすごくいろいろ考えて比較検討すると思うんですけど。

さかし:やってみた、こうなったからじゃあこうしようって、やったことへの責任を持つ覚悟ができてるんですね。

藤村:主人が医療関係者だとお話しましたが、例えば医療ミスが起これば命にかかわりますよね。でも私の仕事は「失敗しても死にはしない。人は死なない」って。そう思ったら、なんでもいけるなって。仕事がなくなるかもしれないけど練習すればいいだけ。そもそも下手ならオーディションに受からないだろうし、そう思うと大変なことってそんなに起きない。
海外案件だと例えば、万が一支払いがない、騙されたとかが怖くて動けない人もいると思うんですけど、騙されたところでお金が入らないだけ。在庫と借金抱えて、みたいなことは起こらないですよね。しかも、納品するときに、ウォーターマークとか透かし音声みたいなの入れちゃえばそういうことはまず起こらないし、予防すればそんなにひどい目にはあわない業界だと思うんです。
例えば、海外のナレーション会議に出席してその内容が理解できなかったとしても「なんだかわからなくても頑張ってる日本人」っていう印象が残るからラッキー!という感じだし、会議費が高くて得るものがなかったとなっても、だったらその分稼ごうとモチベーションが上がるからラッキー!みたいな。
とりあえず「全部ラッキー!」に変えちゃえばいいかなって思って動いてます。

あこ:すごいポジティブ!

藤村:あまり落ち込んだりしないんですよ、私。やばい!って思うことがあっても「よっしゃ!ネタになる」みたいな。Twitterとかブログのネタになるじゃん!ぐらいに思ってるので。内心、軽く思ってる(笑)

あこ:私ずっと由紀子さんに憧れてて。その由紀子さんの輝きの理由が今日わかった気がします。

今の環境のままで選択肢を増やせるように

片岡:由紀子さんご本人はスキマスキマっておっしゃってますけど、自分が勝てる土俵を見つけるセンサーがものすごく発達していらっしゃる方だなと思っていて。
自分のセンサーにビビビッときたものを的確に見つけて、そこでしっかり成果を出す、結果を出すというところに向かって突っ走っている方だと。
最近も、伝説的海外ナレーターがたくさんいる事務所に2年くらいかけて…ずっとアプローチを続けてらっしゃったんですよね。

藤村:そう、ずっと入りたいと思っていた海外の事務所があって。そこに関係する人が主催するパネルディスカッションにゲストとして出るとか、事務所の代表の方がやるワークショップに出てまず覚えてもらうとか、そこで自分がどんな貢献できるか、いろいろ貢献をして声がかかるようにするとか、腹黒く(笑)策略を。

片岡:ビジネスの本質だと思ってます。パイオニア精神がすごいな。

さかし:さらに今後やってみたいこととかありますか?

藤村:やりたいことはいっぱいありますが、ひとつは日本人向けの、海外案件を楽しむためのイベントをしたいですね。VOJ AWARDっていう賞を創設したいなと思っています。海外案件に特化した賞で、審査員も海外のキャスティングディレクターとか、海外の人がどう見るかというところで選ぶ。ボイスサンプルの賞とか、実際の仕事の賞とか、ホームページの賞とか、SNSの賞とかいろんな部門を設けて、新人でもベテランの人でもエントリーできるような、みんなが楽しめる企画にしたいと思ってて。実はどんな盾を発注するかまで考えてます!

さかし:早い!

藤村:あとは今開講している講座を修了してさらに進みたい人のための講座も作れたらいいなと思っています。今は基本的に入門講座でさわりの部分だけなので、ナレーターとしてのLinkedInの使い方やマーケティングなど、少しでも自分のこれまでの経験と知識がお役に立てるのなら、必要とする方に届けたいと思っています。
やっぱり家の事情とか育児とか介護とかで仕事をしたいのに、家にいなきゃいけない、それでストレスを溜めている方もいると思うので、「家にいてもいろいろチャレンジできるんだよ」「世界と繋がって仕事できるんだよ」って希望を持てるような環境を作りたいです。
私は未だにフルタイムの外の仕事を許されてないんですが、そういった環境をなかなか変えられない人も多いと思うんです。今の環境のままで人生楽しめるように、こんな選択肢があるんだよというのを多くの人に知ってもらえたらいいなと微力ながら思います。

さかし:海外案件に取り組む人はもちろん、人生が楽しめるナレーターが増えてくる予感がします!ありがとうございました!!

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藤村由紀子さんへのインタビュー、いかがだったでしょうか?最後まで読んで、なんだか明日もっと頑張れそうな気がしてきませんか?
すべてのことに対して「どうしたらもっとよくなるだろう?そのために自分は何ができるだろう?」を考え続けているパワフルな方だと思いました。
「由紀子さんってやっぱりすごい人だ…追いつけない…」ではなく、「全部は真似できないけどこれならできるかも!やってみよう!」と思えるものを見つけてもらえたら嬉しいです!

これからも「HITOCOE」ではナレーターに特化した上質な記事を連載予定です。今回の記事を気に入っていただけたら、スキやフォロー、サポート(投げ銭)をいただけると幸いです。
いただいたサポートは、今後の活動費として役立たせていただきます。

さかし(坂下純美)
東京在住のナレーターで一児の母。都内スタジオでの収録を主に活動。1年ほど前に宅録を開始。Twitterで情報を集めながら日々勉強中。
〇HP…https://www.sakashitamasami.com/
〇Twitter…@sak1013

あこ(甘利亜矢子)
静岡在住のナレーター。司会業を中心に伊豆半島全域を走り回る日々。只今育児の為、司会業は育休中。宅録はスタートラインに立ったばかり。
〇note…https://note.com/amariayako
〇Twitter…@amariayako

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