死んだ目玉の怪獣

先日、思い立って「ガメラ対バルゴン」を見た。なぜかって? ヒマだったからに過ぎない。

正式タイトルは「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」1966年の作品で、大映のガメラ・シリーズ第2作にあたる。

公開当時、まだ少年だった私は、先に「大怪獣ガメラ」を父に連れられて見ていたからか、この作品も映画館できちんと見た。

封切りで見たような気がしていたが、映画館は八重洲にあった観光文化ホールという名画座だったので、あるいは父が映画代をケチって二番館で見たのかも知れない。親父は覚えてないようだが。

さて昔話はともかく、今回ひさびさに(何十年ぶり?)でバルゴンを見て、「あっ」とおもった。

神戸港でオパールから生まれてすぐに巨大化したバルゴンが夜の町を蹂躙するシーン。

その姿に、すぐに別の怪獣が思い浮かんだのだ。

昨年の「シン・ゴジラ」で、多くのファンを獲得したあいつ。

そう、呑川から蒲田の町に現われたため、ファンのあいだで「かまたくん」なる愛称までつけられた、ゴジラの第2形態である。

あの特異なスタイルは、海洋生物のラブカがモデルだというのが定説で、実際そうらしいのだが、しかし何十年ぶりかで見たバルゴンと「かまたくん」の相似は、偶然だとはとても思えない。

爬行スタイルで動き回ることや、体表面から血のような液体を分泌する点、ウロコ状のもので覆われた皮膚、ばっくり開く巨大な口もそうだが、何よりも最大の特徴は、その目玉だ。

ところでゴジラ第2形態の顔らしき部分の両側にあったの、あれホントに目玉なのかな?

デカいばかりで、妙に平板で、眼球感がまったくない、まるで体表面の模様のような目玉。

じつは、あれがバルゴンとの一致点なのだ。

ぎょろりとデカいが動かない、死んだような目玉

爬虫類っぽい感じを出したかったのか、あるいはバルゴンの場合は明らかに着ぐるみの性能の問題なんだろうが、それにしても似ている。

第2形態をデザインする段階で、監督なりデザイナーなりスタッフなりの頭のどこかに、意識せずともバルゴンが棲んでいたのではなかろうか。

そんなことをツイッターでつぶやいたら、ある人から「第2形態のもとは、ウルトラQのピーターだっていう説がある」と教えてもらった。

ほう、「ウルトラQ」か。私の幼少期の人格形成に大きな役割を果たした番組じゃないか。

そこでさっそく、そのピーターが登場する回を見てみた(便利な時代になったよね) 第26回「燃えろ栄光」

本放送では終わりから二番目の放送順で、1966年の6月に放送されたもの。

白状すると、怪獣ピーターの姿形はわりと覚えていたが、肝心のストーリーはまったく記憶になかった。「ウルトラQ」は幼少期だけでなく、その後も何回も見ているのだが。

今回見直してみて、なんとなく納得した。この回、面白くないのである。

子供のころもそうだし、今でもそうだが、私が好む怪獣映画は、凶悪な怪獣が街をドカンドカンと破壊するような話。「ウルトラQ」でもそういうのが大好きだ。ガラモンとかペギラとかだね。

それに対して、この回のお話しは、世界戦のプレッシャーに負けそうになるボクサーの葛藤と、彼と怪しげな深海生物(こいつがピーター)の交流を描く、言ってしまえば「いい話」 オレ好みじゃないよな。冒頭のボクシングのシーンが当時の後楽園ホールだったのは、プロレスものの私には興味深かったが。

そんなわけで、温度が高くなると大きくなるというムチャクチャな設定の怪生物ピーターの印象も薄かったのだろう。お話しもなんかウヤムヤのうちに終わるし。

だがなるほど、このピーターも、第2形態とそっくりだな、たしかに。

爬行、ウロコ、大きな口。体表から体液こそ出ないが。

そして、やはり動きのない目玉

これまで多くの怪獣映画を見てきたが、こうした「動かない目玉」は、他にあまり記憶にない気がする。往年の怪獣博士諸君、どうだろうか?

ところで話は変わるが、「ガメラ対バルゴン」って、じつはガメラがいなくても十分成り立った映画だと思わないかね?

ガメラはオープニングにちょろっと出てきて、その後は音沙汰なし。バルゴンが大阪に侵入するといきなり飛んで来て、でもすぐに凍りつき、あとはクライマックスまで活動なし。

たしかに両怪獣の組み打ちは、あまたある怪獣映画のなかでもけっこう出色の迫力だが、べつになくてもストーリー成立しそうだよね。

前半のニューギニアのシーンは、怪獣映画の定番のひとつである南洋冒険もの(キングコングとかモスラとか)としてなかなかの出来ばえだし、無理にガメラ出さなくても、なんとか人類の力だけでバルゴン倒せたんじゃないか?

ひょっとしたら、当初はガメラなしで書かれていたシナリオを、ガメラ続編に改造した、なんてことがあったのかも知れないね。

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