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時限爆弾にご用心

前回、500円映画劇場「エアポート2001」を見たわけですが、あれがスケール感の乏しい映画になった理由はいろいろあります。そのうち、爆弾そのものが小さかったというのも有力な理由のひとつです。

シドニーのオペラハウスをかたどった土産物のオルゴールに仕込んだ爆弾なんですが、大きさも、その平和な外見も、迫力不足。すごみがない「悪役」は失格ですねえ。

だいたいあのサイズでは、爆発したところで巨大な旅客機にダメージを与えられるのでしょうか。

エアポートものの元祖で本家の「大空港」(1970年)も爆弾ものなのですが(時限爆弾ではないけど)、その爆弾はアタッシェケースに仕込んだダイナマイト(映画でははっきりと爆薬は映らなかった気がしますが、原作小説でははっきりダイナマイトと明記されています) これ、機内で爆発しちゃうんですが、それでも機は落ちません(まあ落ちたらそこで映画が終わってしまうんだけど)

ま、そこは「エアポート2001」でも気づいたらしく、それなりの仕掛けはほどこしてありましたが、迫力不足は明らか。

ジャガーノートのドラム缶サイズの爆弾ほどとはいいませんが、もう少し迫力がほしかったですね、

時限爆弾のルックスといえば、古典的なのがこんなの

トイレットペーパーの紙芯みたいなのの束に目覚まし時計くくりつけたようなやつ。たぶん爆薬はダイナマイトでしょうね。

いまでは、いささか古臭く、もうコメディのネタにしかならないようなスタイルですが、これを変えたのがプラスティック爆薬というやつです。

見た目は、子どもが図工で使う油粘土みたいで、形は変幻自在。安定度が高いので、落とそうが叩こうが火を点けよう燃やそうが、それだけでは絶対に爆発しないのであつかいが簡単。もうすっかり爆弾ものの主役になってます。

使われ始めたのは軍隊からで、たぶん第2次大戦くらいからでしょうか。してみると、「史上最大の作戦」でドイツ軍のコンクリトートーチカを吹っ飛ばしたやつとか、「ナバロンの要塞」でミラー伍長が駆使した爆薬なんかもこれだったんですかね。

映画で最初に使われたのが何かは調べてみないとわかりませんが、私の記憶にあるなかでは「007/ゴールドフィンガー」(1964年)の冒頭シークエンスでジェイムズ・ボンド氏が麻薬プラント吹っ飛ばすのに使ったやつが初見かな。ベルトに仕込んだ細長いビニールチューブからウニュウニュッと押し出す、灰色のやつですね(余談ですが、あの押し方では細長いチューブから中身を押しだせないですよね。そもそも、なんでチューブから出す必要があるのかがわからん・笑)

この可塑性を存分に活かしたのが、日本ではテレビ放送のみの「暗殺・サンディエゴの熱い日」(1972年)なんですが、ネタバレになるので言えません。映画を見るのは難しいかもなので、マイクル・クライトン(ジョン・ラング名義)の原作小説をお読みください。

さて、爆弾映画に欠かせないのは、その爆弾を作って仕掛ける爆弾魔。いや現実にはあんまりいてほしくないですが、やはり映画にはこうした「悪役」は絶対必要ですから。

先にあげた「マッドボンバー」(1973年)ではチャック・コナーズが演じてました。迫力はありましたが、ややマニアックさが不足だった気が。

マニアック爆弾魔といえば、「ジェット・ローラー・コースター」(1977年)のティモシー・ボトムズと、「スピード」(1994年)のデニス・ホッパーが双璧(個人の見解です)

「ジェット・ローラー・コースター」のティモシー・ボトムズは、本当に爆弾マニアっぽいのがいい。何のために遊園地のジェットコースターに爆弾を仕掛けるかというと、いちおう遊園地のオーナーたちから身代金をせしめようということなんですが、じつはそれは「ついで」なのではないでしょうか。自宅にも、愛車にも、爆弾製造の材料や道具をビシッと揃え(携行用セットまで)、仕掛けた爆弾が発見されるや、あっという間に現場で次の爆弾を作ってしまうなど、とてもとても一朝一夕で身に着く技術ではありません。絶対に趣味として長年研鑽を積んでますね、この人。でも、いっさいの背景が描かれないのが不気味でもあり、その爆弾オタクぶりは群を抜いています。

それにくらべると、「スピード」のデニス・ホッパーはぐんとプロ。ちゃんと事件を起こした背景も動機も描かれますし、それなりの説得力もあるし(そういえば「ジャガーノート」の爆弾犯人も同じ背景、動機でしたね) 趣味でやっていたであろうティモシー・ボトムズとは違い、オタクではなく職業技術としてちゃんとノウハウを身に着けたっぽい感じが良いですね(映画で描かれる両者の年齢差もあるかな)

どっちにせよ、剣呑であることには違いないけど。

さて、爆弾の大きさの話に戻れば、群を抜いてデカいのは「ダイ・ハード3」(1995年)にでてくるやつ。007シリーズに出てくるような核爆弾を除くと、映画史上最大級ではないかな。

ここで使われるのは、プラスティック爆薬よりもぐんと強力な、なんとかいう爆薬(忘れた) 二種類の液体になっていて、個々の液体は無害なのに、混ぜ合わせると途方もない爆発力を有するというシロモノで、映画後半ではスゴイ見せ場を作ってくれました。あんなの、ほんとにあるんですかね。

往年のサスペンスの名作「恐怖の報酬」(1953年および1977年)に見られるように、ダイナマイトのもとになる爆発物であるニトログリセリンは液体状で、非常に不安定なものでした。これを安定して扱えるよう加工したダイナマイトを発明したのが、ノーベル賞の創始者であるアルフレッド・ノーベル。なので、「ダイ・ハード3」でマクレーン氏の心胆を寒からしめるあの爆薬は、先祖がえりといたっところなんでしょうか。

ちなみに、どこの国でも爆発物はそう簡単に作ったり入手したりできないように法律などでがっちり制御されています。映画に出てくる爆弾犯たちは、この点はサラッと通り過ぎるのが多い気がしますね。盗んだ、とか言ってね。映画でそこまで描写するとメンドクサイからでしょう。

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