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タコ映画

私が小学生のころだから、1960年代の終わりごろ。家族でそろって兵庫県の明石に遊びに行きました。

今はどうなっているか知りませんが、何やら怪しげに暗い水族館や、東経135度の日本標準時子午線がある天文台など、けっこう色々なものがあって面白かったのですが、なかでも海岸近くに多くあったのが、アナゴ釣りと、タコ釣り

男子小学生たるもの、これに挑まないわけにはいきません。弟とともに、チャレンジしましたとも。

アナゴのほうは、まあ魚といえば魚なので、そうめずらしいものでもなかったのですが、タコのほうは日常生活ではまずお目にかからない生き物。私が間近で生きたタコを見たのは、この時が人生初だったと思います。

で、小ぶりなタコを見事に釣り上げました。水を吹きかけられたけど。

釣り上げたタコですか? たしかバケツに入れて持ち帰りました。われわれ兄弟は飼う気満々だったのですが、バケツの中のタコはすぐに異臭を放ちはじめ、母親の手によって処分されたと記憶しています。

ことほど左様に、タコという異形の生物は、少年の心をとらえる存在です。なのでそのタコを主役(?)にした映画ってのもけっこうあるもんです(ホントかよ)

誰しもが映画史上に残る作品(しかも映画史上最初のタコ映画かもしれない)と認めるのが「水爆と深海の怪物」(1955年) かのストップモーション・アニメの名匠レイ・ハリーハウゼンの手になる巨大タコのサンフランシスコ殴り込みは、アメリカ製巨大生物型怪獣映画の最高傑作のひとつであることは異論のないところ。

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この世紀の傑作と張り合う気はさすがに起きないのか、以後アメリカの怪獣映画に巨大ダコはほとんど出現していません。

いっぽう、ハリーハウゼン師匠とは異なる道へ進んだ、わが日本特撮の東宝映画は、かの名作「キングコング対ゴジラ」(1962年)に前座試合としてコング対巨大タコの一戦をマッチメイクしています。

これ、東宝=円谷特撮の伝統芸であるミニチュアセットに、生きた本物のタコを這わせるという、考えてみたら日本の伝統芸に反する手法で撮影されています。東宝怪獣映画や、のちのウルトラ怪獣でも、この手法で撮った怪獣はなかったと思いますが、ではなぜこの時だけ動物虐待に走ったのかは、よくわかりません。タコの着ぐるみや操演が難しかったんでしょうか?

ちなみに、この時にコング氏と共演したタコさんは、その後スタッフたちのお腹におさまったとか聞いたことがありますが、はたして美味だったのでしょうか。

このタコの呪いか、あるいは方法論への反省か、「ウルトラQ」に登場した大ダコ怪獣スダールをはじめとする後継のタコ怪獣たちは、生タコではなかったですね(スイマセン、あいまいな記憶だけで書いてます)

ま、その後もアメリカ製の「吸盤男オクトマン」(1971年)などヤスモノ映画はあったものの、タコ映画は絶滅危惧種になりかかりました。

それを一気に覆すべく製作された(わけではない)のが、ご存じ「テンタクルズ」(1977年) 巨大タコがカリフォルニアを襲うという、考えただけでも燃えそうなこの作品は、怪獣映画というよりは、「ジョーズ」の亜流として作られた動物パニック映画でありました。

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そして、これもご存じのとおり、この「テンタクルズ」の出来栄えが、タコ映画の命脈を断ったといえましょう。いやほんと、ダメ映画だったのだよ、この映画。

そんなわけで、近年は巨大タコは脇に回るばかりで、タコ好きな映画ファンたち(いるのか?)の嘆きを誘うばかりなのであります。

しかし、考えてみたら、CG使用のタコ映画は、ひょっとしたら未開拓の金鉱なのかもしれません。サメ映画にも飽きてきたところだしね。

誰か「シン・テンタクルズ」作らんかね(笑)

  映画つれづれ 目次

【追記 2017/8/8 タコの日】 最近「ウルトラQ」の「南海の怒り」を見直しました。大ダコ怪獣スダールの出現シーン、生タコ使ってましたね。「キングコング対ゴジラ」の流用ですけど。 

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