500円映画劇場「パニック・スカイ」

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2010年製作の航空機サスペンス映画「パニック・スカイ」です。航空機パニックものなんてお金がかかる超大作だと思いがちですが、ものはやりようで意外と安く作れるらしく、けっこう500円映画にも多いですね。

そしてこの映画、これまで見てきた数々の500円映画のなかでは、まちがいなく面白いほうです

舞台になるのは旅客機ではなく小型プロペラ機で、乗っているのはわずかに5人と、その点では小ぢんまりした映画です。新米女性パイロットが友人たちを乗せて操縦する機が、機体の不具合で超高空まで上昇し、乱雲の中へ突入してしまいます。視界もなく、無線は途切れ、酸素が不足する極限状態。さらに上空には怪物のような生命体が……

機体の小ささと登場人物の少なさで、かえって引き締まったサスペンスとパニックを描くことに成功し、さほどの特撮もCGも必要ないので、500円映画にありがちなボロも出にくいのが功を奏した形です。

500円映画は、テレビ用のTVムービーだったり、最初からDVD発売用の作品だったりと、非劇場用映画が多いのですが、これは劇場公開用に作られた映画。なるほど、だから格が違うのか……などと思ったら、この「パニック・スカイ」、実際には各国の映画祭で公開されただけで、やはり一般の映画館にはかからなかったようですね。

なぜそうなったかというと、その理由はわりと明確。それは映画の最後にあります。

この作品、「広げた大風呂敷をたたみそこねた」典型例になっているのです。詳しくはネタバレになるので言えませんが、要するにこの事故が起きた原因というか、「理由」がちゃんと説明されないまま終わってしまうのです。

ある古典的SF映画のネタを使っているのはいいんですが、見終わっても、ぜんぜん納得いかない。ツジツマがあっていないからです。

そのうえ、ラストもきちんと終わらないのが致命傷。なにこれ、助かったの、助からなかったの? なんでこんなことになったの? え、まさかの夢オチ? 

最後の最後で「なんじゃこりゃ」的な展開となり、そこまでの緊迫感が台無しになってしまっていました。あーあ、もったいない。

8回まで敵をノーヒットに抑えていたのに、最終回にドカンと点を取られて惨敗、みたいな感じ?

途中までがどんなによく出来ていても、ラストをうまくまとめられなくては、見ている側に残るのは欲求不満だけ。おかげで「パニック・スカイ」は500円映画に成り下がったわけですね。

遠足はおうちに帰るまで。映画も、ラストシーンが終わるまでが、映画なのですよ

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