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謎のモンスター登場(笑)

ネットというのはまったく魔窟で、ときに奇妙なものが流れてきたりする。先日、私のツイッターのタイムラインに、こんな画像が流れ着いた。

どうやら映画のポスターかロビーカードのようである。上部の枠の中に、劇場名とか上映日時を入れろというのだろう。

タイトルは「KING KONG CONTRO GODZILLA」とある。とくに語学の素養がなくても、これが「キングコング対ゴジラ」のことであることは明白だ。

1962年公開のこの映画は、怪獣映画の最高傑作(個人の見解です)にして、日本映画史上に残る金字塔(これも個人の見解です)であり、世界のどこにでも通用する最高のエンタテインメント映画(いずれも個人の見解です)である。

なので海外で公開の際のこうした宣伝材料があることは、不自然でも何でもないだろう。

私は当初スペイン語だと思ったが「CONTRA」ではなく「CONTRO」なのでイタリア語のようだ(メキシコのサント映画が頭にこびりついてるせいかな)

で、問題はこのなんともいえない「味」のあるイラストだ。

中央にいるのはキングコングのつもりなんだろうか、ちょっと散髪をサボりすぎのロン毛の大猿にしか見えない。百歩譲ってもヒバゴンか、逆襲してくる北京原人であろう(マニアックすぎてゴメン)

そしてロン毛コングの背後に目を転じれば、そこにはガメラギロンキングギドラの雄姿が……おいおいまるで「キングコング対ゴジラ」とは無関係じゃないか。ガメラとギロンは所属会社まで違うぞ。それに、ゴジラどこ行った

さらに謎なのが、イラストの下にあるクレジット。

出演が、JUKO HAMADACRISTOPHER MURPHYMIJUKI AKIYAMA、監督がTERENCE FLASCH、とある。

誰、それ?

「キングコング対ゴジラ」の出演陣といえば、 高島忠夫、佐原健二、藤木悠、浜美枝、若林映子、平田昭彦といったところだし、監督は本多猪四郎と特撮監督の円谷英二。

たしかにアメリカ公開などの際には大幅に改変されているが、その改変版を監督したのはトム・モンゴメリーだ。テレンス・フラッシュなんて聞いたこともない

いったい、何が、どこで、どうなったんだ?

といったあたりで種明しをしよう。

じつは、これは「キングコング対ゴジラ」ではなく「ガメラ対大悪獣ギロン」(1969)のポスターなのであります。だから、背景の左側にあるガメラとギロンの姿が、正解なのだ。

わかんねーよ(笑)

どこでそうなったかは定かではないが、なぜか「ガメラ対大悪獣ギロン」をイタリアで公開したときに、こんなタイトルがついたのだ。

これはウィキペディアにもIMDBにも、そう出ている。イタリア版のウィキにはちゃんと「キングコングもゴジラも出ないよ」みたいなことが書いてあって、このポスターよりも正直である。

いまだったら許されない、商標権侵害だよね。

大映のガメラ・シリーズ第5作である「ガメラ対大悪獣ギロン」はイロイロ評価のわかれる作品で、私は子ども向け路線になったこのへんのガメラはあんまり好きではなく、内容もよく覚えていないくらいだ。

そうしてみると、ポスターにある出演者 JUKO HAMADA、CRISTOPHER MURPHY、MIJUKI AKIYAMAは、順に、浜田ゆう子クリストファー・マーフィ秋山みゆきのことであろう。発音ムチャクチャじゃん。あれ、それに主役のはずの加島信博くんの記載がないのはなぜ?

監督の湯浅憲明がテレンス・フラッシュになっているのは、たぶんイタリアで改変したときの監督さんなんだろう。でも、いくら調べても何の資料もないので、誰かの変名なのかもしれない。

いったい、どんな映画になっているのか、見てみたい……そうでもないか。

ちなみにこの映画、アメリカでは劇場公開されず、でもすぐにテレビ放送されていて、そのタイトルは「Attack of the Monsters」だそうだ。なんと当たり障りのないタイトルだろうか。まあイタリアよりはマシか。

で、じつは本家本元の「キングコング対ゴジラ」もイタリアではちゃんと公開されている。となると、そのイタリア版タイトルが気になるでしょう?

「キングコング対ゴジラ」、イタリアでは「Il trionfo di King Kong(キングコングの勝利)」 おお、なんかカッコイイが、ネタバレじゃないか。それに、ゴジラどこ行った?(笑)

日本では人気の怪獣映画も、海外マーケットではこの程度のあつかいになることが多い。「空の大怪獣ラドン」などのラドンが、アメリカではロダンとなっているのは有名だ。まあ日本でも、この手の改変は事例に事欠かないし。

というか、そもそも大衆文化の映画っていうのは、その国々の嗜好に合わせて、変幻するものなのだろう。これが当たり前なんだよな。

ついでに、やっぱり流れてきたこんなモノも見ていただこう。

  「サント対クトゥルー」!

メキシコの伝説的レスラー、サントが数多くの怪しげな映画に主演していることは再三紹介したが、これはまた、飛び切りの異色篇。

サントは謎の犯罪組織やギャングばかりでなくドラキュラや狼男や宇宙人とも闘っているが、かのH・P・ラヴクラフトらが創世し、世界中の作家が手がけることで壮大なホラー神話となっている「クトゥルー神話」の怪物とも闘っていたとは! これはぜひ、見てみたい!

と盛り上げておいて何だが、サントの膨大なフィルモグラフィに、この作品は、ない

じつはこれ、実際には存在しない映画のポスターを製作したフェイク・ポスターなのだ。ううっ、ぜひ見たかったのに。残念でした。

ちなみにこのフェイク・ポスターのもとになったのは、どうやらこれらしい。

サントのポーズが同じ(笑)

こちらは、実在の映画作品。「Santo contra las mujeres vampiro」(1962)

「サント対女吸血鬼」! もちろん日本未公開! そのうち見てみよう(笑)

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