ヒットのメカニズムがわかるようになる『ヒット商品分析図鑑』 #6 テトリス
累計販売本数1億7000万本でゲームボーイソフト歴代1位の売上記録を誇る「テトリス」。
そんなテトリスの誕生には「旧ソ連で流行ったおもちゃ」が関係していたことを知っていますか?
(画像出典:テトリス・エフェクト)
【1】テトリスについて
1. 商品名・サービス名
テトリス
2. 発明年・発明者
1984年 アレクセイ・パジトノフ(旧ソ連)
3. 概要
落ち物パズルに分類されるコンピュータゲーム。
1980年代末から1990年代初めにかけて世界各国で大流行し、その累計販売本数は1億7000万本を超える。
2019年5月にMinecraftが記録を抜くまでは「世界一売れたゲームソフト」であり、今日でも世界的に愛される有名なゲームソフトである。
【2】SCAMPER解説
<2-1>Adapt(適用する):ブロックパズルのしくみをコンピュータゲームに適用
テトリスが生まれるきっかけとなったのは、旧ソ連で流行っていたブロックパズル「ペントミノ」でした。
12個のブロックを枠の中で組み合わせる「ペントミノ」は、娯楽の少なかった当時のソ連の子供たちの間で流行っており、テトリスの発明者であるアレクセイ・パジトノフもその中の1人でした。
(出典:世界的パズルゲーム「テトリス」の知られざる歴史とは?)
そんな幼少期を過ごしたパジトノフ氏は、17歳になると、モスクワの飛行機研究所でコンピュータエンジニアリングを学びはじめます。
(出典:世界的パズルゲーム「テトリス」の知られざる歴史とは?)
この頃(1960-1970年代)のソ連は、アメリカとの宇宙開発競争が盛んだったこともあり、国全体がコンピュータエンジニアの育成に力を入れていました。
研究所を卒業したパジトノフ氏は、その後もエンジニアとしてキャリアを積み、当時のソ連の中でも最先端の現場で働きはじめました。
そんな優秀なエンジニアであった彼は、仕事が終わるといつも考えていたことがありました。
それは「オリジナルのコンピュータゲームを作る」ことです。
(出典:世界的パズルゲーム「テトリス」の知られざる歴史とは?)
パジトノフ氏は、エンジニア仲間の2人とチームを結成し、ゲーム開発に向けてアイデアを出し合うことにしました。
その時、パジトノフ氏の頭に思い浮かんだのが「幼少期に遊んでいたペントミノ」でした。
そこで3人は、懐かしのブロックパズル「ペントミノ」をコンピュータゲームにAdapt(適用)することにしました。
<2-2>Eliminate(削除する):「ブロックの種類」と「ブロックを構成する正方形の数」を削減
「ペントミノ」をそのままコンピュータゲームで再現するには、扱いづらい点がありました。
「ペントミノ」で使われるブロックは全部で12種類あり、その1つ1つのブロックの塊が5つの正方形から構成されていたのですが、それを再現するのは難しかったのです。
(出典:立体ペントミノ)
そこで、ブロックの種類を12から7まで減らし、さらに、1つのブロックを構成する正方形の数を5から4に減らすことにしました。
(出典:世界的パズルゲーム「テトリス」の知られざる歴史とは?)
そして、彼らは「ペントミノ」を再現したコンピュータゲームを6日間で作り上げ、そのゲームを「遺伝子工学(GENETIC ENGINEERING)」と名付けたのでした。
(出典:世界的パズルゲーム「テトリス」の知られざる歴史とは?)
<2-3>Modify(修正する):ゲームのルールを「上から落下する」「列を揃えると消える」に修正
完成したパズルゲーム「遺伝子工学」には、決定的な欠点がありました。
それは「つまらない」という点です。
7種類のブロックを決められた枠に当てはめるだけという単純なルールだったため、2〜3回遊んだだけで飽きてしまう仕上がりだったのです。
そこで、パジトノフ氏はこの「遺伝子工学」をより面白くするために、以下の要素を加えることにしました。
■遺伝子工学に追加した要素
・ブロックが上から落ちて重なっていく
・横一列に揃うとブロックが消える
(出典:世界的パズルゲーム「テトリス」の知られざる歴史とは?)
このように、ゲームのルールをModify(修正)することで、「遺伝子工学」は気づけば何時間もプレイしてしまうようなゲームへと変貌を遂げたのでした。
そして、パジトノフ氏はこのゲームを、「Tetra(テトラ)」と「Tennis(テニス)」を組み合わせて、「Tetris(テトリス)」と名付けたのでした。
■Tetris(テトリス)の由来
・Tetra(テトラ):ギリシャ語で数字の4の意味。ゲームに登場するブロックは全て「4つ」の正方形で構成されていたため。
・Tennis:テニスはゲームを連想させる楽しいものであり、パジトノフが好きなスポーツであったため。
(出典:世界的パズルゲーム「テトリス」の知られざる歴史とは?)
■テトリスをSCAMPERに当てはめると
Adapt(適用する)
ブロックパズルのしくみをコンピュータゲームに適用
Eliminate(削除する)
「ブロックの種類」と「ブロックを構成する正方形の数」を削減
Modify(修正する)
ゲームのルールを「上から落下する」「列を揃えると消える」に修正
【3】補足
テトリスはその後も、複雑な説明なしにプレイできる単純明快さを武器に、1988年にアーケード版、1989年にはゲームボーイ版が発売されるなど、世界的な大ヒット商品となっていきました。
(出典:テトリス)
(出典:ゲームボーイ版テトリス)
このヒットの背景にも、ユーザーを飽きさせないための、さらなるModify(修正)の工夫がありました。
・ブロックの種類ごとの色分け
・ハイスコアの記録
・プレイ時間に依存してブロックの落下速度アップ
・ブロックが着地してから固定されるまでに若干の遊び時間(0.1-0.5秒)を設定
・ブロックの全消しによるボーナスポイントの発生
など
(出典:世界的パズルゲーム「テトリス」の知られざる歴史とは?)
このように、テトリスが誕生してから大ヒットに至るまでのストーリーには、SCAMPERに当てはまる様々な発想方法が活かされていることがわかりました。
テトリスの歴史にはまだ、この記事では書ききれなかったSCAMPERの要素がたくさん眠っているので、興味がある人はぜひ探してみてください。
【4】おわりに
ヒット商品分析図鑑では、今後も世の中のヒット商品をSCAMPERに当てはめて解説し、ヒットのメカニズムに迫っていきます。
ヒット商品分析ラボは、「ヒット商品を分析することでヒットのメカニズムを探究する」をテーマに様々な勉強会やワークショップを行なっています。
これからも、ヒット商品分析図鑑をはじめ、良質な学びが得られる記事をたくさん投稿していきますので、興味がある人はぜひnoteのフォロー・スキをよろしくお願いします。
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