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ジャッキー・チェンと勝負する・追撃戦(11)

今回は1999年に香港で、旧正月(春節)の映画として公開された「喜劇王」(中国語題「喜劇之王」英語題「KING OF COMEDY」) 日本では翌2000年に劇場公開されている。

は? これ、チャウ・シンチー〔周星馳〕の映画じゃなかったっけ?

はい、そのとおり。チャウ・シンチーが監督・主演し、興行収入で年間トップの成績を叩き出したヒット作。そこに、ちゃんとジャッキー・チェンも出演しているのだ。

ジャッキーの出番は、映画の序盤。

撃たれて死ぬ役をうまく出来なかったチャウ・シンチーに変わって、その場で起用されるエキストラ俳優役。テストで豪快な死にっぷりを見せ、チャウ・シンチーにアドバイスをひとこと。

以上で出番終了。その間、およそ1分間。

そう、完全なカメオ出演である。

じつはジャッキー、この手のちょろっとした顔見世はわりとやりたがる。題名だけ挙げれば「プロジェクトS」(1994)、「アラン・スミシー・フィルム」(1998)、「ファイアー・レスキュー」(2013)などなど。

自分の製作映画にちょろっと顔を出すとか、友人の映画にサービスで出演するとか、要するに「映画に出るのが好き」なんだろうな、ジャッキー。

しかし、これまで絡むことのなかったチャウ・シンチーとの「夢の共演」は、どうしてまたこんな中途半端な形で実現したんだろうか。

同じ時期に撮影中だったジャッキーの映画「ゴージャス」に、チャウ・シンチーが同じようにカメオ出演している。こちら「ジャッキー・チェンと勝負する(23)」を参照→【こちら】

つまり、互いの映画に、いわばバーターで顔出ししていたということだ。

上手いことを考えたように見えるが、これ、お互いにプラスなのか? 同じ時期に封切られたんだから、ライバルの利になっているだけじゃないのか。まあ本人たちは自作に絶対の自信をもっていそうだから、いいのか。

いや、あえて深読みすれば……

「ゴージャス」は、それまでのジャッキー映画からすればかなり異色のロマンス映画だったことは、前にふれたとおり。ジャッキー本人に不安がなかったとは言えないだろう。

こちらの「喜劇王」も、じつはチャウ・シンチーの映画としては、これまでのスラップスティック色の強いドタバタ喜劇とは、だいぶん色合いが違う。売れない役者(売れなかったころのチャウ・シンチー自身がモデルらしい)とキャバレー嬢(セシリア・チャン〔張栢芝〕なかなか可愛い)の恋愛を軸にしたロマンス色が強い作品で、あれ、「ゴージャス」とちょっと似てるな。

まあそうはいっても、軸はチャウ・シンチー映画らしく「コケの一念を押し通した結果ハッピーエンド」なのだが、やはり本人も不安があったんだろう。売り出し期からの盟友ともいえるン・マンタ〔呉孟達〕を、特にストーリー上の必然はないようなのに、強引に配したりしている。

なるほど、早い話が、ともに自作に一抹の不安があったゆえに、一種の「保障」として、バーター出演を敢行した、ということだろうか。

私が香港映画にはまりだした80年代の終わりごろ、ちょうど台頭してきたのがチャウ・シンチーだった。前にも書いたが、私が香港の映画館で初めて見た映画はチャウ・シンチーの「賭侠」(邦題は「ゴッド・ギャンブラー II」)だった。

香港ではジャッキーに伍する大スターなのに、日本での人気・知名度では後塵を拝しているチャウ・シンチーだが、私にとってはかなり特別な存在の一人なのだ。

できれば、まっこうがっぷり四つでのジャッキーとの競演を一度は見てみたいのだがねえ。ともにワンマンだけに、むずかしいのかな

  ジャッキー・チェンと勝負する 目次

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