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無声映画上映会

無声映画って、見たことがありますか?

私はけっこう映画好きだと思ってるんですが、それでも無声映画ってのはそんなに見ていないです。

チャップリンやキートン、ロイド、マルクス兄弟などのスラップスティックコメディは、かつてちょっとブームっぽくなってリバイバル上映されたときに数本見ました。のちにビデオ化されたり、LDになったものもいくつかは持ってます。あと「ドクトル・マブゼ」とかね。

で、それらは、後世になって音楽だけをつけたサウンド版というやつでした。

ところが、かつて無声映画が普通だった時期、日本では無声映画にセリフがついていたんですよね。

そう、「活弁」というやつです。

映画を上映する際に、弁士という仕事をする人が、ライブでセリフや説明を語っていたんです。まあこのへんまでは、知識として、あるいは当時を再現した映画やテレビなどで見たこともあるでしょう。

トーキー映画が登場し、映画が音やせりふを獲得するとともに、この弁士が語る「活弁映画」の歴史は終わりました。無声映画そのものが時代遅れのメディアとなり、当たり前ですが新作も作られなくなったからです。お役御免ですね。

ただ、その当時の映画そのものはちゃんと残っているのです(残っていないものも多いですが) そして、それを昔のように「活弁」付きで見る機会もあるのです。

そんなわけで、ちょっとしたつながりもあって、無声映画上映会のお手伝いをすることになりました。

現役の活弁士である坂本頼光氏の独演会です。

はい、その上映会が行なわれたのは、こちらの会場です。静岡県三島市の三島市民文化会館です。なかなかいいホール。

上映作品はチャップリン、キートンの短編コメディ1本ずつと日本製のアニメーション短編映画、それに名作「カリガリ博士」という豪華版です。

活弁付きの無声映画は初体験のうえ、コントラバスの生伴奏つき(演奏は齋藤直樹さん)という豪華版。2時間余の公演、しっかり堪能しました。

最初に上映されたのが短編「チャップリンの冒険」(THE ADVENTURER/1917年)

これは前に見たことがある気がしました。ひょっとしたらわが家にあるLDの短編集に収録されていたのかもしれない。脱獄囚に扮するチャップリンが、おなじみの山高帽スタイルでないので有名な作品ですね。

つづいて、「キートンの警官騒動」(COPS/1922年) スラップスティックコメディの代表作といってもいい短編。

こちらは逆に、見たことあると思っていたら違う映画でした。キートンの警官物は他にも何本もあるので、私が見た気がしていたのは、別の経験ものだったんでしょう。

どちらも活弁と伴奏がつくと、作品のイメージが一新する感じでした。無声映画独特の約束事や、セリフなどを文字で書いたタイトルカードだけではわからなかった細部まで説明してくれるので、より面白みが増しています。

3本目は日本製のアニメーション「海の水はなぜからい」(1935年) 日本の昔話としておなじみのネタを、アニメーションで描いた作品。今日のアニメとはまた違う絵柄や動きが楽しめます。

なめらかとはいいがたい動きが独特の風味を出しているというのは、まあマニアックすぎる感想でしょうか。けっして後味のいい話ではないのに、最後はほのぼのとしたムードになるのは、そういう演出なのかな。

休憩のあとが、いよいよ本日のメインメニューである「カリガリ博士」の上映です。

ドイツ表現主義の代表作といわれる1920年、独ウーファ社の名作(DAS CABINET DES DR. CALIGARI〔THE CABINET OF DR. CALIGARI〕/1920年)

この作品も、いまを去ること40年ほど前に、どこかの上映会で見たことがあるのですが、記憶がさだかではありません。

たしかその時のフィルムは、音楽だけが入ったサウンド版で、しかもタイトルカードがドイツ語だったような気がします。そのせいで細部の設定などがよく理解できず、またややゆったりしたテンポ、そしてあのどんでん返し……まあ理解できなかったのも無理はないですかね。正直言って、あんまり面白かったという記憶はないです(いや、つまんなかったですね)

ところが今回は、こちらもイメージ一新。遅まきながら、じつに面白い映画でした。弁士の力って、スゴイもんですね。生演奏も効果満点でした(サウンド版の音楽って、たいてい無難な選曲になっていたりしますからね)

映画の歴史は、すでに映画が音を得てからのほうがずっと長くなっているのですが、じつは映画の撮影の仕方や編集の理屈などは、ほとんど無声映画の時代に確立されているのです。だから、音さえ付けられれば、決して現代の映画に見劣りするものではないのです。

まあ、なかなか見る機会はないかもしれませんが、チャンスがあったら一度お試しになることをお勧めします。

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