実は紅茶が嫌いだった話


何人かで食事に行った時に、趣味は何かあるのか、という話題になった。その中で1人が、
「おのはるは、紅茶でしょ」
と、すっかり忘れていた趣味を言い当てた。私は忘れていたけれど、その人は確かに覚えていたのである。私の冬の楽しみを。

ちょっと長くなるけれど、私の冬の楽しみについて、密やかな告白をしようと思う。ちょっと長いから、お時間を頂戴するのにどきどきする。読んでくれたら嬉しいし、欲しい方にはありがとうビームをここから送ります。ビィイ。

遡ること2年前から、私は冬に「この冬1番おいしいミルクティーを探せ選手権大会」を1人で開催している。この長くていかにもばかっぽい名前がお気に入りなのだが、大会の内容は至って単純だ。ただ冬の間に1人でミルクティーを飲んで、1番好きなミルクティーを決める。それだけである。何か評価基準があるわけでもなく、それを記録に残すのでもなく、ただただ、ミルクティーを飲み、美味しいなぁと思う。そして、これまで飲んだものより美味しいかしら、と考える。それだけのことを、大学一年の冬と、大学二年の冬に行っていた。
そして、大学二年の冬に、選手権大会を微妙な感じで終えた私は、ミルクティーのことをもっと知ってみよう!と何故か意気込んでいた。詳細は、この記事の前の記事を読むと分かりますが、読まなくて大丈夫です。
ミルクティーは、読んで字のごとく、ミルクとティーからなる飲み物である。ミルクティーについて知るには、それぞれについても知っておくべきだろう。溢れ出る知識欲をもとに、私は大学の図書館に繰り出した。草餅のメインは草ではなく餅だし、メロンパンはメロンではなくてパンである。じゃあおにごっこの本質はごっこなのかというと、走ることだからじゃあなんて名前にしたらいいんだろうとかとか、そういうことはまあいいんだけれどね。とにもかくにも、私はミルクティーならば、まずはティーについて知るべきだと思った。ので、紅茶の本を何冊か借りて読んだ。読んでみると中々面白い。紅茶の原産国やその特徴。美味しい紅茶入れ方などなど、いろんなことが書かれていて、知識欲が満たされていくのを感じたものである。
うん、これは良い。こうやって知識があれば良い選手権大会になるだろうとわくわくした。
知識だけの頭でっかちというのは、どこの世界でも嫌われる。結局は美味しいミルクティーが飲みたいだけなんだから、街に繰り出してミルクとティーとミルクティーを飲むべきだ。
そう思って、私は何軒か紅茶専門店に出かけた。珍しい紅茶、素敵なミルクティー、どれも美味しくて幸せだった。ティーパックも買って家でいれた。
そこまできて、私ははたと気がついた。
私は、もしかしたら、紅茶があまり好きではないかもしれない、と。
紅茶特有の苦味や、フレーバーティーのふんわりした香り。
なんとなくだけれど、私は得意じゃないんじゃないだろうか。
えっ、お前そんなまさかノートまでわざわざ作ったり、数少ない友達を誘って紅茶を飲みに行ってもらったりして、そんな。
でも、緑茶とかほうじ茶の方がほっとする。これも極めだしたらすごいんだろうけど、まあとりあえず私の身の回りは外れなく美味しい。
なんとなく、癖のあるお洒落な紅茶は、私に合ってないんじゃないかしら、おいおいまじかよ。
うん、これは。言わなかったけど、言えなかったけど実は。

私、紅茶好きじゃないな??!??!苦味も酸味も香りも得意ではないし、なんなら猫舌だから美味しく飲むの困難だしね??!?

気づいてしまったら、私の中の知識欲もミルクティーにかける熱意も、いつの間にやらどこへやら。
あっけなかった。

ごめんみんなたち。ちょっとでも気にかけてくれた人たち。

大きなことを言ってしまった手前、紅茶好きじゃなかったかも☆なんて口が裂けても言えない。指がもげてもツイートできない。これは心の奥底に沈めて内緒にしておこうと決めたのである。

しかし今日、のんきにしゃぶしゃぶをしていた最中、ひょいっと掬いだされてしまった。おいおいふざけんなよと怒るような人たちではない。実は、紅茶嫌いだったの、と打ち明けた。おいおいまじかよと笑われた。その笑い声に、ふっと肩の荷が降りるような気持ちがした。大した秘密でもないくせに、なんとなく気負っていたんだなぁ。小心者だもの。秘密なんかもってるべきじゃないんだなぁと痛感した。
そういう訳で、今、このノートを書いている。ここまで読んでくれた人はいるのだろうか。すかさずありがとうビーム!ビィィ。

ここまで書いたところで、前回の記事を読んだ。何書いてたかも正直忘れていた。自分のむかしの書き物というのは恥ずかしいものである。でも、そこには、すでに答えが書いてあった。

「ただ甘いものを飲みたいだけの女に成り下がってた。砂糖と人工甘味料で満たされた気持ちになってた。」

なぁにを、格好つけてるんだか。私は紅茶なんて崇高なものじゃなくって、砂糖と人工甘味料が好きな人間だったんだよ。成り下がるも何もない。なんで気がつかなかったんだ。愚か者め。

そういう訳で、紅茶についてこれから私が語ることはないと思う。これにて選手権大会もおしまいだ。
ちなみに私は最近、コンビニでカップスープを買うのにハマっている。自販機のミルクティーといい、簡単に手に入るあたたかさが好きなんだと気がついた。寂しい女である。

おしまい。

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