ジャッキー・チェンと勝負する(52)

ようやくアーリー・ジャッキー・チェンの連打を抜けました。長かったな(笑)

と、思ったら、ここからは「21世紀のジャッキー・チェン」作品が連続する予定。極端だよ。

前に書いたように、私は2000年以降、あまり真面目に映画を見ていないので、この時期のジャッキー映画もほとんどが未見(ごめん、ジャッキー)。つまりここからの数作は「私の知らないジャッキー・チェン」でもあるのです。いやいや、楽しみだね。

というわけで、その先陣を切るのは、2011年の作品「1911」

スティーブン・スピルバーグ監督の作品に似たタイトルのがありますが、あれとはまったく違います(当たり前か) 中国語タイトル「辛亥革命」を見ればおわかりのように、本格的な歴史ドラマです。

学校の歴史の授業で習ったでしょ、辛亥革命。孫文をリーダーとした革命軍が清王朝を倒して中華民国を樹立した、歴史的大事件です。なにしろ数千年も続いた中国の帝政に終止符が打たれ、アジアで初めての共和制国家が成立したんですから。

この「1911」は、その辛亥革命から100年周年を記念して製作されました。中国と香港の合作による、堂々たる大作であります。

ハッキリ言って、ここのところ見てきたアーリー・ジャッキー・チェンの諸作とは、すべてがケタ違い(そりゃそうだ) 総製作費は30億円とかで、日本映画はもちろん、ハリウッド映画の大作にも優るとも劣らないクオリティだといってもいいでしょう。

革命の発火点となった広州蜂起の失敗からはじまり、国内の戦場、右往左往する紫禁城の人々、海外で奔走する孫文の姿らを並行して描いてゆき、約1年にわたる辛亥革命の全貌を立体的に再現して見せてくれます。われわれ日本人にはあまりお馴染みでない革命の経過をあっというまに覚えられる特典付きなので、世界史のテストの前に見るといいかもしれません

と、持ち上げましたが、じゃあこの「1911」が、アーリー・ジャッキー・チェンよりも文句なしに面白いかというと、そうは問屋がおろしません。

これは好みの問題でもあるんですが、どうも私にはシリアス過ぎるんです、この映画。もちろん現在の中国にとっても重要かつ大切な歴史的事件を描くのに、くだらないギャグや遊びを入れる余地がないのはわかります。わかるんですけどねえ……

おかげで出来上がった映画は、ひと昔まえの大河ドラマみたいに、四角四面な真面目映画になっている。ま、それを好きな人はどうぞ。私には、大いに物足りなかった。

やはりジャッキー映画は明るく楽しいほうがいいよねえ。

「1911」の監督は「レッドクリフ」などの撮影を担当したチャン・リー(張黎)だが、もし仮にジャッキー自身が監督していたら、だいぶ映画のテイストは違っていただろうな、そう思わされました。ちなみにジャッキーはこの映画では「総監督」とクレジットされていますが、なんだいそれは?

で、肝心の俳優・ジャッキーはというと、さすがにアーリー・ジャッキー・チェンのころに比べると、重ねた年齢を感じさせる貫禄ぶり。

ジャッキーが演じたのは、孫文の盟友である黄興。革命軍では国内戦闘の総指揮を執った人物で、明治維新にたとえれば、西郷か高杉かというくらいの武人ですかね。われわれにはあまりおなじみではない人物ですが、中国人には非常にポピュラーな存在らしいです。

孫文を演じるのは、今までに何度も孫文を演じてきて「孫文役者」としても知られるウィンストン・チャオ(趙文瑄) 風貌までも本物の孫文に似た名優を向こうに回して、この大物を演じられるのは、ジャッキーを措いて他になしってことなんでしょう。その点は異議なし(ただし本物の黄興と、その風貌はあんまり似てないと思うぞ)

異議はないけど、ジャッキー・チェンらしくない感じは強い。ほぼシリアス一本槍な演技そのものは悪くないんだが、前述したように、やっぱりシリアス過ぎるのはジャッキーには似合わないってことなんじゃないでしょうか。

そういえば、この映画のセリフはすべて北京語(普通話) 広東語のジャッキーを見慣れて、いや聞き慣れてきた身には、その点の違和感が大きい気もしました。

そんなわけで、いささかジャッキーらしくなさが目についた感もありますが、それが「私の知らないジャッキー・チェン」ということなのか。これから続けて見ることで、ジャッキーの新たなる魅力に触れられることに期待しましょう。

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