未発売映画劇場「五十福星」

サモ・ハン、ユン・ピョウ、ジャッキー・チェンのゴールデントリオの人気シリーズとされる「五福星」「大福星」「七福星」の「福星シリーズ」が、じつはそうではなくて、サモ・ハンが製作したお笑い5人組によるユルいコメディシリーズであることはジャッキー・チェンと勝負するでも再三ふれてきました。

その後ジャッキーとユン・ピョウが抜けた「十福星」、さらにサモ・ハンまでが抜けちまった十五福星もご紹介しましたが、そこでも予告したように、まだシリーズはつづきます。

1992年の「五福星撞鬼」は、堂々のシリーズ第6作。こちらも日本では完全未公開(タイトルの邦題はオレ製)

仲睦まじくデート中の若い男女。そこへいきなり襲いかかるヤクザ集団。まったく脈絡なし。アクションたっぷりに逃げ回る男女だが、追いつめられて男はフクロ叩きで惨殺され、車に連れ込まれた女のほうもあわや……と思いきや、この女がじつはボスの妻だった! 性悪な浮気女に引っかかって命を落とした男、これでは浮かばれません。

これとは関係なく、ランタオ島(大嶼島)へ旅行に出かける福星チーム。女でも連れて行こうと、例によってヘタクソなナンパに精を出しますが、まったく成功せず、けっきょく男5人旅。あれ、前作では不在だったサモ・ハンがヌケヌケと復帰してるぞ。

投宿したホテルの隣が、なぜか無人の幽霊屋敷。で、心霊写真でも撮ろうかとサモ・ハンたちが潜入すると、なんとほんとに男女の幽霊が! 男を食い物にする女幽霊がここの主らしく、ほうほうの体で逃げ出すと、町に戻ってなぜか警察へ駆けこむ。彼らの話を真に受けたのかどうか、シリーズ準レギュラーの女性警部(シベール・フー)は部下の女性警官チームを彼らとともに送り込むことに。はい、例によってのセクハラギャグ付き。

ところが幽霊の襲撃にあって、リーダーの女性警官に男の幽霊が乗りうつってしまいます。ここだけはやけにホラー映画。最初は妖艶な女幽霊が、その正体を見せると、口からウジが湧いたり、顔が腐って崩れてくるあたりなどは、ちょっと戦慄。(ここだけだけど)香港ホラーテイスト全開。

乗りうつられる女性警官のリーダーを演じるのは、おお「天使行動」(1987年)のエレイン・リュイ(呂少玲)ではないですか。クライマックスでは彼女が体を張ったアクションを披露しますが、ここでは男幽霊に憑依されて頓珍漢な行動をとったりします。

で、彼女にとりついていた男幽霊が、福星チームと行動を共にするのが今回の趣向なんですね。原題見ればわかるでしょ。それにしても、ここまでの前置きが長いぞ。

香港映画でのホラー映画ブームはもうとっくに終わっていた時期の作品のはずだが、もちろんそんなことはお構いなし。

男幽霊を演じるのはナット・チェン(陳百祥) 香港映画ではよく見る顔で出演本数も大量にあるのだが、日本では公開作品が少ない。私は「香港の吉幾三」(似てるんだよ)と勝手に呼んでいますが。

福星チームが男幽霊を使ってイカサマギャンブルをする一幕があったあと、男幽霊が昔の彼女と出会ったことから香港ヤクザとの騒動に。

じつは見終わってから、ひと考えしてようやく合点がいったんです。そう、この男幽霊が、映画冒頭でヤクザ集団に殺された浮かばれない男だったんですね。いやいや、途中でまったく触れないもんだから、すっかり忘れてたよ(笑)

ま、ことほど左様に万事においてユル~イ映画。ストーリーも締りがないし、福星連中もダラッとした感じだし、まあそういうシリーズなんだから仕方ないか。

でも今回は終盤、サモ・ハンを中心とした壮絶殴り合いのカンフー・ファイトで、それなりに見せました。

前記したエレイン・リュイと、そもそもの原因を作った性悪浮気女(マンディ・ヤウ〔邱月清〕)の壮絶レディスバトル。

サモ・ハン対ヤクザのボス(チン・ホー〔秦豪〕)の豪快バトル。

このふたつは、どちらもかなりのハイレベルで、さすがだ。だが、やっぱりここでも幽霊は無関係。映画の軸がブレてるよな(笑)

そんなわけで、最後はなんとなく満足してしまいましたが、思い返してみるとけっこうイイカゲンな映画だったな。まあ福星シリーズだから、それでいいのか。

1992年の3月に香港で公開。英語のタイトルは「Ghost Punting

そして恐ろしいことに、福星シリーズ、まだもう1本あったりするのであります。

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