テニス靴をはいた荒野のスネーク

カート・ラッセルという俳優さんがいます。

私の好きな映画監督ジョン・カーペンターのいわば盟友で、「ニューヨーク1997」とか「遊星からの物体X」とかに主演していますね。今回は彼にまつわるお話し。

ちょっと前のことですが、原稿に出てきた映画タイトルのチェックをしていて、「テニス靴をはいたコンピューター」という映画に行き当たりました。

おお、懐かしい。

1969年のディズニー映画です。大学生がコンピューターに憑依されて天才的な才能を発揮してしまうというコメディで、私は小学生のころ関西に住んでいたので、神戸の映画館で観ました。両親が連れて行ってくれたんですね。「フラバー」と同時上映だったのは覚えてますが、なんでこの映画に連れて行ってもらったかは覚えてないです。でもすごくおもしろかったのはよく覚えてる。

で、調べ物でその主演俳優の名を見て、びっくり。

「テニス靴をはいたコンピューター」の主演は、カート・ラッセルだったんですね。

もちろん見た当時はカート・ラッセルなんて知らないし、その後、再見する機会もなかったので当然といえば当然。それから10年ほどたって「ニューヨーク1997」とか「遊星からの物体X」を見て、カート・ラッセルの名を覚えてからも、まったく両者が結びつくことはなかったんですね。

そのまま30年余を経て、ああ、あれアイツだったのか、と思わぬ感慨に見舞われたってわけです。

そういわれてみれば、彼が子役出身でディズニー映画に出ていたことなどは知識としては知っていたので、不覚と言えば不覚です。

で、今度はカート・ラッセルのプロフィールを見てみました。

高校卒業後はプロ野球選手としてマイナーリーグでプレーしていた(これは知ってた)とか、映画デビュー作ではエルビス・プレスリーと共演し、奇しくも彼の伝記映画「ザ・シンガー」(1978)でプレスリーその人を演じたとか(その監督がカーペンターだったとか)、いろいろありますが、そのなかに彼の父親もプロ野球選手から俳優に転じて、父子共演もしているというくだりが。そういえば、そんな話も聞いたことがあったな。

で、その父親、ビング・ラッセル(Bing Russell)の出演作を見てみました。ほお「テニス靴をはいたコンピューター」にも出てたんだ。

そのフィルモグラフィの最初の方に「荒野の七人」(1960)が!

えええっ、私の大好きな、あの「荒野の七人」に? どこに出てたんだ?

ご存じのように、黒澤明の「七人の侍」を西部劇に翻案した「荒野の七人」は、舞台の大部分がメキシコなので、アメリカ人っぽい俳優はユル・ブリンナーやスティーヴ・マックィーンら「七人」以外には、ほとんど出ていないはずだが……

ビング・ラッセルの役名は「ロバート」と出てますが、さてロバートって誰だ? さっぱりわからないぞ。

ところが、ネット検索して画像を見つけたら、疑問氷解。

映画の最初の方、国境の町での葬式のシーン。そのきっかけとなる二人組のセールスマンの若い方が、ロバート、すなわちカート・ラッセルの父親のビング・ラッセルだったんですね。

こうして、1960年の「荒野の七人」、1969年の「テニス靴をはいたコンピューター」、1981年の「ニューヨーク1997」と、私の好きな3本の映画がラッセル親子という一本の線でつながりましたとさ。

どこかの名画座で、この3本立てで「ラッセル父子特集」、やってみませんか?(笑)

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