恐怖の人工知能

人工知能が囲碁の世界王者を破ったというニュースがありました。

チェスや将棋ではすでに名人に勝つような人工知能が存在しますが、はるかにパターンが多くて複雑な囲碁で人工知能が人間の名人に勝利するのは画期的な成果(なんだそうだ)

コンピュータ上で人工的に、人間と同等の(あるいはそれ以上の)知能を実現しようという人工知能(AI)は、SFをはじめ、あらゆる分野でネタになってきました。まあ考えてみたら、アトムだってドラえもんだって人工知能だもんね。

でもこうして「囲碁でもついに人類を超えた」とかいったニュアンスになると、なにやら迫力がありますよね。

人工知能が勝手に発達して人類に挑んでくるっていうのは、SFの世界ではわりと古典的なネタ。

フレドリック・ブラウンの短編に「回答」っていうのがあって、「イエス。いまこそ神は存在する」っていうセリフに戦慄したことがあるんだけど、そうした映画もけっこうあります。

わりと誰でも頭に浮かぶのが、「2001年宇宙の旅」(1968年)に出てくる、宇宙船を仕切る人工知能「HAL」かな。今回のニュースでも引き合いに出されてましたね。「IBM」を一歩ずつ進めたっていうネーミングの妙もだけど、木星旅行中の宇宙船でこいつが反乱を起こすところは、なかなか怖かったですね。全体に観念的で、私のようなドンパチ好きな映画野郎は、その質量に圧倒されつつも、いまひとつ乗り切れない映画「2001年宇宙の旅」でしたが、宇宙飛行士とHALの対決は、けっこうドキドキしながら見たもんです。

「ターミネーター」(1984年)も、この手の話題では必ず出てくる古典的存在。ここでは、直接映画に出てはこないんですが、人類を殲滅すべく未来から刺客を送りこんでくるのが、高度に発達した人工知能「スカイネット」だそうで、以後連綿と続くシリーズ全部の通底にこいつの存在があったわけ。そういえば最新のリブート版、まだ見てないけど、あれもそうなの?

ずっと地味な映画になりますが「地球爆破作戦」(1970年)というのがあって、これは米ソがそれぞれに開発していた高度な軍事コンピューター(まだ冷戦時代の産物です)が、勝手に手を組んで人類に挑んでくるというお話しだったっけ。これなんかは、具体的な「形」のない、プログラムとしての「人工知能」っぷりが怖かったです。

こうした「人間の都合を離れて勝手に仕事を進めてしまうコンピューター」ってのは、やはり恐ろしいといえば恐ろしい人工知能なんですね。一世を風靡したアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」でも、ネルフの基地のシステムを統御する人工知能「マギ」が重要な「登場人物」になるんですが、こいつが敵の浸食をうけて暴走しそうになるエピソードがあって、私はこれがシリーズ中最高の回だと思ったもんです。あ、最初のシリーズの話ね。これは高度に発達してってよりも、「狂った人工知能」テーマですかね。

そういえば、「エイリアン」(1979年)に出てくるアレとかも、もちろん人工知能搭載なわけですが、ああした「形」になってしまうと、もはやロボットとかアンドロイドとかヒューマノイドとかになってしまって、人工知能的迫力とは、なんか違うんですよね。むしろ、最後に勝手にカウントダウンを進める宇宙船(あれも人工知能といえばそうなのか)のほうが、「勝手に仕事を進めてしまう」恐怖感をあおったなぁ。

このほかにもたくさんあって、ネタバレになるので言えない作品とかもありますが、いよいよそうしたことがSFではなく現実になる日が迫ってきてるんでしょうか。

というか、あなたが今この文章を見ている(あるいは私が書いている)コンピューターも、すでに人工知能を有しているわけで、ときどき勝手にガチャガチャとアップデートとかウィルスチェックとかやってくれてるんですが、あれホントに反乱とか企んでるわけじゃないよね?

じつは、私自身はそうした「人工知能の恐怖」に直面したことがあります。

今は昔、もう数十年前のことですが、ゲームセンターにある麻雀ゲームにハマった時期がありました。100円入れると、持ち点がなくなるまでコンピューター相手にサシの麻雀を打てるという、まことにアダルトなゲーム(詳細は略)

ある日、そうしたゲームを楽しもうと、ゲーセンに入り、アーケードマシンの前に座りました。

100円玉を投じ、「スタート」ボタンを押すと、ピコピコという電子音とともに配牌がされ、ゲームスタートです。

さて、何から切ろうかな、と思った瞬間のことです。陽気な電子音声が。

「天和! ゴメンね」

なんと先手のコンピューターが、配牌そのままでアガリになる「天和」!

「天和」は、確率およそ33万分の1という超レアな役。私もずいぶん麻雀はやってますが、このとき以外やったことはもちろん、見たことすらもありません。

当然、役満ですので、私の持ち点はあっけなく消滅してゲームオーバー。何ひとつしないままで、遊戯時間はわずかに数秒間。

オレは何のために100円を投じたんだか……

貴重な100円を人工知能にタダ取りされたという、まことに恐るべき事件でありました

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