見送りは最後まで
20代の頃珍しく母に怒られたことがある。
「ありがとうございました」と言った後
すぐ俯いて洗い物の続きに取り掛かってしまった。
いつも来てくれる男性が帰り際振り向いて
もう一度会釈してくれたという。
あまり仕事に慣れてなかった頃だ。
それ以来
お客さんが背を向けて帰ってもドアが閉まるまで
目で見送るを心がけている。
「ごちそうさまでした」「ありがとう」
と言って背を向けても
ドアを開けながら
外に出て閉めながら
振り返ってもう一度頭を下げてくれる方は結構いる。過ごした良き時間をもう一度振り返るように。
本当に些細なことだけど大切にしていきたい気持ちだ。
昨日夕方来店したのは外国人のご夫婦。
お会計の時奥さんがスマホの画面をこっちへ向けた。
ん?と覗き込んでみると画面には
「 あたたかいおもてなしをありがとうございました。素敵な空間で良い時間を過ごせました。ありがとうございました」
と翻訳された文章があった。
いい時間を過ごして店を後にする時
振り返って誰もいなかったらちょっと寂しいし
いい気分が半減するかもしれない。
だから私は最後まで見送る。
この方もとびきりの笑顔で返してくれた。
これが小さなやり甲斐だ。
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