見出し画像

春場所ニューカマー6年後

2015年春場所にデビューした力士たちのその後を定点観測する本欄も、もう7回目。もはや新人どころか若手の範疇からも脱しつつある面々は、コロナ禍で異例の年となった2020年をどう送ったのでしょうか?

正直いって、この一年は総じて停滞の年だったようです。

まずはその代表格、出世頭の御嶽海の一年から。

例によって見づらいかもしれませんが、水色は勝ち越し、オレンジは各段優勝、ピンクは三賞受賞、赤色は幕内最高優勝です。

この一年は全部三役。11月場所以外はすべて勝ち越しと、安定した成績を残しました……が、それで満足していい力士ではないはず。大関候補と呼ばれ始めてもうずいぶんになりますが、いっこうに足がかりをつかめません。モタクサしている間に貴景勝朝乃山正代、そして返り咲きの照ノ富士が大関へ昇進し、あっという間に大関の座は満席状態になってしまいました。

新三役昇進の2016年11月場所からほぼ5年。この間26場所中、17場所連続を含む23場所で三役をつとめ、この間幕内優勝2回。これで大関になれないのだから「万年大関候補」と呼ばれても文句はいえないでしょう。上位力士を喰っても下位に取りこぼす悪癖をなくさなければ現状打破は不可能。さんざん言われていることでしょうが、頑張るしかありませんね。

こちらは、ほぼ平幕暮らしの一年になった北勝富士。もっとも番付運がなかったのも確かで、11月場所は東4枚目で11番勝ったのに次場所は筆頭どまりで負け越し。この春場所も東2枚目で9番勝ちながらもどうやら来場所の三役昇進はなさそう。しかも三賞受賞すらなし。まぁこればかりは「ツキ」の問題だから仕方ないですがね。

こちらは、とにかく安定感のなさを解消しないといけません。場所中の連敗グセ、そして勝ち越しが連続しない病が完治すれば、一気にブレイクするだけのポテンシャルはあるはずです。

2020年初場所で新入幕を果たし、その場所でいきなり11勝を挙げて敢闘賞と躍進した霧馬山ですが、その後は文字通りの一進一退。11月場所では自己最高位の東筆頭まで昇進したものの大敗。次場所は持ち直したもののこの春場所はまた負け越しと、三役昇進に向けて幕内上位の壁をなかなか突破できないでいます。

そう簡単なことでないのは百も承知ですが、ここのところ横綱・大関に休場者が多いだけに、このへんはさっさと突破しておきたいところですね。

こうして幕内組がモタついた1年でしたが、この人には大逆襲の年になりました。大ケガで番付を大幅に下げていた宇良です。

2度にわたる大ケガで幕内から序二段106枚目まで番付を下降させていましたが、2019年九州場所で土俵に復帰。序二段、三段目で優勝してわずか3場所で幕下へ。その幕下も2場所で通過し、11月場所番付で見事に十両に返り咲きました。素晴らしい。照ノ富士もそうですが、負傷に負けずに復活したのは、どんなに讃えても称賛しすぎることはありません。

十両復帰3場所目の春場所でも快進撃を見せて自身初の十両優勝、幕内復帰も間近かと思いましたが、そこでまたしても負傷休場。まさかまたかと天を仰ぐ思いでしたが、幸い2日間休んだだけで復帰し10勝を挙げました

どうやら復活はホンモノでしょう。来場所はいよいよ幕内復帰をかけた場所になりそうです。春場所では同じくワザ師で人気者の炎鵬との対戦も実現しましたし、今後はまた相撲人気上昇のキーマンになっていくでしょう。

43人いた同期生ですが、今年は宇美錦(深町)が引退し、これで26人が土俵を去ったことになります。関取昇進が上記4人ですから、幕下以下で関取の座を目指している現役力士は13人になりました。

このうち、昨年春場所の時点で幕下まで番付を上げていたのは朝鬼神魁勇大井上の3人。そしてこの一年でさらに2人が幕下昇進を果たしました。彼ら幕下組のこの一年は?

霧馬山とともに幕下昇進は比較的早かった朝鬼神(朝山端)でしたが、こちらはなかなか幕下に定着できずに苦労しています。2019年から2020年にかけても幕下に昇進しては撥ね返されるの繰り返しでした。しかし今年に入って初場所で通算5度目の幕下昇進を手にすると、その場所は負け越し1点にとどめて幕下に残留。春場所では幕下の下位58枚目で勝ち越して3場所連続での幕下を維持しました。ようやく幕下に定着できそうな感じです。

2019年名古屋場所で幕下昇進していた魁勇大ですが、3場所で三段目に陥落。その後は幕下に上がっても勝ち越せず、なかなかこの壁を突破できないままですね。幕下復帰を期した春場所も惜しくも負け越しでした。もう一息、頑張れ

昨年9月場所に幕下昇進を果たしたのが、大和湖(「おおやまとうみ」と読みます) しかし見事に跳ね返され、その後は三段目暮らし。そして春場所は、所属の山響部屋で新型コロナ感染が出たために全休の憂き目にあっています。捲土重来を期しましょう

大和湖に遅れること2場所、今年初場所に嬉しい幕下昇進を果たした西園寺でしたが、2勝5敗で春場所は再び三段目。そして負け越してしまい、さらに後退することになりました。幕下の壁とはぶ厚いものですね

気になるのは、去年の本欄でご紹介した、中卒組の出世頭だった井上のこの一年。

2019年には完全に幕下に定着し、25枚目まで番付を上げ、そろそろ十両昇進が視界に入ってきたところでした。ところが7月場所に3番相撲まで取ったところで途中休場、その後4場所連続で全休。どうやら負傷した模様で、かなりの重傷だと思われます。

ただ、関取とちがって幕下以下の力士の負傷状況などはほとんど発表も報道もされないので、どんな状況なのかさっぱりつたわってこないのが実情です。出世が早かった逸材だけに、復活を祈ります。復活への格好のお手本として、同期で同部屋の宇良が身近にいるのですから、しっかり治して出直してください。

ということで2021年春場所までで、最高位・幕内が4人幕下が5人三段目が4人序二段が4人となりました。

大相撲の出世争いとはかくも厳しいものなのです

彼らのこれからの活躍を、今後も見守っていきたいと思います。頑張ってくれよ

【これまでのあらすじ】

春場所ニューカマー

春場所ニューカマー1年後

春場所ニューカマー2年後

春場所ニューカマー3年後

春場所ニューカマー4年後

春場所ニューカマー5年後

大相撲/丸いジャングル 目次

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?