男はみんな要塞が好き

男の子はたいがい戦争映画が好きなんだが(反戦映画とかじゃないよ)そのなかのジャンルのひとつに「要塞もの」がある。

堅固な守備を誇り、難攻不落の要塞を、少人数が知略を駆使して攻略するというミッション・インポッシブル。男なら燃えるでしょ、こういうのに。

その代表格が、名作「ナバロンの要塞」だ。1961年のこの映画、原作小説(アリステア・マクリーン)ともども、「要塞もの」の代名詞といえよう。

第2次世界大戦中、孤立した英軍部隊2000名の救出作戦。だがその前に立ちはだかるのは、エーゲ海のナバロン島にそびえるナチス・ドイツの巨大要塞。海から立ち上がる断崖絶壁の中腹にあり、強大な射程圏を誇る巨砲を持つため、艦船でも航空機でも接近することすらままならない。まさに攻略不可能。そこで、登山の名手マロリー大尉を中心にした6名の特殊部隊が、要塞爆破のために潜入する。

まさに要塞攻略戦の王道だ。

名匠J・リー・トンプソンが監督し、グレゴリー・ペック、デビッド・ニーヴン、アンソニー・クインらが演技を競う。160分間ゆるむところのない戦争映画の傑作のひとつだが、これが嚆矢となって、その後も「要塞もの」はいくつも作られた。

私的には「ナバロン」「荒鷲」「テレマーク」が、第2次世界大戦の3大要塞映画だ。わかりますか?

「荒鷲の要塞」(1968年)は「ナバロンの要塞」と同じアリステア・マクリーンの原作。アルプス山中のドイツ軍要塞に捕虜となった連合軍将校を救出すべく、ドイツ軍人に変装した情報部員が潜入する。演じるのは、クリント・イーストウッドとリチャード・バートン。戦闘シーンは少ないが、ロープウェイ上での目もくらむ対決や、虚々実々の裏切りや駆け引きなど、スパイ映画風の要素も絡めたサスペンスフルな傑作。途中のドンデン返しの連発は、見ていて誰も信じられなくなること請け合いだ。

そして「テレマークの要塞」(1965年)は、ナチスの原爆開発計画のカギとなるノルウェーの重水工場を破壊すべく特殊部隊が、レジスタンスの手引きで潜入するというストーリー。実際にナチの原爆計画はあったそうで、史実をもとにした重みがあったりするが、一方で派手さには欠ける出来ばえだった。カーク・ダグラスとリチャード・ハリスの共演。よく考えたら、どこがどう「要塞」なんだかよくわからないが。

そう、この3作品で共通しているし、あまねく「要塞もの」の欠点としてあげられるのが、派手な戦闘シーンが入れにくいという点だ。いずれも特殊部隊などの少数精鋭が潜入するストーリーになるので、スぺクタクルな見せ場は戦闘シーンでない部分に置かれる。爆破シーンとか、際どい場所での白兵戦や銃撃戦ですね。

どちらかというと、戦争映画というよりはスパイ映画の様相を呈してくるものも多い。

そういえば、スパイの代名詞でもある007ことジェイムズ・ボンドも、戦争中は情報部員として特殊工作をしていたとかいなかったとかいう設定が、原作にはあったな。

逆に言えば、スパイものの要素も入れられる点で、大味な戦争映画よりもサスペンスフルに作れるともいえよう。

そんな「要塞もの」も、すっかり見かけなくなった。

かつては、ハリウッドをはじめ世界の映画産業を潤してきた「戦争映画」が影をひそめてしまい、「要塞もの」も絶滅危惧種となってしまった。そもそも「要塞」と形容すべき軍事施設も、すっかり時代遅れの遺物になっているわけだ。

だが、まだ生き残る道はある。

「スター・ウォーズ」を見よ。最初の「エピソード4」などは、巨大なる要塞デス・スターの攻略を目指すストーリーではなかったか。そういえば「インデペンデンス・デイ」の、異星人の巨大母船も、巨大要塞のイメージだったよな。

そうか、SF映画というジャンルに、「要塞もの」の遺伝子は引き継がれていくのだな。たぶん。

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