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ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(23)

今回の映画は、正直言って取り上げるかどうか迷ってました。というのも、この映画、ジャッキー・チェンは「友情出演」 出番が少ないであろうことは容易に察しがつくし、そうなるとはたしてこれをジャッキー映画と呼んでいいのかどうかは微妙になりますからね。

ということで「クライマーズ」です。

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中国語題「攀登者」英語題は「The Climbers」 中国では2019年9月に、日本では約1年遅れて2020年9月に公開されています。

1960年、中国登山隊が史上初めて北稜からのチョモランマ登頂に成功する。だが登頂の証拠になる写真を撮影できなかったため国際的に登頂は認定されず、登山隊長のファン・ウージョウ(ウー・ジン呉京〕)ら3人が賞賛を浴びることはなかった。その後中国は文化大革命に入り、国家登山は行なわれなくなった。15年後、暗い時代が去ると、雌伏していた3人は名誉回復のために第二次登山隊を編成し、再び北稜登頂に挑む。隊にはかつてのファンの恋人で気象観測員のシェイ(チャン・ツィイー章子怡〕)らも参加する。登山隊は数々の困難を切り抜けて山頂へ迫るが、予測困難な悪天候に直面する……

実話をもとにしたドラマで、実際に1960年と1975年の中国登山隊はチョモランマ登頂に挑んでいます。その事実の重みが映画に大作感を与えました。さらにヒマラヤへのロケを敢行、効果的なCGもあって、非常にリアルな登攀シーンを作り上げることに成功、登山映画として一級品の仕上がりとなりました。

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もちろん、映画化するにあたって、史実には脚色が加えられています。たとえば1960年の登頂が未公認となった原因である山頂での写真がなかったことは、映画では滑落事故で人命を優先したから、となっていますが、実際には登頂が夜間で撮影できなかったかららしいです。

主人公のファンのモデルとなったのは実在の登山家・王富洲。映画では1960年の後、1975年に至るまでの間、不遇のまま働いていたことになっていますが、実際には登山活動をつづけ、1964年に中国国内の最高峰シシャパンマに初登頂するなどし、国家スポーツ委員会から2回スポーツ名誉メダルを授与されています。映画に描かれるほど不遇だったようではないですね。いまでは中国登山界のレジェンドとなっています(2015年に死去)

ま、そのへんは「映画は映画」でいいわけで、よりドラマチックにするのは大変けっこうです。

ところで、なぜあの山は「エヴェレスト」と呼ばれたり「チョモランマ」と呼ばれたりするのか、知ってますか?

最初に山頂の標高を測量したのがイギリス隊だったために、英語名の「エヴェレスト」が名称となり、その後中国隊が測量し直したために「チョモランマ」に名称が変わったのですね。そうやって山の名前を決めるんだってのは、この映画の中でも紹介されます。

そして、「チョモランマ」の名称を使う決め手となった測量が、まさにこの映画で描かれる1975年の中国隊の測量だったのですね。

といった蘊蓄を得られるのも、この映画の良いところであります。

とはいえ、映画全体には「祖国のために」「中国人民のために」といった「国威発揚」的なセリフが多く、過剰な中華思想の発露は、少々(どころではなく)鼻につきますね。そのへんが日本公開が遅れ、ヒットもしなかった原因のひとつでしょうか。

もうちょっと娯楽に徹してくれたら、けっこうなおすすめ映画になった気もしたんですが。

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あれ? ジャッキーは?

映画を見ている最中は、その迫力に押されて忘れてましたが、ジャッキー出てないじゃんと気づいたのは、幾多の困難の末に登頂が成功し、エンドクレジットが始まってから。

え? え? ジャッキーともあろうものが、めだたない出番だった? それともオレが居眠りして見逃したのか?

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などと慌てていると、エンドクレジットが中断してドラマが再開します。

1975年の登攀途中で凍傷のために足を失ったヤン・グアン隊員が、2018年に再挑戦し、ついに世界で2番目に義足でチョモランマ登頂に成功した登山家となる(これも実話。モデルは夏伯渝という世界的に有名な登山家) このエピソードが後日譚として挿入されているのです。

本編では、上海出身の人気歌手で俳優のフー・ゴー〔胡歌〕がヤン・グアンを演じているのですが、老境に入ったヤンを演じるのがジャッキーなのであります。

出番はわずか数分。とはいえ義足でチョモランマにやってくる不屈の登山家は、ある意味でジャッキー・チェンにふさわしい役かもしれません。もちろん、派手なアクションがあるわけではないし、べつにジャッキーでなくてもいいじゃないかとは思うものの、映画のラストにどっしりした重みを加えているのは確かでしょう。

でも、そんなジャッキーを大きくフューチャーした日本版DVDのジャケットは、ちょっと詐欺っぽいぞ(笑)

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ということで、ジャッキー映画とはいえないものの、ジャッキーの出演そのものは、スルーできるようなものではありませんでした。こういう形の映画出演も、今後のジャッキーには増えていくのかもしれませんね。

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