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500円映画劇場「ツイスター2008」

1996年に公開された、スティーブン・スピルバーグ製作、マイクル・クライトン脚本、ヤン・デ・ボン監督の「ツイスター」とは、当然なんの関係もない、2008年のTVムービー。製作年と邦題が一致しているのが特徴(笑・原題は「STORM CELL」)

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とはいえ、「ツイスター」がこの作品にも影響をおよぼしているのは間違いない。それまでは気象関係の災害パニック映画ってそんなにはなくて、あってもほとんどがハリケーンなどの台風系。火山噴火とか大地震とかは別ジャンルだよね。

そんななかで竜巻(トルネード)っていうものを主役に持ち込んだ「ツイスター」は、なかなか目のつけどころがよかったわけだ。

気象パニックの難点は、脅威の形を見せにくい点。どうしてもハリケーンそのものの形は画面では見せにくいからね、デカすぎて。

その点、竜巻ってのは形がハッキリわかり、適度な大きさで、そのうえ神出鬼没なので、映画の悪役としてはたいへん描きやすい。言ってみれば、怪獣映画の怪獣役を竜巻に置き換えればいいのだからね。脚本も演出も、それならお手本がいくらでもある。

もちろん、1990年代になってから竜巻に関する研究が飛躍的に進み(テクノロジーのおかげ)よりリアリティを持たせることができるようになったのも竜巻映画が増えた一因だろう。そしてそこにCGの普及が拍車をかけたのは言うまでもない。

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で、この映画はそこにさらに人間ドラマを上乗せして、映画としてのステージアップをもくろんだもの。よく考えつきがちな手だが、もちろん成功していない

子どものころに竜巻のおかげで両親を亡くした姉と弟の物語がストーリーの中心に据えられる。長じて気象学者となった姉は竜巻に憑りつかれたようになっており、弟とはそのために疎遠になっている。だが姉の一人娘が大学進学のために弟の住むワシントン州の町に行くことになり姉弟再会。そしてそこにタイミングよく、視聴者の予想通りに、巨大竜巻が発生する(以下略)

人間ドラマを上乗せと書いたが、正直いって薄っぺらい。ややネタバレになるので詳しくは書けないが、あまりにも偶然が過ぎる設定があり、また登場人物の造形があまりにもステロタイプなので、途中であっけなく結末が予想できてしまう。

もっと開き直って、まっこうパニックものにすればよかったのに。

というのも、CG班は善戦しているのだ。描かれる竜巻の迫力はなかなかのものだし、破壊される建物なども、欲張らずに小さな建築物を主体としたので、さほどボロは出ていない。日本製のジャケットイラストにある高層建築が吹っ飛ぶような場面は皆無なのだ(いつものこと)

このCG力があったんだから、作り方しだいではもうちょっとなんとかなったんではないか。

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ところで舞台になるのはアメリカ北西部、ワシントン州のシアトル近辺(ランドマークのスペースニードルがちらっと映る) あんなところで巨大竜巻なんか起きるんかいなと思ったが、そこは「異常気象」のひとことであっさりクリア。便利な言葉だよ。

で、ふと気づいたんだが、前回の500円映画劇場で観た「トータル・ディザスターもシアトルが舞台だったんじゃないか。あれは市街の中心地が舞台だったが。

なんだなんだ、シアトルって気象パニックのメッカかなんかなのか?

察するに、カナダ映画がアメリカ向けに映画を製作するには、近くて使いやすい町なんだろう(本作も製作は、500円映画量産のカナダ映画)

この映画も、べつに舞台がシアトルである必然性は何もない。映画の冒頭が展開するオクラホマでもよかったんじゃないかと思うが(オクラホマあたりは実際にトルネードの多い地域で、元祖「ツイスター」の舞台もここ)

映画を作るには、いろいろな大人の都合があるってことが、よくわかりましたね、みなさん(笑)

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なお、日本製のDVDのコピー「アメリカ合衆国、最終章」とか、人類文明の崩壊までを示唆するようなアルバトロス社製の予告編は明らかに誇大で、JAROに怒られそうなレベル。映画の舞台は、シアトル近郊の小さな住宅地だけだからね。ま、これもいつものことだが(笑)

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