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オレの傍役グラフィティ「カール=オットー・アルベルティ」
名前からわかるように、ドイツ人である。1933年ベルリン生まれ。
金髪、碧眼、長身、色白で、「いかにもドイツ人」な風貌だが、若干顔が肉厚で、目が細く、唇もぶ厚い。なので、残念ながら美男子ではなく悪役っぽく見える。そのせいか、ナチスドイツの軍人役が圧倒的に多い。
ちなみに、名前のクレジットは複数存在し、本欄では「Karl-Otto Alberty」に準じたが、ファーストネームを分割したカール・オットー・アルベルティ(Karl Otto Alberty)や、英語表記のチャールズ・アルバート(Charles Albert)とかチャールズ・アルベルティ(Charles Alberty)、イタリア語表記のカルロ・アルベルティ(Carlo Alberti)などなどがあるようだ。ま、いろいろ事情があってのことなんだろうが、なんかポリシーがないなぁ。
この人がいちばん有名なのは、「大脱走」(1963年)だろう。
脱走したビッグXことバートレット中隊長(リチャード・アッテンボロー)を確保する大手柄のSS将校役。映画も終盤になっての登場だが、強い印象を残している。「ドイツ語がお上手ですな、フランス語も」と慇懃に接し、次の瞬間に銃を抜いて「手を上げろ(Your Hands Up !)」と豹変する、そのテンポが抜群にいい。
このシーンが強烈だが、じつはその後にも登場シーンがちゃんとある。バートレットをゲシュタポ本部に連行してくるシーンはこの逮捕シーンの続きだが、ラスト付近にももう1カ所登場している。
脱走の責任を問われて解任された収容所長(ハンネス・メセマー)を連行しにくる親衛隊将校も、じつはアルベルティくん。
所長に敬礼しようとする部下に「敬礼する必要はない」と非情なセリフを吐くのだが、そのあとの連行されてきた捕虜のヒルツ大尉(スティーブ・マックイーン)と所長のやりとり、名セリフ「ベルリンを見るのはきみが先になりそうだ」のあいだ、ずっと側に立っていたんだね。ここでは大人しく両者のやりとりを聞いているだけ。
それにしても、都合3シーンにしか登場しないのにあれだけの印象を残したんだから、ずいぶんコストパフォーマンスのイイ役だったわけだ。
おまけにこれがアルベルティくんのハリウッド映画へのデビュー作。映画デビューそのものは1961年だというから、ずいぶん早々に海外進出をはたしたわけだ。
そのおかげなのかどうか、その後もコンスタントにハリウッド映画に出演している。それもほとんどが戦争映画ばかり、そしておおむねナチス将校役。
「バルジ大作戦」(1965年)、「パリは燃えているか」(1966年)、「空軍大戦略」(1969年)と、オールスター大作のスペクタクル戦争映画に続々出演。すごい売れっ子……といいたいところだが、遺憾ながらこれらの超大作群では、正直言って目立っていたとは言いがたい。
「バルジ大作戦」では、ドイツ機甲師団の指揮官へスラー大佐(ロバート・ショウ)の副官的存在のディーペル少佐役。歩兵軍団の指揮を執っていて、作戦中に暗躍するドイツ軍の偽MP部隊の指揮官だったりする。
ちなみにこの作戦は実際に行なわれたものに基づいており、その指揮を執ったのは「ヨーロッパで一番危険な男」と異名を取った親衛隊中佐オットー・スコルツェニーである。
というようにけっこう重要そうな役で、しかもほぼ全編にわたって登場しているにもかかわらず、映画の中での存在感は、なんか薄い。印象に残りにくいんだよね。まぁ「大脱走」でのインパクトが強すぎたせいもあるか。
「パリは燃えているか」ではパリ占領軍司令官(ゲルト・フレーベ)のもとにヒムラーの密命を帯びてやってくる親衛隊将校役だが、登場は1シーンのみ。「空軍大戦略」ではドイツ空軍の将軍役と昇進しているが(?)登場シーンはやはり少ないし映画の序盤で姿を消してしまう(画像は「パリは燃えているか」)
名だたる主演級スターが揃う超大作映画では、やはり目立つのはむずかしかったようだ。じつをいうと私もこれらの作品に彼が出ていたことは、まったく印象に残っておらず、今回あらためて見直してようやく発見したしだいだ(このためだけに3本合計500分近くを費やした私の時間を返してくれ)
と、そうした失地を一気に回復してアルベルティ君の存在を広く印象づけたのが「戦略大作戦」(1970年)だ。
これまた登場シーンはラスト近くで、時間的にも長くはないが、この映画を見た人には絶対に忘れられないインパクトを残す役。詳しくはネタバレになるから書けないので、ぜひとも映画本編を見てみてほしい。
ウィキペディアでアルベルティくんの項を見ると「戦争映画以外にもドラマやコメディ、あるいはマカロニ・ウェスタンなど様々な映画に出演」とあるが、そのわりにフィルモグラフィは戦争映画がほとんど。
マカロニ・ウェスタンでは「怒りの荒野」(1967年)がリストアップされているが、さて出てたっけ?
見直してみたが、よくわからん。どうやらジュリアーノ・ジェンマに一瞬で射殺される、ハーモニカを吹く保安官助手らしいが、ほんの数カットだし、ロクに顔も写らないんだもの。この作品ではなぜかハンス・オットー・アルベルティの名でクレジットされているが、これほんとに彼なんだろうか?
本国のドイツではテレビドラマ出演も多いようで、けっこう人気があったりするのかもしれないが、どうもわれわれにはもうひとつその活躍ぶりが伝わってないなぁ。
そんなアルベルティくんだが、1983年の「戦争の嵐」と1988年の「戦争の黙示録」(いずれもTVミニ・シリーズ)を最後に、出演作品が見当たらない。冒頭に書いたように1933年生まれなので、このころまだ50歳代のはず。俳優として引退するのには早すぎる年齢だと思うが、いったいどうしたんだろうか?
ひょっとしたらナチスの金塊でも見つけて、悠々自適で引退しちまったのかな(笑)
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