川のほとりでガンファイト

私の大好きな西部劇に「リオ・ブラボー」がある。

1959年の作品で、豪快なアクションを得意としたハワード・ホークス監督作品。ジョン・ウェイン御大の代表作のひとつであり、男の子映画の最高峰のひとつでもある。知らない?

西部の小さな町の保安官(ウェイン)とその仲間たちが、殺人罪で逮捕された弟を取り返そうとする横暴な大牧場主(ジョン・ラッセル)と対決するという、直球どまんなかな「ザ・西部劇」

酔いどれ元助手のディーン・マーチン、早撃ち自慢の若者リッキー・ネルソンという本業は人気歌手のコンビに、ウォルター・ブレナンの爺さん助手を配した布陣が最高。さらには姐御肌の女ギャンブラーを演じるアンジー・ディキンソンが最高にいい。静と動の切り替え、サスペンスの盛り上げ、スペクタキュラスなガンファイトと見せ場も多い……と、語りだしたらキリがない。

私が気に入っているのは、そもそも事件のきっかけとなる、牧場主の不出来な弟。こいつが酔った勢いで殺人を犯して保安官の逮捕されるのだが、実弟奪還のために様々な手を打ってくる兄貴をよそに、この愚弟、映画のほとんどは留置場暮らし。典型的な「虎の威を借る狐」タイプで、反省の色もなく悪態をついてはブレナン爺さんにぶっ叩かれるのが笑わせる。これを演じたクロード・エイキンズは、のちに重厚な脇役となり「続・荒野の七人」「コマンド戦略」といった男の子映画で存在感を見せつけていたもんだ。もちろん私のひいき俳優の一人でもある。

そんな名作「リオ・ブラボー」であるが、そもそもそのリオ・ブラボーって何かというと、舞台になる町の名前。もちろん架空の町なんだが、なかなかムードのある名前だ。

昔初めてこの映画を見たあとで気づいたのだが、じつは「リオ」のついた西部劇って、ほかにもけっこうある。ざっと挙げてみると、こうだ。

 「リオ・リタ」(1929年/RIO RITA)

 「リオ・グランデの砦」(1950年/RIO GRANDE)

 「リオ・ブラボー」(1959年/RIO BRAVO)

 「リオ・コンチョス」 (1964年/RIO CONCHOS)

 「リオ・ロボ」(1970年/RIO LOBO)

おお、いずれも西部劇の名作じゃないか。しかも、ジョン・ウェインの主演作が、ほかに「リオ・グランデの砦」「リオ・ロボ」と2作もある。「リオ・ブラボー」とあわせると、ジョン・ウェインの「リオ三部作」だな(実際には「リオ・ブラボー」「リオ・ロボ」が「エル・ドラド」とあわせてホークス監督+ジョン・ウェインの三部作と呼ばれる)

「リオ」とはスペイン語で「川」を意味する語。そういえば「リオ・ブラボー」の主題歌(ディーン・マーチンが歌っている)の歌いだしが「By the river…」だもんな。近くを流れる川を町の名につけたのだろう。とはいえ画面に出てくる川は、貧相な涸れ川だが。

西部劇の舞台になる大平原や砂漠地帯の荒野は、そもそも乾燥地がほとんど。なので、生命の源である水が流れる川の近くに町ができるのも当然だろう。

この夏、さんざんオリンピックで見聞きした「リオデジャネイロ」も、この仲間なわけだよ。(「1月の川」の意味)

正統派・西部劇は、私見では1976年の「ラスト・シューティスト」を最後に、ジョン・ウェイン本人の死(1979年)とともに絶滅したと思う。その時期以降は作られていない「リオ」つきの西部劇は、そのひとつの象徴だったのかもしれない。

〔余談〕 今回これを書くにあたって、例によってデータベースで「リオ」のつくタイトルを検索してみたが、前回の「エックス映画」ほどではないものの、やはり様々な映画が引っかかってくる。タイトル検索は難しい。若大将シリーズの「リオの若大将」とかは想定内だが、ホラーの巨匠ダリオ・アルジェントの名前が冠されたタイトルが多いのはビックリ。さらには「スーパーマリオ」とか「新世紀エヴァンゲリオン」とかまで引っかかってくるんだから、また見たい映画が増えてしまったではないですか(笑)

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